DRAM価格は、一般的にサプライヤとバイヤーの在庫レベルの変動と、主流のサーバーDRAMの購買意欲の回復状況で決まるが、現在の価格はデータセンターとエンタープライズサーバーの購入者が在庫を積み増すため調達を再開するまで下落圧力が続くとの見通しをTrendForceが発表した。

  • DRAM価格予測

    2020年第3四半期および第4四半期のサーバーDRAM、モバイルDRAM、消費者向けDRAMの前四半期比価格下落率予測 (出所:TrendForce)

民生向け需要は高まるも、全体的には緩やかな価格下落が継続

最近、DRAMスポット価格が反発して上昇を見せているが、消費者向けDRAMはDRAM市場全体のビット出荷数量の8%しか占めていないため、単なる一時的な現象の可能性が高いという。具体的には、Huaweiが最近、米国政府による制裁範囲の拡大に対応するために、猶予期間終了後の潜在的な半導体不足を見越して、DRAMの調達を強化したことで、民生用DRAMの需要が高まったというものである。このため、TrendForceでは2020年第4四半期の消費者向けDRAM価格の予測を従来の前四半期比10-15%減から0-5%減へと修正しているが、モバイルDRAMならびにサーバーDRAMについては、調達活動の高まりはそれなりにあるものの、現在の供給過剰の状況を変えるには不十分であるともしている。

NANDの価格上昇も期待薄

一方のNANDのスポット取引量は、一部の国で新型コロナウイルス対策で行ったさまざまな規制を緩和し始めたこともあり、わずかながら回復してきているが、TrendForceでは、市場全体としては、長期的にかなり弱いままの状態が続くとの見方を示している。特にサプライチェーンの上流で競争が激化するため、しばらくの間の価格上昇は期待できそうにないとしている。

グラフィックスカードの強い需要でGDRAM価格は安定へ

またDRAMとしては、在宅勤務や遠隔教育などの世界的な拡大を背景にグラフィックスカード向けであるグラフィックスDRAM(GDRAM)の市場性が期待できるとTrendForceでは説明している。

2020年のグラフィックスカード業界のハイライトは、NVIDIAが9月頭に発表したAmpereアーキテクチャをベースの「RTX 30シリーズ」と、その対抗馬となるであろうAMDの「Big Navi(Radeon RX5950XT)」で、こちらも2020年第4四半期にリリースが見込まれている。

これらの製品が各グラフィックカードメーカーから予定通り市場に出荷されれば、高い引き合いが期待され、その出荷数量と、1枚あたりに搭載される搭載メモリ量の増加により、GDRAMの価格下落はほかのDRAM製品よりも先に止まる可能性があるという。

その結果、GDDR6の価格は、第3四半期に前四半期で10%ほど下落するが、生産量の増加に伴い、契約価格が安定化することで第4四半期には下げ止まるものと同社では予測している。またGDDR5の価格は、第3四半期に3~5%の下落となるものの、第4四半期には、全般的にDRAMの価格が下落するのに対して、需要のひっ迫により真っ先に上昇を始める可能性があると同社は予測している。

  • グラフィックスDRAM

    2020年の各四半期ごとにおけるGDDR5価格ならびにGDDR6価格の前四半期比増減率(第3四半期以降は予測) (出所:TrendForce)

なお、グラフィックスDRAMは、ほかのDRAMとウェハ製造プロセスでの互換性がないため、DRAMの中でもかなり特異な存在であり、かつグラフィックスカードの需要次第で価格が変動することから、DRAM製品の他の主要カテゴリの価格動向から逸脱する可能性があるとTrendForceでは説明している。