奨励会員ながら決勝に勝ち進んだ齊藤優希三段は悔しい逆転負けで後がなくなる

若手棋士の登竜門として知られる将棋の新人王戦。過去の優勝者には藤井聡太二冠を始め、多くのタイトル経験者が名を連ねます。第51期新人王戦決勝三番勝負(主催:しんぶん赤旗)に駒を進めたのは、池永天志四段と齊藤優希三段です。

池永四段は1993年4月生まれの27歳。2018年4月に四段に昇段すると、19年には若手棋戦の第9期加古川青流戦で棋戦初優勝を果たしました。

齊藤三段は1996年5月生まれの24歳。2010年に奨励会入りし、18年に三段に昇段。プロ入りを目指して三段リーグを戦っています。新人王戦で優勝すると規定により三段リーグの次点が1つ付与されるため、是が非でも勝ちたいところです。

三番勝負第1局は10月12日に関西将棋会館で行われました。振り駒で先手になったのは齊藤三段。戦型は両者得意の角換わりとなり、齊藤三段が速攻を仕掛けます。それに対して池永四段は強気な受けで応戦しますが、これが良くなかったようで、齊藤三段の攻めが勢いづいてしまいました。

馬を敵陣に作ることに成功した齊藤三段。その後も厳しく攻め立てます。しかし、池永四段は崩れません。飛車の成り込みを防ぎつつ、相手の攻めをいなして反撃の機会を待ちます。

池永四段が銀取りに歩を打った手に対する、齊藤三段の応対が本局の勝敗を分けました。ここでじっくり49分考えた齊藤三段は、銀を相手の銀にぶつける強気の一手を選択しましたが、これが指しすぎ。銀交換の直後に作られたと金で金をぼろっと取られ、雲行きが怪しくなります。ひとたびおかしくなった流れを引き戻すことができず、続けて悪手を指してしまった齊藤三段。ついに逆転となりました。

齊藤三段は局後、逆転のきっかけになった手について、読みに誤算があったと明かしました。

形勢をひっくり返した後の池永四段の寄せは的確で素早いものでした。齊藤三段に粘りを許さずにあっという間に寄せ切ってしまい、88手で勝利となりました。

苦しい将棋を逆転で勝利した池永四段。あと1勝で2度目の棋戦優勝となります。

得意の角換わりで苦戦に陥るも、逆転勝利を収めた池永四段(提供:日本将棋連盟)
得意の角換わりで苦戦に陥るも、逆転勝利を収めた池永四段(提供:日本将棋連盟)