マネースクエア 市場調査室 チーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話します。今回は、アジアだけでなく世界でも広がりを見せている新型コロナウイルスが、アメリカの株価へどれほど影響するのかについて語っていただきます。
2月24、25日、米国の株価が2日連続で大幅に下落しました。新型ウイルスの感染拡大がアジアだけでなく、中東や欧州まで広まったこと、米CDC(疾病対策センター)が「米国内でも市中感染が起きると予想している」と表明したことで、改めて懸念が強まったためです。
ニューヨーク・ダウ株価指数(以下、NYダウ)は2月12日に過去最高値を更新したばかりでしたが、25日の安値までの下落率は▲8.7%に達しました(いずれもザラ場)。
今後、新型ウイルスの感染がどのように拡大・終息するか、世界経済にどのような影響が出るのか、全く予断を許しません。そのため、株価の先行きにも大きな不透明感があります。以下では、近年の主な株価下落局面からNYダウがどこまで下落するかのヒントを探してみましょう。
2010年以降の株価下落の主なケース
2010年以降の主な下落局面でのNYダウの下落率は概ね10~20%程度でした(下図&下表)。下落率が10%未満のケースもありましたが(2012年の2回)、いずれもギリシャのユーロ離脱や財政危機が懸念された場面であり、米株にとってはある意味「対岸の火事」でした。
米国では「財政の壁」問題もありましたが、失効予定の減税が期限までに延長されており、杞憂に終わりました。今回のケースをそれらになぞらえる(=NYダウの底打ちが近いと考える)のは楽観的過ぎるかもしれません。
弱気相場は2、3カ月かけてピークから15%下落
「弱気相場」の基準は「ピークから15%下落」が一般的とされており、過去の主な下落局面も(上述の2ケースを除いて)ほぼそれに沿った形です。NYダウが弱気相場入りするのであれば、現時点ではまだ「道半ば」と言えそうです。ピークから15%の下落であれば、NYダウは25,000ドル程度への下落が想定されます。
気になるのは、下落期間の長さです。過去の主な下落局面は2、3カ月継続しました。今回は株価のピークからわずか2週間しか経過していません。過去2日のペースでの下落は続かないでしょうが、なかなか底打ちが見えないという可能性はありそうです。
景気後退なら2年半で50%下落も!?
そして、新型ウイルスの影響もあって米国がリセッション(景気後退)に突入するならば、株価の下落は上述のような「2、3カ月で15%程度」では済みそうもありません。過去2回のリセッションは、2001年のIT株バブル崩壊と2008年のリーマンショック(※)が背景にあり、NYダウの下落は(上下の動きはあるにせよ)1~2年半続き、トータルの下落率は40~50%に達しました。下落率が50%ならNYダウは15,000ドル程度まで下落することになります。
(※)当時はリーマンショックの9カ月前にリセッションが始まっていました。既に住宅バブルの崩壊が始まっていたからです。リーマンショックがリセッションを長く、深いものにしました。
新型ウイルスの影響がどのように広がるのか、注意深く見守る必要があるでしょう。