――井上さんが『ウルトラマンタイガ』の特撮セットをご覧になったとき、どんなことを思われましたか?

井上:撮影が始まって間もないころ、見学させてもらったんですけど、僕は子どものころ『ウルトラマンコスモス』が好きだったので、23歳になったいま「ウルトラマン」の特撮現場を拝見することができるとは!と、感動を覚えていました。撮影を観させていただいて、すごく印象に残ったのはタイガと怪獣の格闘によってビルが倒壊し、バチバチ!って火花が散るシーン。これって僕たちがテレビで観ているときは、ごく自然にビルが壊れていくさまを「すごいな~」とか思っているわけなんですけれど、この倒壊するビルをセッティングして、周りにミニチュアを置いて街をひとつ作り上げて、ウルトラマンと怪獣に入ってもらって……と、準備だけで1~2時間くらいかかっているのを知って、スタッフさんのご苦労をしみじみ感じました。

市野:昔はもっと時間がかかっていたけど、最近は技術の向上もあって、少しは準備の時間も短くなりました。

井上:特撮カットの撮影風景を観て以来、ウルトラマンシリーズを観るときの見方が変わってきて、特撮スタッフ寄りの視点になりました。友だちと一緒に観ていても「見ろ、このシーン! このカットを撮るのにどれだけ時間かかっているか知ってるか?」なんて、熱く説明してしまいます(笑)。

市野:そうやって、特撮チームの苦労を俳優がわかってくれるのはありがたいですね。

井上:特撮の"裏側"を知ったことによって、特撮作品の魅力に目覚めました。"沼"にハマったというか(笑)。

市野:わははは!(笑)

井上:テレビ画面に一瞬しか映らないようなミニチュアもすごく精密に作ってあって、映像で観ると実景のようにしか見えないときがありましたね。特撮スタッフの方々のこだわりと熱意が画面からうかがえるんですよ。

――あえてミニチュアセットを画面の手前に置き、その精密さ、本物らしさをアピールするような演出もいくつか見られましたね。

井上:武居(正能)監督が大のラーメン好きなのをスタッフさんが知っていて、ラーメン店の看板に「武居亭」って書いてあったのを観たことがあります(笑)。精密なミニチュアにそういう"遊び"のネーミングをちょいちょい入れているのも憎いですよね。

市野:田口(清隆)監督が演出するウルトラマンシリーズには、僕がよくチョイ役で出演することがありました。ひそかに僕は、田口組の常連俳優だと思っています(笑)。でも、『ウルトラマンタイガ』のときに田口監督は僕を呼んでくれなくて、非常に残念だったなあ。

――市野監督はテレビの最終回を受けて劇場版を作るにあたり、まずどのような作品にしようと考えられましたか。

市野:脚本の林(壮太郎)さん、中野(貴雄)さんと共に「劇場版はどんな話にしようか」と話し合いました。テレビシリーズを最終回まで作った段階で「ちょっと待て」と言われたのは「タイガはタロウの息子という設定なのに、ぜんぜんタロウが出てこないじゃないか」ということ(笑)。せっかくタロウの息子という設定なんだから、タロウとタイガの「親子共演」は映像作品として残しておきたいよね、みたいな話になり、タロウを出そうということになりました。

また、トレギアとタロウの関係はいったいどうなってるの? どういう因縁があるの?といった部分がはっきりしていなかったので、ここもしっかりと描いておきたい、となりました。さらに、令和最初のウルトラマン映画なので、これまでのニュージェネレーションヒーローズを勢揃いさせたい、という要望も入って、これらを一体どうやってまとめようかと頭をひねりました(笑)。

井上:盛りだくさんな内容でしたよね。特に、湊兄弟やリク、ガイ、大地、ショウ、ヒカルたちがE.G.I.S.の仲間たちひとりずつ関わるドラマがあって、クライマックスに集結するところは、とても「お祭り」感があると思います。

市野:あと大事なことは、テレビ最終回の段階ではヒロユキとトライスクワッド(タイガ、タイタス、フーマ)がずっと一緒にいることになるので、映画では彼らの今後がどうなるのか、というのも考えておきたかったんです。いろいろな要素を見せないといけませんが、根本の部分は「ヒロユキとタイガの関係性」をベースにして、そこを外さないようにしようと申し合わせています。

設定協力で参加してもらっている渋谷(浩康)さんが面白いことを言ったんですよ。「この映画、学園ドラマでいうところの"卒業スペシャル"ですよ」ってね(笑)。ひとりで十分やっていけるくらい成長して、やがて"卒業"の日を迎える。でも、ふたたび一緒に集まるときは集まればいいよね……って雰囲気を描きたかったんです。卒業スペシャルらしく、かつて活躍したOBたちも駆けつけていますしね(笑)。

井上:ヒロユキとタイガがどういう結末を迎えるのか、最後までじっくりと映画をご覧いただきたいですね。タロウとタイガの"親子"感、そしてトレギアとタロウの"人間関係"なんて、テレビシリーズのほうでは意外と描けなかったところがあったので、映画の台本を読んだときは「やっとこのときが来たか……」と気が引き締まりました。