安倍晋三首相は5月25日、新型コロナウイルス対策として発令していた緊急事態宣言を全国的に解除した。4月7日以来、約1カ月半ぶりの全面解除となった。

  • 浦島太郎になってない? コロナ自粛中に一変した喫煙ルールを再確認

日本で新型コロナウイルスが猛威を振るい始めたのは3月以降。それからあれよあれよという間に自粛生活に突入したわけだが、そうこうしている間に大きな"法改正"があったことはすっかり忘れられているようだ。そう、大きく話題になった検察庁法の改正案…… ではなく、「健康増進法」の改正である。

コロナ禍ですっかり影が薄くなったが、4月1日に改正健康増進法が施行。以降、屋内は原則的に禁煙となった。愛煙家にとっては厳しい法改正だが、厳密に言えば例外はある。まだ屋内で喫煙できる手段は残されているのだ。

きっと、これから徐々に外食する機会もまた増えてくるだろう。その前に、どんな店ではタバコが吸えて、どんな店だとタバコが吸えないか、今のうちに再確認しておこう。

チェーン店などの大型飲食店の場合

屋内原則禁煙のルールに例外はある。ただし、例外規定は飲食店の規模や形態によってルールが異なるから複雑なのだ。

まずは「大型飲食店」や「大手飲食店」の場合だが、ここでは今も屋内の「喫煙専用室」、または「加熱式タバコ専用喫煙室」で喫煙することができる。前者は紙巻きタバコも加熱式タバコも対象で、後者は加熱式タバコのみが対象だ。喫煙室はいずれも、煙が外に出ない独立部屋になっていることなどが条件で、これまでのように客席でタバコを吸うことは基本的にはできない。

  • 喫煙スペースを提供する場合は、標識を掲示することが義務づけられる。こちらが標識の一例

ただし、加熱式タバコ専用喫煙室に関しては少しルールが緩く、よくコーヒーショップなどで見られるガラス張りの喫煙エリア全体を喫煙室と見做すことが可能となっている。中では飲食することもできる。紙巻きタバコも吸える喫煙専用室の場合は例外なく飲食不可となっているので、加熱式タバコへの切り替えは真剣に検討してもいいかもしれない。

ちなみに、大型飲食店とは「客席面積が100平米以上ある店」で、大手飲食店とは「資本金5000万円超の会社が経営する飲食店」のことだ。駅前などに見かけるチェーン店などが主に当てはまると考えればいいだろう。

個人経営店などの小型飲食店の場合

一方、個人が経営するような小型飲食店の場合は、今も従来どおり店内のすべて、または店内の喫煙エリアなどで喫煙することができる。

「屋内原則禁煙」なのにナゼ、と不思議に思うかもしれないが、これは小型飲食店への温情的な意味合いが強い。すぐに喫煙専用室を設置できるだけの資金力や店内スペースを持たない小型飲食店まで一律で禁煙にしてしまえば、喫煙専用室を設置できるチェーン店へと客が流れ、ダメージを被りかねないと判断された。

ここで言う小型飲食店とは、「客席面積100平米以下、かつ資本金5000万円以下」の店を指す。ただし、あくまで既存店への応急措置であるため、4月1日以降にオープンした小規模飲食店にこの温情ルールは当てはまらない。つまり、4月以降にオープンした小規模飲食店は例外なく喫煙室が設置できないので、この点は押さえておこう。

バーやスナックなど"喫煙が主目的"な店の場合

バーやスナック、そしてタバコ販売店も店内のすべて、もしくは一部で喫煙が許可されている。と言っても、この場合は温情としてではなく、「喫煙が主目的」の店、つまり「タバコがなければ成り立たない」ケースであると認められたのである。もちろん、従来のようにタバコを吸いながらの飲食もOKだ。

ただし、バーやスナックの定義として「通常主食と認められている食事(料理)」をメインで提供していないこと、などの条件が設定されている。バーやスナックを名乗りつつ、カレーライスやラーメン、パスタなどといった主食メニューをがっつり提供する店は「喫煙を主目的とする店」と認められない可能性が高いので、確認が必要だ。

オフィスやショッピングセンターなどの場合

ここまでは主に飲食店のケースを見てきたが、「屋内原則禁煙化」は自宅以外のほぼすべての場所に当てはまると考えてほしい。

3月末以降、在宅ワークとなったビジネスパーソンも多いと思うが、4月1日からはオフィスでの喫煙も禁止となってる。ただし、この場合も大型飲食店と同じく、煙が外に流出しない独立した喫煙室が設置されていれば引き続き喫煙可能だ。

また、あくまで「屋内原則禁煙」なので、これまでどおり「屋外」であれば、喫煙スペースを設けることはできる。独立した部屋である必要もない。しかし、法改正の目的が「望まない受動喫煙の防止」であるため、常に非喫煙者への配慮は忘れてはならない。屋外に喫煙スペースを設置する際も、不特定多数の人があまり通らず、建物の出入口からもなるべく離れたところなどに設置するよう求められている。

ちなみに、学校や病院など、「第一種施設」に分類される建物はルールが一層厳格で、屋内に喫煙専用室を設置することもできないうえに、屋外にも喫煙スペースの設置が許されていない。また、ショッピングセンターや劇場、娯楽施設などの「多数の人が利用する施設」は、いずれもオフィスと同じ条件が当てはまる。

真面目に外出自粛している間に、外の世界の喫煙事情は一変した。愛煙家たちはくれぐれも竜宮城から帰った浦島太郎にならないよう、今のうちにしっかり新ルールを再確認しておこう。