「今日のオンライン会議、だらだらと説明されて話がつまらない。会議の話を聞きながら、別の作業を同時にしよう」

こんな考えを持ったことがある人は多いのではないでしょうか。自分が話し手(説明する人)として、オンライン会議に臨む場合、短時間で、聞き手にインパクト強く内容を伝えられるかどうかが、きわめて重要です。

もし、あなたが話し手としてオンライン会議で説明をするとき、「オンラインでは音声も聞き取りにくいだろうから丁寧に時間をかけて口頭で説明すればいいや」という考えは厳禁です。丁寧に説明しようとして、口頭で長い時間説明をしてしまっても、参加者にはあなたの話は伝わりません。プレゼンターが良質な資料を用意せず、口で説明しても、参加者は興味を失ってしまい、説明内容を聞いてくれません。

外資系コンサルティング会社に勤め、国内・海外の企業の経営に携わり累計10万人以上の組織を動かしてきた小早川鳳明氏(パイオエッジ)に、新著『世界のトップコンサルが使う 秒速で人が動く数字活用術』でも語られた"相手の心に響く資料の作り方"のテクニックを説明していただきます。


データを使うなら「グルーピング」と「ラベリング」

データを使ってプレゼンテーションを行うという経験は多いと思います。「数字を使って説明することが大事」とも聞いたことがあると思います。しかし、データを使ってプレゼンをするのであれば、オフラインでの対面での会議資料の作り方とオンライン会議向けの資料では、作り方を区別すべきです。

オフラインで対面で会議をするようなこれまでであれば、データをそのままパワーポイントスライドに貼り付けて指をさしながらそのデータの傾向を説明するということが可能でした。また、ホワイトボードにデータの"傾向"を書き込んで、会議の参加者の記憶に残るように工夫をしてプレゼンを行うことができました。

しかし、オンライン会議ではそうはいきません。データが並んだ表をそのまま使って、口頭でだらだらと傾向を説明してしまうと、参加者はすぐに飽きてしまい、聞いているふりをしながら別の作業を始めてしまいます。聞き手は話し手が伝えたかった事から意識をそらしてしまいます。

オンライン会議では、会議の前半でインパクトが強いデータを示すことがとても重要です。そのために重要なテクニックが、「グルーピング」と「ラベリング」です。きれいに正しくデータをグラフで説明するのではなく、聞き手が伝えたいことを強調するプレゼンテクニックです。

基準値との差分をグラフで示して「傾向」を強調する

数字が単に並んでいるデータを使って、プレゼンを行ったとしても、聞き手はそのデータから何を結論として受け取ればよいのかわかりません。聞き手はそのデータが良い状況を示しているのか悪い状況を示しているのか、短い会議の中ですぐに判断をすることができません。

そこで、データの各項目について、良い状況なのか、悪い状況なのか、一目で聞き手に伝えるためのデータ加工のワザが「基準値との差分を示して"傾向"を強調する」テクニックです。

聞き手が一目で、データの傾向がわかるようにビジュアルで説明をすることで、初めてデータが意味を持ち相手に伝わるプレゼンができるようになります。例えば、データの平均値を計算し、その平均値に対して、高いのか低いのかを説明することもこの方法のひとつです。

実際の企業数値の分析で生かす「グルーピング」と「ラベリング」

具体的に実際の企業の数字を使って、聞き手の印象に残るデータの示し方を見てみましょう。

  • 聞き手の印象に残るデータの示し方

例えば、新型コロナウイルスが広がりを見せる当時、あなたが自分の会社の上司から、新型コロナウイルスに強い業界と、コロナウイルスに弱い業界を分析して、至急プレゼンするようにと依頼されたと想定しましょう。店舗運営を行う11社の上場企業の2020年2月の既存店売上高(前年同月比)について、最も印象が強いデータのプレゼンの仕方を考えてみます。

既存店売上データをそのままグラフにし、前年同月比の指標数値が高い順に上から並べでも聞き手には何も伝わりません("×"がついている左下のグラフ)。聞き手は並んでいる企業名をひとつずつ見ながら、各企業それぞれの業績は良いのか悪いのかを、一つずつみて考えねばならず、話し手が何を伝えたいのか、一目でわかりません。

学校で習ったデータをグラフにする方法では伝わらない

インパクトの強いグラフ表現をするのであれば、単位データをグラフ化するのではなく、類似項目を一つのグループとして考えます。既存店売上高データが表示されている各企業について業界別にグルーピングを行いました("○"がついている右下の図)。

スギ薬局やサンドラッグは「ドラッグストア」、エディオン・ビックカメラ・コジマは「家電量販店」と業界別にまとめました。ここまで、業界別にグルーピングをしたら、加えて「ラベリング」行います。各業界ごとにどのような傾向なのか、見た人が考えなくてもすぐにわかるように、"◎かなり良好"、"▲悪化"など傾向を文字で補足しています。こうすることで、個別企業の名前を読みあげなくても、業界ごとにどんな傾向があるのか、端的に説明ができるようになるのです。

データは基準値よりも「良いか」「悪いか」を示す

さらに、棒グラフそのものについても、工夫をしましょう("○"がついている右下の図)。

通常は、既存店売上高とは、前年同月比100%(昨年の同じ月と同じ売上高であるということ)を基準に、前年よりも業績が良ければ110%,120%などの100%を超える数字で示され、業績が悪ければ100%を下回る数字で示されます。

今回は、基準線(=100%)よりも小さければ、100%との差分を棒グラフを左側へ設置し、100%よりも大きければ100%との差分を棒グラフの右側へ設置しています。基準線よりも左側にグラフがあれば、悪い状況であり、基準線よりも右側にグラフがあればよい状況であると、一目でわかるようにしました。このように基準値(今回は100%と設定)との差分を示すことで、単にグラフを提示するよりもよりインパクトが強いプレゼンをすることができるようになるのです。

口頭でだらだらと説明すると、聞き手に聞いてもらえなくなりやすいオンラインだからこそ、一目で伝わる資料を事前に準備しておくことを心がけましょう。