得意戦法の相掛かりで渡辺明棋王を破り、五番勝負成績は1勝1敗のタイに

将棋のタイトル戦である、第45期棋王戦五番勝負第2局(主催:共同通信社)が2月16日に栃木県宇都宮市「宇都宮グランドホテル」で行われました。結果は挑戦者の本田奎五段が97手で渡辺明棋王に勝利。成績を1勝1敗としました。

第1局は後手番で完敗だった本田五段ですが、先手番なら話は別。それは無敵の得意戦法、相掛かりがあるからです。プロ入り後に先手番で13局指してなんと11勝。勝率8割4分6厘と圧倒的な成績を残しています。棋王戦挑戦の原動力となったこの戦法を、タイトル戦の大舞台でも採用しました。

両者ともに小刻みに持ち時間を使いながらも、よどみなく駒組みが進行していきましたが、渡辺棋王が昼休み前に指した一手に本田五段の手が止まります。昼休みをはさんで78分の長考で指した手が、渡辺棋王の指し手をとがめる絶好の角打ちでした。

この角で敵陣ににらみを利かせて不自由な陣形を相手に強いてから、悠々と自玉を囲い、万全の状態で仕掛けるのが本田五段のセンスあふれる構想。戦いが始まった時点で早くも本田五段が優位に立ったようです。

本田五段は飛車角銀で渡辺玉の玉頭から襲い掛かります。ところがこのまま押し切るかと思われたところで、明解に決め切る順を逃してしまいました。渡辺棋王に飛車を成り込まれ、飛車取りに金を打たれて、形勢が急接近したかのように見えましたが、そこで本田五段は絶妙手を用意していました。

それは金と歩の利きに桂を打って王手をかける手。金で取れば詰み、歩で取れば王手竜取りということで、渡辺棋王は玉を逃がすしかありませんでした。続けて飛車を切ってから馬を押し売りしたのが、一連の好手順。王手竜取りの筋がどこまで行っても残るため、渡辺棋王をもってしても粘ることはできませんでした。

これで本田五段はタイトル戦初白星。五番勝負は1勝1敗となりました。局後のインタビューで本田五段は「ストレート負けにならず、ほっとした感じです」と謙虚に答えていますが、相掛かりで見事な構想勝ち。棋界の第一人者相手でも、得意戦法が十分に通用することが分かりました。

問題は後手番となる次局の第3局です。もしここで勝利できれば、デビューから最速でのタイトル獲得が俄然現実味を帯びてきます。注目の第3局は3月1日に行われます。

初参加棋戦でのタイトル獲得の記録に挑む、若武者本田五段
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