人は、日常のさまざまな出来事からストレスを感じます。例えば、なかなか終わらない仕事やうまくいかない人間関係、日常生活でのちょっとした失敗から、ストレスを感じた経験はないでしょうか?
ストレスを感じたときには、そのまま放っておかずに「いま、自分はストレスを感じている」と自覚し、対処することも大切だと言われています。そこで、シーンごとに使えるストレスの解消方法をご紹介します。
ストレスとストレッサーとは
そもそも「ストレス」とは一体何なのでしょうか? 厚生労働省の「こころの耳」によると、ストレスがある状態とは「物体の外側からかけられた圧力(刺激)によって歪みが生じた状態」を指します。そして、この「心や体にかかる外部からの刺激」のことを「ストレッサー(ストレス要因)」と呼びます。
日常生活におけるさまざまな変化がストレッサーになりえますが、ストレッサーは次の4つに大きく分けられます。
環境的要因:天候や騒音など
身体的要因:病気や睡眠不足など
心理的要因:不安や悩みなど
社会的要因:人間関係や仕事がうまくいかないなど
この4つの中で、多くの人がストレスとして捉えるのが心理的要因と社会的要因です。
ストレッサーとしてマイナスな要因ばかりを挙げましたが、実は進学や就職、結婚といった嬉しいはずの出来事も変化の一つなので、ストレスの原因になることがあります。
例えば、営業職で継続的に優秀な売り上げを残していた社員が課長に昇進したとしましょう。はた目から見れば昇進はポジティブなことですが、当人が「性格上、自分は人を管理する業務に向いていない」「管理業務に時間を取られることで、営業としての自分の数字が落ちたらどうしよう」などと考えれば、それがストレスとなります。このケースでは、昇進がストレッサーになってしまうのです。
ストレス反応とは
ストレッサーに適応するために心や体に起こった反応を「ストレス反応」と言います。ストレッサーによって生じるストレス反応は心理面、身体面、行動面に分けられます。
心理面:活気の低下・不安・気分の落ち込み・イライラなど
身体面:頭痛・肩こり・動悸・息切れ・不眠・食欲低下・便秘・下痢など
行動面:仕事でのミスの増加・飲酒量や喫煙量の増加など
こうしたストレス反応に気づいたら、さまざまな方法でストレス解消にトライしてみるといいでしょう。もし、ストレス反応が長期間続いたり激しかったりするときは自分一人でなんとかしようとせず、医師やカウンセラーなどの専門家に相談しましょう。
シーンごとのストレス解消方法
効果的なストレス解消法はストレッサーによって変わってきます。ストレス解消と聞くと「カラオケで歌う」「甘いものを食べる」など、いわゆるストレスを発散する方法を思い浮かべがちですが、直接/間接的にストレッサーに働きかけることでストレスの要因を減らす方法もあります。それでは、シーンごとのストレス解消方法をご紹介します。
ストレッサー:共通の知人の悪口ばかり聞かされる
知っている人の悪口を聞くのは気持ちのいいものではないですよね。「自分も陰で悪口を言われているのでは?」と不安にもなります。よく悪口を言う人が身近にいてストレスになる場合、もし悪口を言う相手に対して直接働きかけることができるのであれば、それが効果的な解消方法だといえます。
例えば「人のことよりも、あなたの話を聞かせて?」と話題を変えてみたり、悪口が始まってしばらくしたら席を外してみたりして、悪口は聞きたくないことを相手に伝えてみます。これで相手が気づき、悪口が減ったりなくなったりしたら、ストレッサー自体がなくなります。
それでも悪口が止まらない場合や、相手に直接働きかけるのが難しい場合は、相手(ストレッサー)から離れてしまうのもひとつの方法です。
ストレッサー:隣の席の人の雑音が気になる
職場で意外と多いのが音に関するストレスです。「隣の席の人が引き出しを乱暴に閉めるので、その度に大きな音がしてびっくりする」「独り言や舌打ちが多くて仕事に集中できない」といったことがストレッサーになるケースがあります。直接相手に働きかけにくいときには、周囲の人の協力を得て問題を解決する方法があります。
例えば、上司に相談して、上司から職場全体への注意という形で伝えてもらいます。この方法も、音というストレッサー自体を減らしたりなくしたりできる可能性があるため、効果的なストレス解消方法です。
ストレッサー:悪天候で楽しみにしていた予定がキャンセルに
楽しみにしていた予定が天気のせいで当日になくなると、誰のせいにもできない分、行き場のないストレスを感じることがありますよね。天候のことは自分で直接働きかけができるものではないので、ストレッサーをなくすのではなく、ストレス反応を和らげるのがよいでしょう。
例えば「楽しみにしていたのに、行けなくなって残念」「昨日の天気予報では晴れだったのに、今日になって雨になるなんて…」といった、ストレッサーによって生じた心の内を家族や友人などの周囲の人に聴いてもらいましょう。天候に働きかけることができませんが、気持ちを人に聴いてもらうことでストレスを減らし、自分を楽にすることはできます。
大阪がん循環器病予防センターによると、ストレスの解消法として「家族や友人と話したり相談したりする」を選んだ女性はそうでない女性に比べ、4年後に高血圧になるリスクが約30も%少なかったという調査結果も出ているそうです。ただし、話を聞いてもらえるのであれば誰でもいいとは考えず、安心して話せる人に相談しましょう。
ほかにもストレス対処法としては「見方」や「考え方」を見直すというのも、選択肢の一つとしてあります。誰の力も借りず、自分で対処できる方法です。 例えば「楽しみにしていたのに残念」を、「久しぶりに家でゆっくりできる」とか「これはきっと遊びに行くなってことなのよ。遊びに行っていたら意外とケガしちゃったりするのよ。こういうときは」など、自分の中で違うとらえ方をすることで、ストレスと感じる度合いが変わるかどうかを試してみるような方法です。
また、「積極的に休養をとる」「お風呂で体を温める」「音楽やスポーツを楽しむ」「栄養バランスのよい食事を摂る」といったことも、ストレス解消につながると言われています。
やってはいけないストレス解消方法
ついついやってしまいがちなNGなストレス解消方法もあります。その一つが「やけ酒」です。少しのお酒は心身をリラックスさせる効果があり、呑んでいるときはストレスが楽になった気持ちになります。
しかし、飲む量が増えていくと病気のリスクが高まるなど体に悪影響が出てきます。ストレスがあるとお酒を飲みすぎてしまう自覚がある人は、ほかの解消方法を選ぶようにしましょう。お酒以外の暴飲暴食も避けたほうがいいでしょう。
タバコもお酒同様に病気のリスクを高めますし、心の病気にも関係する可能性が指摘されていますので、ストレス解消方法としてはおすすめできません。
まとめ
小さな変化から大きな変化まで、私たちの人生にはいつでも何らかの変化が生じますが、その度にストレスを抱えていては心身の健康に悪影響を及ぼしてしまいます。
そこで大切なのが、ご紹介してきたストレスの解消です。ストレスを感じたときには、まず何がストレッサーになっているのかを探り、ストレッサーごとに適したストレス解消方法を試してみましょう。そういったことをとても安心して話せる友人と話したり、あるいは専門のカウンセラーと相談したりしてみるのもよい方法だと思います。