毎年2月になると耳にする、確定申告の話題。会社員の場合、勤め先の年末調整で申告が済んでしまいますが、年末調整では申告できない控除などがある時には、確定申告を行う必要があります。たとえば、医療費をたくさん支払ったときです。医療費控除の確定申告をすると、多く支払ったお金を還付金として取り戻せる可能性があります。医療費控除の確定申告はいつまでに、どのような手続きをするのか確認してみましょう。

  • 医療費控除の確定申告で多く支払ったお金を取り戻せるかも

    医療費控除の確定申告で多く支払ったお金を取り戻せるかも

医療費控除の確定申告とは

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定以上の時、所定の手続きを行うことで税金を安くできる制度です。医療費控除の確定申告をすれば、支払った医療費に応じて、税金を計算する基準となる「課税所得」が少なくなり、結果として税金が安く抑えられるのです。医療費控除は、会社の年末調整では申告できないため、自分で確定申告を行う手間が生じますが、会社員の人なら支払った税金の一部が還付金という形で戻ってきます(自営業者は、これから支払う税金が安くなる)。医療費控除の申告期間や申告できるケース、対象となる医療費をみていきましょう。

還付金とは

還付金とは、所得税の払いすぎといった理由などにより、納税者へ返還される税額を指します。源泉徴収された所得税額が実際に納めるべき金額よりも多い場合、確定申告を行なえば払いすぎた所得税が還付金として納税者へ返還されるのです。

還付金を受け取る方法は「預貯金口座への振込み」と「最寄りのゆうちょ銀行または郵便局での受け取り」があります。

では、還付金がいくらになるのかといえば、単純な計算方法としては

還付金=源泉徴収額-所得税額

という図式が成り立ちます。仮に還付金の額がマイナスになった場合、本来納めるべき税金が足りないことを意味するため、追加で納税をしなければなりません。注意しましょう。

医療費控除の申告期間

2020年の所得税の確定申告は、2月17日~4月16日です。しかし、還付金を受け取るための医療費控除の申告であれば、医療費がかかった年の翌年1月1日から5年間、申告が可能となります。つまり、2019年の1年間にかかった医療費控除の申告は、2020年1月1日~2024年12月31日までできるということです。ただし、年末年始は税務署が休みですので、直接提出する場合は気を付けましょう。

なお、過去の分の医療費控除を申告したい場合も、2015年以降にかかった医療費であれば、2020年中に申告が可能です。

医療費控除の申告ができるのは?

医療費控除の確定申告ができる目安は、「1年間で支払った医療費の合計が10万円を超えているかどうか」です。この医療費には、税金を納める本人だけでなく、配偶者や家族など「生計を一にする人」のために支払った医療費も含むことができます。

医療費控除の確定申告で戻ってくる金額は、医療費控除額(自己負担した医療費のうち、医療費控除の対象となる金額)に所得税率を掛けたものです。医療費控除は、医療費から「保険金などで補てんされた金額」と「10万円」を差し引いた金額です。つまり、医療費控除の確定申告は、1年間で自己負担した医療費が10万円を超えた時に利用できる制度ということができます。

ただし、総所得(給与所得者の場合、年収から給与所得控除を引いた金額)が200万円未満の人の場合、差し引かれる金額は10万円ではなく、総所得の5%となります。

医療費控除の対象となる医療費

医療費控除は、支払った医療費の全てが対象となるわけではありません。医療費控除の対象となる医療費、対象とはならない医療費はどのように見分ければいいのでしょうか。

まず、医療費控除の対象となる医療費は、病気やケガの治療、分娩などを直接の目的とした費用です。たとえば、医師や歯科医師による診療や治療の費用、出産費用、視力回復のためのレーシック手術の費用、不正咬合の歯列矯正の費用、療養上必要とされる差額ベッド代などのほか、通院にかかる交通費(緊急の場合や公共交通機関が利用できない場合は、タクシー代も含まれる)、治療や療養に必要な医薬品の購入費用などが当てはまります。

一方、医療費控除の対象外となるのは、病気やケガ、分娩などを直接の目的としていないものです。たとえば、自分の都合でかかった差額ベッド代、美容整形の費用、病気の予防や健康増進のために購入したビタミン剤やサプリメントの費用などは対象外となります。

どのように申告すればいいの?

では実際に、医療費控除の確定申告はどのように行えばいいのでしょうか。必要となる書類や手続きの流れ、提出方法をまとめました。

<必要書類>
・医療費の支払いを証明する書類(レシート、領収書など/※医療費の計算のためで、提出は不要)
・交通費の領収書
・勤務先の源泉徴収票
・医療費控除の明細書
・マイナンバーなど本人確認書類
・確定申告書A

この他に、健康保険組合等から送られてくる「医療費のお知らせ」があれば、この内容を医療費控除の明細書に転記することで、簡単に記載が済み、手間が省けます。

<手続きの流れ>
まず、レシートや領収書を元に、「医療費控除の明細書」に内訳を記載しましょう。次に、各種控除や医療費控除額、医療費の総額などを記載し、確定申告書Aを作成します。最後に、マイナンバーなど本人確認書類の写し(コピー)を添付し、地域の税務署へ提出することで手続きができます。

なお、医療控除の確定申告では、領収書やレシートの提出は不要ですが、「医療費控除の明細書」を記載する際に必要なのと、その内容を確認するために、申請から5年間は「証拠」として提示や提出を求められることがあります。大切に保管しておきましょう。

<提出方法>
書類が揃ったら、税務署へ提出します。郵送で送ることもできます。ここで気を付けておきたいのは、提出の際にマイナンバーの確認が必要になるという点です。直接税務署へ提出する場合は、窓口でマイナンバーカードを提示します(マイナンバーカードがない場合は、マイナンバー通知カードと運転免許証などの身分証を提示)。郵送の場合は、「確定申告書の添付書類台紙」に本人確認書類の写し(コピー)を添付します。

医療費控除の確定申告をしてみよう

会社員の人にとって、確定申告は、あまりなじみのあるものではないかもしれません。しかし、申告することで還付金が受け取れる可能性があるなら、医療費控除の確定申告は忘れずに行いたいものですね。また、普段から医療費の領収書やレシートはしっかり管理しておくと、確定申告の時に慌てずスムーズに申告ができそうです。