必要な機材がすべてそろったかどうかを部下に確認したところ、「概ねそろいました」と報告を受けて安心していたら、まだ7割程度しかそろっていなかった! そこで今回は、「概ね」がいったいどの程度の割合を示すものなのか、アンケートの結果とともに解説します。

  • 概ねの範囲はどれくらいですか?

概ねの意味と読み方

概ねは【おおむね】と読み、その意味は、「だいたいの趣旨(趣意)」「大意」「おおよそ」などです。ビジネスシーンでは、まだ正確な数値や最終的な報告が出せない段階にある時や、100%ではない状況の時に、「概ね1万人を超えています」「概ね完了しました」などと表現します。

【概】という漢字は、元々は「升の上にもりあがった米をかきならして平らにする棒」のことを指したことから、「ならして一様にする」「大体」といった意味を持っています。 【概】を用いた熟語をみると、「概要」(全体のあらまし。だいたいの内容)、「概算」(おおよその計算)、「概括」(大まかに全体の要点をとらえまとめること)など、いずれも、【概】という漢字が、大まかでざっくりとした感覚で用いられていることがわかります。

「概ね」と「大旨」の違い

広辞苑では、【概ね/大旨】と記載されています。一般的に両者は同義として扱って問題ないようですが、「大旨」は【たいし】とも読み、【たいし】として用いる場合には、「文章・論説などの、おおよその主旨」という意味になります。

つまり、「大旨」は文章や論説に関して用いる用語であるのに対し、「概ね」は幅広くさまざまな物に使用することができるという違いがあるのです。そのため、現在では、文章や論説についても「概ね」の方を用いる人が多く、「大旨」はほとんど使われることのない表現となっています。

「おおむね」を漢字に変換する際には、その点を踏まえた上で正しく選択しましょう。

「概ね」はどのくらいの割合を指す言葉?

非常に抽象的な表現である「概ね」ですが、では、実際にはどのくらいの割合を指す言葉として使用されているのでしょうか。マイナビニュース会員266名を対象にアンケートを実施しました。

Q.「概ね完成しました」と言われたらどのぐらいの%を表しますか?

60~69%:4.5%
70~79%:18.0%
80~89%:49.6%
90~99%:27.8%

  • 「概ね完成しました」と言われたらどのぐらいの%を表しますか?

調査時期: 2020年1月29日~30日
調査対象: マイナビニュース会員
調査数: 男女266名
調査方法: インターネットログイン式アンケート

調査の結果、約半数(49.6%)が「80~89%」と回答。次いで「90~99%」が27.8%と、8割近くの人が「80%以上」と捉えていることがわかりました。「概ね」を「半分(50%)くらい」と捉える人は、まずいないと言えそうですが、その範囲は60~99%と非常に広く、あくまでも、個人の感覚値による抽象的な表現でしかありません。

お互いの認識に差異が生じることもしばしば……。ゆえに、ビジネスシーンなど、大事な場面での使用には注意が必要です。

「概ね」を用いる際の注意点

前述の調査結果も示しているとおり、「概ね」が指す割合は100%でも50%以下でもないことは確かですが、その範囲は非常に広いと言えます。そのため、具体的な数値があるとき、または詳細な報告を求められている際に用いるのは不適切です。

例えば、上司に頼まれていた仕事の進捗状況を聞かれ、「概ね完了しています」と答えたところ、上司から「では、今日の夕方にでも、それを持って〇〇社に行ってきます」と言われたとします。

この時部下は、7割近く終わっているので、明日には完成するという意味で「概ね」を用いたつもりが、上司には、95%は出来上がっているものと受け取られてしまったわけです。

もう一つ例を挙げると、小学校で「新1年生の人数は概ね70人です」と言われたらどうでしょうか。小学校1年生のクラス編成は、文科省によって1クラス35人を上限とされています。そのため、70人であれば2クラスで足りますが、71名の場合、3クラス用意する必要があります。

ゆえに、68人とか73人とか明確に人数が分かっているのであれば、「概ね」ではなく、きちんと数値で答えるべきですね。

このように、「概ね」という表現は非常に抽象的で、時に大きな誤解を招きます。しかしながら、一方で、まだ明確な数値を出せない状況下においても、おおよその数値を述べることのできる便利な側面も持ち合わせています。

また、「だいたい終わりました」と言うと、どこか学生っぽい発言のように聞こえますが、「概ね完了しました」という表現は、より社会人らしくスマートに聞こえように思います。

とりわけ、正確な情報が求められるビジネスシーンでは、具体的な数値でもって報告することをおススメしますが、場合によっては、上手に「概ね」を用いてみるのも良いでしょう。

「概ね」を用いた例文

「概ね」を用いた例文です。「概ね」の部分を「だいたい」や「おおよそ」などに置き換えてみると、わかりやすいと思います。

  • 術後の経過は概ね良好です。明後日には退院できるでしょう。
  • 作業は概ね完了していますので、予定通り納品いたします。
  • 被害の状況は概ね把握しておりますが、見落としがないか再度確認中です。
  • 彼の予想は概ね的中するのだが、今日は珍しくハズしたようだ。
  • 貿易交渉について両首相は概ね合意したとのことです。

「概ね」を用いた用語

「概ね」という表現には、「概ね満足」「概ね順調」「概ね完成」「概ね良好」など、「概ね」の後に続く言葉が決まり文句のようになっている表現がいくつかあります。

概ね満足

・多少の不満はあるものの、ほぼ満足している状態

概ね順調

・多少の不安は残るものの、ほぼ順調に進んでいる状態

概ね完成

・100%ではないものの、間もなく完成する状態

概ね良好

・今後どうなるかわからないが、今のところ良い状態

いずれも、ポジティブな場面で使用されていることにお気づきでしょうか。「概ね」は、「概ね不調で」「概ね達成できていない」など、基本的に、ネガティブな状況を表す言葉と組み合わせて用いることはありませんので、覚えておきましょう。