JR東日本、日立製作所、トヨタ自動車は6日、水素を燃料とする燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステムを搭載した試験車両を連携して開発することに合意したと発表した。
世界がサスティナブルな社会の実現をめざす中、大量輸送機関である鉄道においても、よりクリーンなエネルギーで走行する次世代の鉄道車両が期待されているという。水素はさまざまな原料や再生可能エネルギーを活用して製造できる上に、エネルギーとして利用する際は二酸化炭素を排出しないという優れた環境特性があると説明する。
JR東日本は鉄道車両の設計・製造の技術、日立製作所はJR東日本と共同で開発した鉄道用ハイブリッド駆動システムの技術、トヨタ自動車は燃料電池自動車「MIRAI」や燃料電池バス「SORA」の開発で培った燃料電池の技術を有している。この3社が持つ鉄道技術と自動車技術を融合し、自動車で実用化されている燃料電池を鉄道へ応用することで、自動車より大きな鉄道車両を駆動させるための高出力な制御を目指したハイブリッド車両(燃料電池)試験車両を実現する。
ハイブリッド車両(燃料電池)試験車両では、水素タンクに充填された水素が燃料電池装置へ供給され、空気中の酸素との化学反応により発電。主回路用蓄電池は燃料電池装置からの電力とブレーキ時の回生電力を充電する。ハイブリッド駆動システムは燃料電池装置と主回路用蓄電池の両方からの電力を主電動機に供給し、車輪を動かす制御を行う。燃料電池装置の開発はトヨタ自動車、ハイブリッド駆動システムの開発は日立製作所が担当する。
試験車両の車両形式はFV-E991系で2両1編成、最高速度は100km/h、航続距離は最大で約140km。愛称名は「変革を起こす水素燃料電池と主回路用蓄電池ハイブリッドの先進鉄道車両」(HYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehicle for Innovation)」から「HYBARI(ひばり)」と付けられた。外観は、燃料電池の化学反応から生まれる水を碧いしぶきと大地を潤すイメージでとらえ、スピード感と未来感を持たせた車両デザインとした。
実証試験は2022年3月頃から、鶴見線と南武線尻手支線(浜川崎~尻手間)、南武線の尻手~武蔵中原間で実施予定。実証試験にあたり、神奈川県、横浜市、川崎市の協力で環境整備が行われる。