新型コロナウイルスの感染が拡大している影響で、「クラスター」という言葉を聞く機会が増えました。新型コロナウイルスに関する報道では、カタカナ英語が多くてわかりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。
「クラスター」の意味やクラスターの対策、クラスターを作らないための方法について確認していきましょう。
クラスターは発生ではなく集団を指す言葉
クラスターは本来「集団」や「群れ」という意味ですが、ウイルスの感染においては「感染者の集団」や「集団感染」などを指す言葉として使われています。
本来、クラスターは「果実や花などの房や塊」(ブドウ)から連想された「同様の種類の塊」という意味でしたが、これが転じて「集団」や「群れ」「一群」などを指す言葉になりました。
本来の意味に準じてクラスターを使用するなら「感染者のクラスター」や「クラスター感染」のような「集団」としての使い方が望まれます。「クラスターが発生」や「感染者集団の『発生』」のような用いられ方は正しくありません。
カタカナ英語の乱用は意味が正しく伝わらない可能性もあるので、できるだけわかりやすい言葉を使った報道が求められます。
なお、厚労省ではクラスターを「小規模な患者の集団」と定義し、これまでに全国で確認されたクラスターマップを公開しています。
クラスターマップからもわかるように、「飲食店」や「ライブハウス」「スポーツジム」などでクラスターが確認されています。
厚労省が発表しているクラスターの対策
新型コロナウイルスは、多くの感染者が軽症か無症状のため、感染拡大の防止は大変困難です。そこで、厚労省ではクラスターの連鎖を防ぐために、以下の流れに則った対策を行っています。
(1) 早期発見
医師の届け出などから、集団感染の発生を早期に把握する
(2) 感染源と経路の特定
感染源と感染経路を特定して事態を収束させる
(3) 感染拡大防止
濃厚接触者の健康観察と合わせて、外出自粛の要請や関連施設の休業、イベント自粛の要請などを行う
感染者集団の早期把握と感染経路の特定は、事態の早期収束につながると考えられています。とくに重要なのは行動制限や行動変容で感染の連鎖を断ち切り、感染拡大を収束方向に向かわせることです。また、若年層は重症化するケースが少なくクラスターを検知しにくいため、感染経路の特定には慎重な対応が求められます。
なお、地方自治体の対応に限界が生じる場合は、国の主導による短期解決を目指します。
各地方自治体は担当者の増員を図りながら地域経済の被害を最小限に抑え、国と連携して感染の拡大防止に努めます。
新たにクラスターを作らないための方法
不特定多数が接触する密閉された空間はクラスターの原因と考えられているため、以下の「3つの密」を避けることが大切です。
(1)密閉空間
窓のある環境では、できるだけ窓を開けて換気をする
(2)密接場所
人と人との距離は、1~2メートルほど空ける
(3)密接場面
近距離での会話や発声を避ける
密閉された空間に人が集まると、イベント以外でもクラスターは起こり得ます。気がつかないあいだに自分自身がクラスターに属したり、クラスターの感染源になったりする可能性もあるので、不要不急の外出は極力控えるべきでしょう。社会的な理由で検知しにくい飲食店に関わるクラスターも、病院や高齢者施設への感染拡大につながる恐れがあります。
なお、特定の感染者から感染が拡大したと思われる事例も発生しています。たとえば、「イベントA」に参加してウイルスに感染した場合、イベントの参加者全員が「イベントA」のクラスターに入ります。「イベントA」のクラスターに属した人が「イベントB」に参加して感染を拡大させれば、「イベントB」のクラスターにもなります。
感染の連鎖を防ぐためにも、イベントの開催者は規模の大小に関わらず、開催の必要性を再検討する必要があるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスは無症状の感染者でも感染力を持つため、自分自身が感染源になる可能性もあります。感染拡大を防ぐためには、イベントなどの密閉空間に出向くことは避け、不要不急の外出を自粛することが大切です。
また、カタカナ英語は印象に残りやすいですが、重要な局面での利用は不適切といえます。さまざまな見解や誤った情報の拡散によって無用な混乱を発生させる必要はないので、主導するのであれば、状況に適した平易な言葉を用いることが望まれます。