いよいよ本日27日に最終回を迎えるTBS系日曜劇場『半沢直樹』(毎週日曜21:00~)。第9話では、自身のバンカーとしての指針となっていた中野渡頭取(北大路欣也)、共闘した大和田取締役(香川照之)が、政府の巨悪・箕部幹事長(柄本明)の軍門に下り、半沢直樹(堺雅人)が3人に対して「1000倍返し」を宣言するところで物語は終わった。
前シリーズから合計して19話放送されたが、どんな相手を前にしても、一貫してバンカーとしてのプライドがブレない半沢。振り返ってみると、同じ大学で同期入行の渡真利忍(及川光博)をはじめ、半沢のひたむきな思いに影響され、これまで数多くの人間が半沢の味方となってきた。
半沢を演じるのは堺雅人。原作者の池井戸潤氏は、映像化の話がある前から「もし半沢を演じるなら、堺さんがピッタリだと思っていた」と話していたが、本シリーズの大きな成功の要因に、半沢の芯の強さを堺がけれんみなく表現していることが挙げられるだろう。
堺と言えば、早稲田大学在学中から劇団に参加し、舞台を中心に俳優業を行っていたが、映像の世界にも進出すると、NHK大河ドラマ『新選組!』では山南敬助を、映画『クライマーズ・ハイ』では佐山達哉記者を、『その夜の侍』では妻をひき逃げ事故で亡くした中村健一など、一見まったく違うキャラクターを演じながらも、心の奥に宿る芯の強さを見事に表現していた。
半沢の魅力は、ブレない芯の強さだろう。新シリーズで、部下の森山雅弘(賀来賢人)から、自身の“信念”について聞かれた半沢は「正しいことを正しいと言えること」「世の中の常識と組織の常識を一致させること」「ひたむきに働いたものがきちんと評価されること」と答える。
さらに「仕事は客のためにすること、ひいては世の中のためにすること」と説くと、「いまだけではない未来を見据えるんだ。大事なのは感謝と恩返し。その二つを忘れた未来はただの独りよがりの絵空事だ。これまでの出会いと出来ごとに感謝し、その恩返しのつもりで仕事をする。そうすれば必ず明るい未来が開けるはずだ」と持論を展開する。
ある意味で説教じみた発言であり、言う人によっては“絵空事”に聞こえてしまうような言葉だ。それをしっかりと地に足がついたセリフにしているのが、堺の圧倒的な熱量と芝居のうまさだろう。
常識的に考えれば、一介の銀行員が、日本政府を牛耳るような大物政治家に勝負を挑んでも勝てるわけがない。しかし、こうした堺=半沢に周囲は動かされ、次々と半沢の味方になっていくのだ。