花粉症では、くしゃみや鼻詰まりなどの症状のほか、肌がガサガサになったり、発疹ができたりと肌に症状が現れる人もいる。肌荒れが起こるときはどのようなスキンケアを行えば良いのだろう。
美容皮膚科・美容外科・形成外科のやながわ厚子医師に、おすすめのスキンケア法や対策をうかがった。
花粉で肌荒れを起こす「花粉症皮膚炎」
日本では20%を超える人が花粉症であるといわれている。特に多いのはスギ花粉による花粉症。花粉症といえば、目のかゆみ、鼻水、鼻詰まり、鼻のムズムズ感などの症状が多く現れるが、このほかにものどがイガイガする、肌がガサガサして、かゆみやひりつきなどの症状をきたすことがある。
ひどいときは顔全体が赤く腫れたようになることもあり、花粉による皮膚の症状は「花粉症皮膚炎」といわれている。花粉の飛散の始まる2月頃から症状が出てくることが多いそうだ。
肌が荒れるのはなぜ?
肌が腫れたり、かゆくなったりと荒れてしまう「花粉症皮膚炎」。なぜ花粉で皮膚へ症状が出るのだろう。やながわ医師によると「皮膚のバリア機能」が落ちることで症状が現れるという。
「皮膚のバリア機能とは、皮膚の構造で一番表層にある角層の機能のひとつです。角層とは、角層細胞の積み重なりと細胞間脂質などでできた層で、外部からの刺激を妨げて皮膚を保護する作用や、水分の蒸発を防ぐ保湿作用などがあります。さらに、紫外線防御機能や抗酸化機能、病原体に対する防御機能も担っています」
この皮膚のバリア機能は、紫外線や乾燥、ストレス、加齢などによって低下するといわれている。角層の薄い顔の皮膚や、アトピー性皮膚炎などの皮膚の炎症は、表皮のターンオーバーの異常によりバリア機能が低下しやすく、未成熟な角層細胞で形成される皮膚などは、もともとバリア機能が低い。この機能が低下すると水分の保持も困難となり、乾燥しやすい状態となる。
乾燥した皮膚はかゆみが出てしまい、掻いてしまうことでさらに角層の機能が低下し、ますます乾燥するといった悪循環に陥ることで症状が増悪し、治りにくくなってしまう。
外出時には花粉対策を
それでは、花粉症皮膚炎を予防するには何をしたら良いのだろうか。まず第一は花粉を浴びないように防御することが重要だという。
外出をするときはマスクをしたり、ゴーグル型のメガネをかけたりして、直接肌に花粉が触れないようにして過ごすと良いそうだ。また、帰宅後は洗顔して肌についた花粉を洗い流すようにして、花粉をできる限り落とすことを心がけよう。
肌荒れを予防するスキンケアのコツ
花粉で肌が荒れる場合は、スキンケアによって予防や症状を軽減させることができる。より良いスキンケアのコツをやながわ医師にうかがった。
「洗顔時に気をつけることとして、皮膚のバリア機能を持つ角層の細胞間脂質はセラミドやコレステロール、脂肪酸などで構成されています。熱めのお湯での洗顔や、界面活性剤による洗浄で流出してしまうので、肌に優しい洗顔料を使い、ぬるま湯で擦らず優しく洗顔することが大事です」
肌についた花粉を落とすためにも、帰宅時の洗顔は肌荒れを予防するポイントとなる。花粉により皮膚のバリア機能が落ちている状態のため、刺激を与えないよう優しく洗顔をすると良いそうだ。
「洗顔後は保湿機能の高いスキンケアをし、乾燥の強い場合は、無添加ワセリンなどの塗布も良いでしょう」
乾燥も肌荒れの原因のひとつとなるため、顔を洗ったら保湿も忘れずに行いたい。ただし、スプレータイプやアルコール成分を含む化粧水のみでは、より乾燥することがあるので注意が必要だ。
特に気温が低く、空気も乾燥している冬場は発汗や皮脂量が少ないため、より乾燥しやすくなる。部屋では加湿器を使用し、こまめなスキンケアをすることで予防効果が期待できる。
メイクはあえてしたほうがいい
肌荒れをしているときはすっぴんで過ごしたり、メイクを控えたりする女性もいるだろう。しかし、素肌でいると逆に皮膚に花粉が付着しやすくなるため、防御するためにもある程度のメイクはしたほうが良いという。
「メイクをするときは、メイクをするまでのスキンケアが重要です。保湿機能の高いクリームなどを使用することや、最近では、クリニックには医療機関専売のスキンケアとして、花粉や紫外線が入らないように均一膜技術の日焼け止めなどがありますので、そういったものを下地に使用することをおすすめします。ここまではメイクをしてもしなくても毎日しておいたほうが良いでしょう」
ファンデーションを塗る場合は、硬くなったスポンジやブラシは使用せず、優しく擦らないようにするのがポイント。このほかにも、花粉を防ぐためのスプレーを塗布するのも効果的とのこと。
食事で予防できる?
肌荒れを予防するにはどのような食事をすれば良いのだろう。まずは食生活の見直しが大切だとやながわ医師は語る。
「花粉症がここまで増えてきている原因には、我々の食習慣や生活環境の変化があると考えられます。特に、食習慣の変化は大きく、動物性のものやいろいろな添加物の入ったものを摂取する機会が多くなっています。また、人によっては、偏った食生活の人も増えています」
具体的な改善策として、腸内環境を整えることが重要だと指摘。栄養バランスのとれた食事を心がけると良いそうだ。
「基本的には、新鮮な野菜果物を多く摂り、動物性のものや乳製品などは控えるほうが良いでしょう。食物繊維の多いものや発酵食品などが腸内環境の改善には役立ちます」
症状が出るときは病院へ
花粉によって肌が荒れるときの対策や予防策を紹介してきたが、皮膚のかゆみ、赤み、荒れ、発疹などの症状がある場合は、まずは皮膚科に相談することが一番。かゆみがあって掻いてしまうと、症状の悪化のサイクルに入ってしまうことがあるため、より注意が必要だ。
「特に、普段からお肌のトラブルのある方や、目や鼻に花粉症の症状のある方は、お肌にも症状が出る可能があります。内服薬が良いか、外用剤が必要か、または漢方薬などが良いかなど、自己判断せずに一度ご相談ください」