新型コロナウイルスなどの影響により、「売り手市場」から「買い手市場」に潮目が変わったと言われている転職市場。その中で、企業の求人ニーズや、個人の転職活動や意識はどのように変わってきたのか。

転職サービス「doda(デューダ)」編集長の喜多恭子氏に、Withコロナ時代の転職市場の実態や、今後必要となる仕事の向き合い方や仕事の選び方についてお聞きした。

  • 「doda(デューダ)」編集長 喜多恭子氏(写真:マイナビニュース)

    「doda(デューダ)」編集長 喜多恭子氏

企画や人事、エンジニアのニーズ増

「これまで伸びていた有効求人倍率は急激に低下し、2016年の4月以来4年ぶりの低水準に。その一方で転職希望者数の減少幅は小さく、売り手から買い手市場に転じました」と、話すのは転職サービス「doda」の喜多氏。

未経験者のポテンシャル採用が減少し、経験者の厳選採用が非常に顕著になってきたという。転職希望者にとっては厳しい市場に変わってきたのだ。そんな中でも、求人ニーズが増えているのは、いったいどういう職種なのだろうか。

「企画や人事、エンジニア関連ですね。企画では、今回の新型コロナウイルスや震災などの緊急事態に対してBCP対応(事業継続計画)の策定をどうするかといったことを立案・実行できる人や、人事では、リモートワークを導入したときの労務管理や業績評価制度などを考えられる人材の要望が多いです。エンジニアでいうと、DX関連の業務や飲食デリバリーなどの、新サービスのニーズを担う人材の募集が増えています」。

  • 新型コロナウイルスが労働市場に与える影響 提供:転職サービス「doda」

    新型コロナウイルスが労働市場に与える影響 提供:転職サービス「doda」

ワークとライフを充実させたい人が増えている

一方、今回のコロナ禍で働き手側にも変化はあったのだろうか。

「これは、テレワークを実施した企業の従業員500名に行った意識調査です。これによると、『組織の一体感』や『仕事への意欲』が下がり、『生活の満足度』が向上したという傾向が出ています。つまりは、今回テレワークを通じて、改めてワークライフバランスを充実させたいという人が増えてきているように思います」。

  • 新型コロナウイルスが働き方に与える影響 提供:転職サービス「doda」

    新型コロナウイルスが働き方に与える影響 提供:転職サービス「doda」

景気が後退する時期は、安定性のある会社へ行きたいと考える人が増える傾向にあるが、実際、転職希望者が以前は重視しなかった「リモートワーク」「在宅ワーク」というキーワードが検索ランキングの上位に入るなど、dodaでも「働き方に関する検索数」が非常に伸びているという。

  • 2020年4月度 doda検索フリーワードランキング 提供:転職サービス「doda」

    2020年4月度 doda検索フリーワードランキング 提供:転職サービス「doda」

振り回されるのではなく、自分で人生をコントロールしていく

コロナウイルスをきっかけに、働く環境が変化し、それによって人々の価値観も変わりつつあるようだ。しかし、その中でも、自分の目指すべきゴールが定まらない人も多いのではないだろうか。そんな人は、どのようにして仕事を選んでいけばいいのだろうか。

「やりがい、お金、家族、趣味など、何でも構いません。まずは自分自身が大切にしたいことと、それが数年後かなう働き方や、職種とはどういうものかを、じっくり考えてみることです。そして、現在の自分とのギャップを測り、その距離を埋めていくための学習や経験を積んでいくことだと思います。今の職場にも、必ずゴールにつながることがあります」。

  • 人生を楽しんでほしいと言う喜多氏

    人生を楽しんでほしいと言う喜多氏

VUCAの時代と言われている今だからこそ、人生を自分でコントロールしていくことが大事だという。

「リーマンショック、東日本大震災、そして今回のコロナショックと3年毎に予想もできないことが次々と起こり、多くの人が知らぬ間にVUCAを体感しています。数年後にはまた何か予期せぬ事態に見舞われる可能性も。しかし不安だからと、手をこまねいていても何も始まりません。

環境の変化に振り回されて、自分の人生を考えるのではなく、自分が目指すゴールを定め、それに向かって選択していく。そういうスタンスに立てると、何事にもポジティブな気持ちで取り組めるでしょう。一度きりの人生ぜひ楽しんでください」。


ピンチも考え方次第でチャンスになる。先の見えない不確実な時代だからこそ、トライ&エラーでアクションを起こしてみることが重要なのだろう。

今なら多くの企業がリモート面接を導入しているので、さまざまな企業の考え方やジョブを知る機会を作り、そのなかで自分とフィットする働き方や仕事を見つけていく。そんな転職活動も、自分のゴールを見つける一つのやり方なのかもしれない。

取材協力:喜多恭子(きだ・きょうこ)

1999年、インテリジェンス(現・パーソルキャリア)入社。派遣・アウトソーシング事業、人材紹介事業などを経てアルバイト求人情報サービス「an」の事業部長に。中途採用領域、派遣領域、アルバイト・パート領域の全事業に携わり、2019年に執行役員・転職メディア事業部事業部長に就任。20年より現職。