半導体市場動向調査会社の台湾TrendForceは、2020年第1四半期の半導体ファウンドリ業界は前四半期の注文増加と顧客の在庫積み増し需要を背景に、繁忙期であった前四半期比で2%減、半導体不況に苦しんだ前年同期比で31.5%増の180億6000万ドルと堅調に推移するとの調査予測を発表した。

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    2020年第1四半期の半導体ファウンドリ売上高ランキングトップ10予測 (単位:百万ドル)(出所:TrendForce)

7nmの躍進で50%以上のシェアを握るTSMC

業界トップは市場シェア54.1%、同四半期の売上高も前年同期比43.7%増の102億ドルと圧倒的な存在感を示すことが予測されるTSMCは、先端プロセスである7nmの生産能力の多くがすでにクライアントから事前予約の形で抑えられているため、安定した受注を勝ち取っている。そのため、一部のクライアント都合でウェハの投入数量を調整する必要が生じたとしても、その後のクライアントからの注文でウェハ生産能力のギャップを埋めることができると見られており、それは7nmプロセスの高い稼働率が続くことを意味するという。

また、12/16nmプロセスに関しては、ウェハの投入数量の潜在的な調整の可能性が完全に排除できるわけではないものの、7nmの好調さを背景に、もし仮に影響がでても、そこまで大きな問題になる可能性は低く、さらに特殊プロセスなども5G、IoT、車載半導体関連の需要を満たしていることから、全体として約90%の稼働率を維持できる可能性は高いとしている。

EUVに期待も新型コロナの影響を受けるSamsung

業界2位のSamsung Electronics(Samsung Foundry)は、5G向けアプリケーションプロセッサ、CMOSイメージセンサ、有機EL向けディスプレイドライバIC(DDIC)、HPC向け製品などに向けた生産能力の増強と併せて、EUVの適用範囲を拡大することで、先端プロセスの収益割合を高めることに取り組んでおり、売上高も同15.9%増の29億9600万ドルと堅調な伸びを示すことが予測されるという。

ただし、新型コロナウイルスの感染拡大が韓国国内に大きな影響を与えており、この影響から同社の売り上げは予測ほど伸びない可能性もあるという。

FD-SOIシフトで5G需要にこたえるGF

業界3位のGlobalFoundries(GF)はFD-SOI用いた22nmプロセス(22FDX)ならびに12nm LP+ FinFETプロセスを中心に5G、車載半導体など向けに注力しており、売上高は同15.6%増の14億5200万ドルとなることが予測されるという。

また、台湾Vanguard International Semiconductor Corporation(VIS)にシンガポールの200mmウェハ工場を売却した結果が2020年第1四半期の売上高に影響を与える可能性があるとする。同社は2022年末までにニューヨークの元IBMファブをON Semiconductorに売却することも決めている。

日本の拠点が売り上げ増に貢献したUMC

台湾ファウンドリ業界のもう1つの雄であるUMCは22/28nmプロセス製品の受注が増えたこと、新規クライアントならびに日本の拠点(旧:三重富士通セミコンダクター、2019年10月よりユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン:USJCに社名変更)などの影響から稼働率が四半期ごとに上昇しており、その結果、2020年第1四半期の売上高は前年同期比32.2%増の13億9700万ドルとなるとみられるという。

クライアントの在庫積み増しで各社売り上げ増に期待

市場5位以下の動向としては、5位のSMICはCMOSイメージセンサ、パワーマネジメントIC(PMIC)、指紋センサ、組み込みメモリアプリケーションなど中国国内市場からの需要の増加により、稼働率が最大レベルにとどまっているとのことで、ある程度の収益維持が見込めるとしている。

また、同7位のVISならびに8位のPowerchip Semiconductor Manufacturing(PSMC)はともにCMOSイメージセンサ、ディスプレイドライバICに対する需要の増加や、クライアントの在庫積み増しといった動きを背景に売り上げを伸ばしているほか、VISはGFから買収したシンガポールのFab 3Eからの収益も加算される見通しだという。

一方の6位のTowerJazzと9位のHua Hong Semiconductorは、従前の予測と比べてクライアントの在庫積み増し力が弱くなる可能性があり、売上高も控えめになる可能性があるとしている。

新型コロナウイルスが今後、どういった影響を及ぼすか?

なお、TrendForceでは、2020年第1四半期の半導体ファウンドリ産業の予測を踏まえて、2020年に半導体産業全体が回復するための1つの指標になるとしているが、新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な課題となり、経済が減速するにつれて、クライアント各社が大きな不確実性に直面することとなり、それが半導体ファウンドリ業界の成長を鈍化させる可能性があると指摘している。ただし、具体的に、どのような影響を及ぼしたのかについては、2020年第2四半期に明らかになるとみられるだろうとコメントしている。