EV化で悪路走破性も格段にアップ

このマシン、日産リーフ用の中古リチウムイオンバッテリーを40モジュール、20kWh相当分搭載した仕様で、マネージメントシステムなども専用のものに一新した。見た目は古いジムニーだが、中身は最新のEVシステムというわけだ。想定される走行可能距離は満充電状態で130~140キロ。現代の市販EVと比べても全く遜色ない実用性を備えている。

  • チャデモ

    ショッピングモールや高速道路のサービスエリアなど、CHAdeMO(チャデモ)急速充電器を設置する場所は増えている

クロカン四駆ベースのEVで、急速充電できる設計としたのは市販車も含めて国内初とのこと。これは、20年前に車検を通してあったSJ2001号だからこそ実現できた快挙だという。鈴木氏は「現在は改造電気自動車の保安基準が改正されて、衝突安全やバッテリー認証などの要件が厳しくなっています。ジムニーをベースとした車両で急速充電に対応したEVを新たに作ることは、相当難しいと思います」と語る。

“EV四駆の面白さを知りたいのだったら、実際に乗るのが一番てっとり早い”とのことで、筆者もこのSJ2001号のステアリングを握らせてもらった。実際に運転してみると、その走行感覚は独特で、アクセルペダルを踏み込んでも排気音は全くしない(EVだから当たり前)。ただ、低速時にインバーターからカン高い音を発しているのが気になった。鈴木氏に理由を聞くと、「歩行者や視覚障がい者への注意喚起のため、あえてそうした仕様にしている」ということだった。

  • EVジムニー

    「ジムニー」がもともと持つ高い悪路走破性を、EV化することでさらに引き上げた

ギアの変速システムはマニュアルミッションだが、モーターゆえにエンストを起こす心配がなく、クラッチを踏む必要はない。副変速機をローに入れ、ギアを2速または3速に放り込みさえすれば、モーグル地形やV字溝など、どんな地形であっても勝手にスルスルと走破してしまう。

要するに、現行ジムニーをはじめとする既存のレシプロエンジン車に比べ、圧倒的にオフロード性能が向上しているのである。これほど悪路走破性に優れ、しかも日常の足としても使える市販EVが存在したなら、「多少高価でも欲しい!」。そう思わせてくれる完成度の高さだった。

  • EVジムニー

    5rpm、10rpmという内燃機関ではありえない超々低回転で強大なトルクを発揮する。大きな段差も低速でゆっくり越えられる