デロイト トーマツ グループは9月28日、「行政組織における在宅勤務実施状況・業務効率化に関する調査2020」の結果を発表した。

  • 在宅勤務制度が「ある」との回答は半数以下。制度がある場合でも67.4%が在宅勤務を「していない」(出典:デロイト トーマツWebサイト)

    在宅勤務制度が「ある」との回答は半数以下。制度がある場合でも67.4%が在宅勤務を「していない」
    (出典:デロイト トーマツWebサイト)

この調査は、コロナ禍での行政組織の在宅勤務の現状や課題、職場環境改善への意識を明らかにし、今後のあるべき非接触型経済社会における行政組織の在り方の検討に資するために実施。2020年7月に国、都道府県、市区町村の行政職職員を対象に実施し、1,000名から回答を得たものだ。

まず、組織に在宅勤務制度があるかどうか聞いたところ、「ある」が48.7%、「ない」が46.7%という結果となったが、「ある」と回答した人であっても、その67.4%が在宅勤務を「していない」と回答。制度がない場合を含めると、在宅勤務をしていない割合は79.5%にも上った。

  • 業務用PCを自宅に持ち帰り、社内ネットワークにアクセスできる割合は国が約3割であるのに対し、市区町村は約1割に留まる(出典:デロイト トーマツWebサイト)

    業務用PCを自宅に持ち帰り、社内ネットワークにアクセスできる割合は国が約3割であるのに対し、市区町村は約1割に留まる
    (出典:デロイト トーマツWebサイト)

業務用PCを自宅に持ち帰ることが可能かというかの質問には、「可能」が28.5%、「不可能」が62.5%となったが、自宅から社内ネットワークにアクセスできるのは全体で16.3%、国が29.3%であるのに対し、市区町村は8.6%であった。また、在宅勤務を実施する上での課題として、「IT・ネットワーク環境」が62.9%、「業務内容」59.7%、「セキュリティ」46.5%の順となった。

  • 住民との対面でのやり取りをする部門の中でも「住民関連」「税務」部門は感染への不安が高い(出典:デロイト トーマツWebサイト)

    住民との対面でのやり取りをする部門の中でも「住民関連」「税務」部門は感染への不安が高い
    (出典:デロイト トーマツWebサイト)

現在の勤務形態におけるコロナ感染リスクについて、不安の程度を聞いたところ、全体の7割の職員がコロナ感染への不安を感じており、業務内容別では住民と接する「住民関連」、「税務」部門では不安を感じる人の割合が8割と高くなっている。

同調査では、この2部門は自宅から社内ネットワークにアクセスできる割合が最も低く、在宅勤務の実施率も低いことが示された。また、職員意向では8割以上が在宅勤務を希望しており、その希望日数は「週2日」が29.3%と最多で、週5日を希望する職員も17.7%いたということだ。

  • 勤務における改善希望は「自由な働き方」が最多で41.7%(出典:デロイト トーマツWebサイト)

    勤務における改善希望は「自由な働き方」が最多で41.7%
    (出典:デロイト トーマツWebサイト)

コロナ感染症による勤務環境に変化に関わらず、広く改善されたら良いと思う点を聞いたところ、上位から順に「自由な働き方」41.7%、「労働時間」39.5%、「職場環境」38.4%となり、「人事評価・異動」29.0%や「給与」27.8%)いった処遇よりも、働き方・職場環境の改善を求める意見が多数であったという。

デロイト トーマツは今回調査で、行政組織における在宅勤務が実施できない要因はネットワーク環境や業務内容によるものが大きく、これらは自治体の情報セキュリティ対策強化のためにとられた、ネットワークの分離、いわゆる「三層の対策」の結果によるものが多分にあると推察。国でも自治体セキュリティ対策の見直しの検討を進めており、今後状況が変わることも期待されるとしている。