すけちゃんさん(@AgingAnarchist)がツイッターに投稿した画像が話題です。うず高く積まれた海苔巻きのように見える料理。上からは2種類のソースがかけられています。

  • 寿司ではなく、“SUSHI”? ※タップで拡大

これ実は、ご友人のレストランで賄い料理として作られた寿司……ではなく“SUSHI”なんだそう。「これはアメリカで人気のある食べ物でSUSHIと言います。日本の寿司が起源という説が有力です」と写真にコメントを付けたすけちゃんさん。多くの人の驚きと共感をはじめ、海を超えた料理が現地でどのように受け入れられるのかといった議論にまで発展していました。

今回、在米25年で元寿司職人のすけちゃんさんに、写真の詳細や、SUSHIについて思うことなどを聞いてみました。

――お写真のSUSHIは、レストランなどで提供されたものですか? 詳しくお話を聞かせてください

写真は僕が撮ったカリフォルニアロールで、友人のSUSHIレストランの賄いとして作られたものです。酢飯、海苔、カニカマ、アボカド、キュウリを、丸ごと天ぷらにしたものを切って、鰻(うなぎ)のタレとマヨネーズベースのスパイシーソースをかけてあります。

ちなみに、これはカリフォルニアロールをベースに作られたSUSHIなんですが、クリームチーズ、サーモン、アボカドを巻いたものを同じように揚げたSUSHIが、寿司屋の大将を以前にしていたときの人気メニューの1つでした。

カリフォルニアロールが“裏巻き”になった理由

  • 海苔を内側に巻き込むカリフォルニアロール ※写真はイメージ

――ツイッターでは「美味しそう」というポジティブな意見だけでなく、「悲しい」といったネガティブな意見もあり議論を呼んでいました。日本を離れたSUSHIについて、どのように思われますか?

僕は、食は地域に合わせて変化していくのが自然なことだと思っています。ラーメン、カレー、パスタ料理などと同じく、日本の寿司もアメリカのSUSHIとして進化したおかげで、これだけ日本食がアメリカで、世界中で食べられるようになりました。

しかも価格帯も高く、オシャレな食べ物として認識されているので、日本という国のイメージアップにも大きく貢献していると思います。

特にカリフォルニアロールは日本食の世界で、稀に見る大発明だと思います。裏巻きにすることで

・アメリカ人の苦手な黒い色を隠すことができた
・中に入れる具を多く出来た
・ロールの上に具を乗せることが出来た

などの良い点が生まれました。実際に、ほとんどのSUSHIの土台となっているのがカリフォルニアロールです。

寿司シェフと寿司職人の違い

以前、「寿司職人に長い修行は必要ない」という議論が話題になったことがありますが、海外でSUSHIをやっていく人にはその通りだと思います。外国での人気の寿司は握りではなくロール。しかも日本と違って様々な魚の旬な味を楽しむような人はほんの一握りです。アメリカの平均的なSUSHIレストランでは魚の種類もせいぜい5~6種類あればメニューが作れます。

一方、アメリカの“寿司シェフ”と日本でみっちり修行した“寿司職人”とでは、根本的に仕事の質や動きが違うというのが、どちらとも一緒に仕事をしてきた僕の感想です。

日本の伝統的な寿司は、職人の育成法も含め、日本国内でしっかり守って欲しいと願います。幹がしっかりしていれば、枝葉が何処でどう変化しようが影響は無いですし、外国ではSUSHIとしてもっと色んな変化をしてほしいというのが僕の思うところです。

――たしかに、SUSHIを否定することは、日本で食べられている数々の食文化の多くを否定することにつながると、お話を聞いていて感じました。これからどんなSUSHIが登場するのか楽しみですね。今日はありがとうございました