日本航空(JAL)では4月30日まで国内線の60%減便が決定(4月17日時点)するなど、新型コロナウイルスの影響によって、多大な損害を受けている。もちろん、これは航空業界に限ったことではなく、飲食や観光など多岐わたる業界も事情は同様。仕事が休みになったり、自宅業務に切り替わったりと、これまでにない日常の変化に不安を感じているビジネスマンも多いに違いない。そんな人たちにこそ、このJALグループの取り組みを知ってもらいたい。
「今、私たちにできること」は何か
不安は尽きないが、毎日暗い顔をしていてもしょうがない。大切なのは「今、できることは何か?」を考えること。JALでは「今、私たちにできること」と題して、整備士や運航乗務員など、JALグループで働くさまざまな職員たちの仕事風景の動画をツイートで発信している。そこには「また、空を飛ぶために」「また多くのお客様にお乗りいただけるその日に備えて」というメッセージとともに、一人ひとりが真摯に仕事と向き合う姿が描かれている。
同社の広報の方にお話を伺ったところ「新型コロナウイルス感染拡大防止の対応として、現在、多くの減便・運休を実施しておりますが、世界が落ち着きを取り戻した後、お客さまに安心してJALの翼をご利用いただけるよう、運航・客室・整備・地上それぞれの部門でしっかりと準備をしております」とのこと。
ツイートのコメントには、動画を観た方々の「もう泣けてきます」「また必ず飛行機に乗ります」「コロナに負けるな!」といった多数のメッセージが寄せられている。多くの人たちが""自分たちも頑張ろう"と勇気をもらえたに違いない。
\今、私たちにできること/
— JAPAN AIRLINES【JAL】 (@JAL_Official_jp) April 15, 2020
JAL整備士から皆さんへ✈️
また多くのお客さまにお乗りいただける、
その日に備えて
われわれ整備士が今できること
それは・・・#CreatedByJALEngineers#今できること #前を向いて pic.twitter.com/L0VZX2DB9S
苦難の時だからこそ、一丸となって"心のスクラム"を
JALの取り組みは、これだけではない。「社内では一人ひとりが『今、じぶんたちにできること』を考え行動していく取り組みが進んでいます」とのことで、今後もさまざまな活動が行われるそうだが、現時点で社内共有されている「一枚の絵」も感慨深い。
同社で働くさまざまな職員たちが笑顔でスクラムを組んでいる絵。これは、"仲間へのエール"として社内共有されたものだそうで、描いているのは現役のJAC整備士というから驚きだ。プロの漫画家やイラストレーター顔負けのクオリティである。今回は作者である、日本エアコミューター 第2点検整備グループの草野文雄さんに、作品に込めた想いを伺うことができた。
○制作の経緯について
多くの社員が出勤する度に、「よし今日も頑張ろう!」と思う気持ちを高めることができるよう、会社の仲間たちと話し合い、その想いを「さあ行こう!」のポスターで表現しました。昨年の6月からJAC本社、格納庫などの各正面入り口に設置しています。
それから約1年、新型コロナウイルスの感染拡大、それは航空業界に甚大な影響を与えており、JALグループ全体の大幅な減便・運休を余儀なくされています。この状況を誰よりも痛切に感じている我々航空業界の社員、そのひとりである私も不安や様々な思いが頭をよぎるなか、設置されたポスターを見た時、「さあ行こう!」ではなく、自然と「さあ乗り越えよう!」という言葉が飛び出しました。急遽、当時の仲間たちに声をかけて今に至ります。
○作品に込めた想い
新型コロナウィルスが全世界で感染拡大し、いつまで続くかわからない不安の中で、あえて円陣を組んだイラストを描いたのは「ひとりでは乗り越えられない難局もみんな心をひとつに一丸となれば乗り越えられる!」すなわち、心のスクラムと感じていただきたいからです。
今、全世界の人々、そして航空業界に従事する私たちに必要なのは運航している航空機の安全と感染拡大防止です。減便・運休により地上で待機している航空機をいつでも飛ばせるように準備するなど、今、私たちに出来ることを一人ひとりが考え行動し、そして我々JALグループが一丸となってこの難局を乗り越えるとの願いを込めて「心のスクラム」を描きました。
JALの機内誌と言えば『SKYWARD』だが、実は2016年から社員手づくりの機内情報誌『JAC NOW~ゆいタイム』が発行されていることをご存じだろうか。同誌に掲載されている「空の上の航空教室」という漫画も草野さんの作品。毎回、航空にまつわる心温まるエピソードと豆知識が描かれているのだが、次号のVOL.12に掲載される漫画は、特にJALグループの仲間に元気を出してもらいたいという特別な想いで描いたそうだ。
緊急事態宣言も発動され、空港へと足を運ぶ機会も減ってしまった今。非常に厳しい状況におかれている航空業界だが、そこで働く整備士の草野さんを含む社員の方々の"いま、自分たちにできること"を意識した前向きな活動の数々は、同じ苦境にあるビジネスマンにとっても、今を乗り切るためのヒントになるのではないだろうか。