Dropbox Japanは7月13日、オンラインで記者説明会を開き、日本国内のナレッジワーカー/企業・組織の有職者1000人を対象としたテレワークに関する意識・実態調査を実施したと明らかにした。調査はスクリーニングを4月24日~5月12日、本調査を5月11日~同12日の期間で実施し、22歳~69歳のホワイトカラーの有識者の男女(製造業、運輸業の一般職は除く)を対象に実施された。
Dropbox Japan マーケティング本部長の上原正太郎氏によると「昨年、実施した働き方改革に伴う企業の創造性とITツール利用に関する実態調査の延長線上でテレワークの実態調査として行った」と、今回の調査の趣旨を説明する。
コロナ禍におけるテレワークの実態
調査結果によると、約4割の回答者がテレワークを導入していたものの、テレワークを導入していなかった回答者のうち54%は「テレワークでできる業務が全くない」と回答したほか、経営者~部長クラスの48.9%は「テレワークのメリットを感じていない」ということが判明した一方で、テレワークを実施する頻度が高い層ほど、1日平均3時間以上は時短されている実感があるなど、時間を有効活用できていると感じていることが判明した。
今回調査を実施した5月11~12日において、テレワークを行っていたのは回答者の約4割(40.2%)となり、導入率には地域や業種の差がみられ、地域別では関東(54.3%)、業種別には通信・情報サービス関連企業(62.3%)と突出している。
また、外資系企業と政府・公共機関ではいずれも半数強がテレワークを導入しているものの、外資系企業では週の半分以上からほぼ完全にリモートで働いている人が多いのに対して、政府・公共機関などでは週に2日以内の部分的な実施にとどまるという回答が多数となり、テレワークを実施していない人の54%がテレワークできる業務が全くないと回答している。
一方、テレワーク実施上の課題としては社外からのアクセスができない(しにくい)ファイルの閲覧、紙の資料の確認や押印作業が不便だった、そのために出社を要したという事情が挙げられた。特に60代と40代の回答者の約4割が紙の書類の確認に、また20代の回答者の44.8%が社外からアクセスできないファイルの閲覧に課題を感じていたという。
さらに、リモートワークを週5回実施できている会社はあまり課題感がないのに比べ、週3日~4日程度のリモートワークを実施している会社に勤務している回答者の場合は、約45%が紙の書類の確認や社外からアクセスできないファイルの確認についてやむを得ず出社した経験があり課題感を持っているという結果となった。
企業の会議・ミーティングをオンラインで実施している割合について、2019年10月に同条件で実施した調査と比較したところ、社内外にかかわらず1~2割の増加傾向となった。「専らオンラインで実施」しているという回答は増加し、「専ら対面で実施」は減少という傾向にあり、オンライン会議がこの6カ月間でインフラとして浸透してきている一方で、対面主義からいまだ脱却できていない現状も浮き彫りになっている。なお「テレワーク中やむを得ず出社した経験」として「対面での会議」を挙げた部長~経営者クラスの回答者が32.3%を占めた。
オンライン会議時の期待としては「会議終了後に議事録ができていること」「会議が終わった段階で何をいつまでにするか、To do リストやスケジュールができあがっていること」「誰のコメントや提案なのか、後でわかるようにしたい」「メールや共有フォルダに散在する関連資料を探す苦労から解放されたい」などに期待を持つ層がいずれも7割を超えた。項目によっては、前回の調査よりも10ポイント程度上昇しており、オンライン会議の実施比率の増加に伴い、オンライン会議の後のフォローアップの重要性についても期待が高まっていることが伺えるという。
在宅勤務により時間を有効活用できている
テレワークの効果としては、特に長時間労働の是正(32.8%)やワークライフバランス(31.7%)といった点において期待が寄せられているが、経営者~部長クラスの48.9%はテレワークのメリットを感じていないということが判明している。
一方、テレワークを実施する頻度が高いほど、在宅勤務による時間を有効活用できていると感じていることがわかり、具体的には1日平均2時間以上有効に活用できていると回答した人は、週2日リモートワークを実施している人が43.5%、週3~4実施している人が58.2%、週5以上の人が65.7%という結果となった。また、週5日以上の層の35.8%がリモートワークで1日平均3時間以上は時間を有効活用できていると感じているという。
自分が就業する会社を選択する際、在宅勤務環境の有無が影響するかという問いに対して、20代の回答者の60.7%が影響すると答えていることに加え、通信・情報サービス業界の回答者では59.6%、すでにリモートワークを導入している層では63.2%と、同様に高い傾向がみられた。
テレワークを実施している人の約8割がパンデミック収束後もテレワーク体制の整備・強化を希望しているという結果になり、具体的な改善を望む点としては、PCなどのデバイス支給、社内資料への安全かつ便利なアクセス環境の整備、承認プロセスの可視化といったインフラ整備にかかるものがメインとなった。特に、20代や政府・公共機関勤務者が多くの改善点を指摘している。
上原氏は今回の調査結果を踏まえ、テレワークに活用できるDropboxの機能としてスマートワークスペースの「Dropbox Spaces」、共同作業用ツール「Dropbox Paper」、アカウントにあるすべてのコンテンツに自分のデスクトップのファイルシステムから直接アクセスできる機能「Dropboxスマートシンク」、テキストや画像をスキャンする「Dropboxスキャン」、最大100GBのファイルを数クリックで送ることができる「Dropbox Transfer」、管理者コンソール、近日発表予定の電子署名サービス「HelloSign」などを挙げていた。
コロナ禍でテレワーク協会に問い合わせが殺到
続いて、ゲストとして説明会に参加した日本テレワーク協会 事務局長の村田瑞枝氏は、テレワークの実情について触れた。
コロナ禍において、多くの企業がテレワークの導入を検討したものの、組織におけるテレワークの全体像をつかむ→全体方針を決定する→ルールを作り→ICT環境を作る→セキュリティ対策をする→試行導入→見直し、本格導入というプロセスを踏まなければならないが、突然本格導入をせざるを得ない状況となったため、同協会には電話・メール問い合わせが殺到したという。同氏は「1日で1年分の問い合わせ件数に匹敵していた」と振り返る。
そのため、同協会もひっ迫した状態となったが、在宅コールセンターとクラウドサービスを活用することで乗り越えたという。
村田氏は「Dropboxは無料ですぐに使え、簡単に利用でき、セキュリティが担保されているため採用し、主に問い合わせメールの管理に活用した。将来的にテレワークを中堅・中小企業に展開し、首都圏のみならず地方へ拡大するほか、テレワークスペースの活用や地域との連携が必要となる。そのため、Dropboxのようなツールに対する期待値は高い」と力を込めていた。
また、Dropbox Japan 代表取締役社長の五十嵐光喜氏は「先日、経済財政諮問会議で報告された骨太方針では、この1年をデジタル化を進める集中改革期間と定め、テレワークに数値目標を設けて推進していく方針が示された。これまでの『あればよい』から『なくてはならない』状態に舵が切られた。今回の調査結果を、企業でテレワークを推進するために有益な情報として活用してもらえればと考えている」と述べていた。