日本でも感染が広がりつつある新型コロナウイルス感染症。子どもへの感染を心配されている方も多いかもしれません。子どもへの感染は、どのような症状が想定され、どう対応したらいいのか。感染を防ぐためには何をすべきか。

小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。

  • 新型コロナウイルス、子どもへの感染について小児科医に聞いてみた

まずはインフルエンザや溶連菌感染を疑おう

――新型コロナウイルス、子どもへの感染ではどのような症状が出るのでしょうか?

子どもも大人も同様なのですが、発熱、咳、全身の倦怠感といった症状が認められます。花粉症のように鼻水が出たりつまったりといった症状は、今のところ報告されていません。また一部の患者さんの中には、嘔吐や下痢を訴えた方もいらっしゃったとのことです。

子どもですと、なかなか全身の倦怠感やだるさを言葉で訴えることが難しいかもしれません。ご飯が食べられないとか、寝たまま動こうとしないとか、いつものように活発でないといったことが症状の発見につながりやすいと思います。

――子どもへの感染で、重症化の心配はありますか?

現時点で、子どもの患者で重症化したケースは報告されていないとのことです。

「日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会新型コロナウイルス感染症に関する Q&A(2020 年 2 月 12 日現在)」より

――子どもが新型コロナウイルスに感染したのではないかと思ったら、どのように行動すればいいですか

新型コロナウイルスの感染で認められる症状は、インフルエンザの症状に似ています。そして現時点では、インフルエンザや溶連菌など、流行している他のウイルスに感染する可能性の方がはるかに高いです。

突然の発熱、頭痛、悪寒、全身のだるさ、筋肉痛、関節痛、のどの痛みなどといった症状が出たら、まずはインフルエンザを疑いましょう。

また急な発熱とのどの痛み、皮膚に赤い発疹ができたり、舌が赤くなってブツブツができたりしたら、溶連菌が疑われます。

海外から帰ってきてすぐに症状が出たとか、新型コロナウイルスの感染が疑われる人との接触があったといったケースなど、心配な要素がおありの場合には、大人と同様に、最寄りの保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター」にご連絡されてもいいとは思います。

厚生労働省では「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合」に、同センターへ相談してくださいとしています。

ただ、先ほども申しました通り、子どもがだるさや息苦しさの状況を的確に伝えるのは難しいかもしれません。また、子どもの平熱は高いので、「37.5度以上の発熱が4日以上」という条件にあてはまったらすぐに相談、ということには、必ずしもならないのではないかと私は考えます。

――感染を予防するために、できることはありますか?

これはインフルエンザも溶連菌も同様ですが、飛沫感染・接触感染を防ぐことが大切です。外出するときはマスクをし、とにかく手洗いうがいを徹底してください。また、アルコール消毒は新型コロナウイルスにも有効ですので活用しましょう。

こういった感染症は、感染者の飛沫が手などに付き、それが口や鼻などから体内に入る、という経路で感染することが多いです。おもちゃや絵本、電車の手すり、トイレなど、公共のスペースにあるものを触ったときにも、こまめに手洗いや消毒ができるといいですね。

――お出掛け先での感染は心配ですね

観光地など人の多いところへあえて出掛けるのは、控えた方がいいでしょう。またもし出掛けるとしたら、屋内より屋外の方がいいと思います。閉鎖空間の方が感染症が広がりやすいからです。

それから、飛行機や船、電車ではなく、自家用車での移動にすることで、感染の機会を減らすことはできますよね。

インフルエンザでも溶連菌でも、子どもが重症化するケースはそう多くありません。また改めてですが、現時点では、新型コロナウイルスに感染した子どもが重症化したケースは報告されていません。

怖がりすぎず、まずはすぐにできる予防策をぜひ実践してほしいと思います。

――ありがとうございました!

※2020年2月18日時点の情報です。最新のものとは異なる場合があります

監修者:竹中美恵子(タケナカ・ミエコ)

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。「女医によるファミリークリニック」院長。

アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。

日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得、メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。