――テレビシリーズ(全25話+α)の中で、これは忘れられないという印象的な出来事があれば教えてください。

井上:たくさんありすぎてひとつに絞ることができませんが、あえて言うならば、タイガの闇堕ちを経て、トライストリウムが誕生する一連のエピソードですね。

市野:第14、15、16話の、シリーズとしても重要なところでした。

井上:ドラマ的にもすごく盛り上がりましたね。あとは、自分の中でとても大事に思っているエピソードとして、ヒロユキが昔かわいがっていたチビスケ(キングゲスラ)と"再会"する第2話が忘れられません。撮影が始まったばかりで、あんなにガッチリ芝居をしたのも初めて。経験することみんな初めてで、刺激的すぎました。

市野:第2話が好きだって、ずっと言ってたよね。僕は『ウルトラマンコスモス』(2001年)にも携わっていたから「怪獣は友だちだ」という思いがあるんで、ヒロユキとチビスケが心を通わせるところに力を置いて演出しました。でも、トレギアが出てきて悲しい結末を迎えることに……。

井上:多くの方たちの記憶に残る、いいエピソードでした。

市野:生命の大切さとはどういうものか……みたいなテーマが打ち出せたのではないかと思っています。

井上:チビスケに限らず『ウルトラマンタイガ』では、毎回誰かが辛い目にあって、"重い"話が多いとよく言われました。

市野:少々ハードなドラマ展開も、ある程度意識してやりましたね。

井上:ニュージェネレーションウルトラマンシリーズの中でも、登場キャラクターが辛い思いをすることが多かったかもしれません。でもそれだけ、観ている子どもたちの心に響くストーリーになっていると信じています。

――テレビシリーズ、ならびに映画の撮影をすべて終えた(クランクアップ)とき、井上さんはどんな思いでしたか。

井上:頭の中では「これからまだまだ、イベントとかもあるし、気を抜いちゃいけない」と思いつつ、やっぱり節目ですからホッとしたところがありました。半年前、撮影が始まった時点では、僕がこうやってクランクアップを無事迎えられるのかどうか、自信がなかったですからね。花束をいただいて、駆けつけてくれた共演者のみんなから「クランクアップおめでとう!」と言われても、なんか信じられない感じでした。とはいえ、僕たちの出番は終わったとしても、そのときはまだ特撮班の撮影がたくさん残っていましたから、スタッフのみなさん的には「まだまだ撮影があるぞ」という緊張感があったと思います。

市野:クランクアップで花束をもらったとき、井上くん、ボロ泣きしてたなあ。

井上:いやあ感情が高ぶりすぎて、当日のことはあまり覚えてなくて(笑)。というか、あんなに泣いてしまうとは思っていませんでした。

市野:(クランクアップの挨拶の言葉を)なかなか言わへんなあと思って聞いてたけど(笑)、やっぱり「やり遂げた」という気持ちが涙を流させたんじゃないかなあ。

井上:うれしかったのは、クランクアップはロケ先で迎えたのにも関わらず、出番がなかったはずのタイガが駆けつけてくれたことです。

市野:スーツアクターの岩田栄慶さんが演じた、正真正銘のタイガだったね。

井上:栄慶さんって、タイガでいるときはぜったいに言葉を発しない人だったんですが、僕とハグしながら「お疲れさま」と声をかけてくれて……それがきっかけで。

市野:号泣スイッチが入ったんだね(笑)。

井上:あれは感激しましたよ~。