• 『Live News it!』の加藤綾子

緊急時にアナウンサーのメッセージが心をとらえる3つ目の理由は、番組内容のバランス。現在の報道・情報番組は、不安、現実、希望のバランスが悪く、不安をあおるような映像やコメントが大半を占めていて、そのことはすでに大半の視聴者が気づき、嫌悪感を抱く人もいる。

「ほぼ事実関係のみを伝えるNHKのニュース番組が世帯視聴率20%前後を記録し続けているのも、民放各局への不信感が一因」と見る人も少なくない。放送内容が不安を抱かせるものに偏るほど、外出自粛でストレスをためている人々から「あおっている」という批判を受けてしまいがちだ。

そんな背景がある中、適度な不安に留め、現実や希望を感じさせる藤井アナや加藤アナらのメッセージが人々の心をとらえるのは当然なのかもしれない。特に藤井アナのメッセージには、不安を優しさに、不満を感謝に変えるような力があり、『news every.』のバランスを整えている。

■テレビが見直されるきっかけに

ここまで「アナウンサーの立ち位置」「生放送の帯番組」「番組内容のバランス」という3つの理由を挙げてきたが、それらを後押しするスタッフのスキルと理解あってのものだろう。前述したようにアナウンサーは「タレント級の有名人だが会社員」という微妙な立場であり、自分の言葉で視聴者にメッセージを届ける機会はめったに与えられない。

しかし、他番組のアナウンサーたちもスタッフの後押しさえ受けられれば、藤井アナらに追随して支持を集められるのではないか。さらに言えば、そんな流れが各局で生まれたら、テレビというメディアが見直されるきっかけの1つになるのかもしれない。