軽とは思えない走りの上質感
試乗したのは、自然吸気のガソリンエンジンと、ターボチャージャーを装備する過給ガソリンエンジンの2種類である。新しいプラットフォームをいかしたサスペンション性能の進化により、新型ハスラーは走行中の安定性に優れている。遠出に際し、安心して移動できるクルマとなっていた。
何より印象深かったのは、ガソリンターボエンジンであった。軽くアクセルペダルを踏み込んだだけで滑らかに発進し、その後の加速でも、それほど深くアクセルペダルを踏み込まなくても滑らかに速度を上げていく。ことに、発進・停止を繰り返す市街地での運転では、非常に快適だ。そして、加速のゆとりが軽自動車であることを忘れさせる。それは出力のゆとりだけでなく、静粛性や振動の少ない乗り心地にも当てはまる。
スズキは2012年のワゴンRから、リチウムイオンバッテリーを使った「エネチャージ」という回生機構を投入した。これにより、アイドリングストップからのエンジン再始動が実に滑らかになり、それだけでもクルマの上質さが高まった。エネチャージを発展させ、マイルドハイブリッドを全車で採用するようになったスズキの軽自動車は、他メーカーとは上質さの面で明らかな違いが出ている。差別化の成功例といえるだろう。
新型ハスラーも全車でマイルドハイブリッドを採用する。ターボエンジンでは過給による出力のゆとりも加わり、低回転域でも十分な力を得られるので、走行の全般にわたって振動と騒音が少なく、軽自動車とは思えない上質な乗り味に仕上がっている。
自然吸気ガソリンエンジン車においても、マイルドハイブリッドの効果は大きい。アイドリングストップからのエンジン再始動や、発進から加速するところでのモーター駆動による補助が効果的だ。ただ、ターボエンジンに比べると、エンジン回転をより高めて走ることになるので、そこで直列3気筒エンジンの振動や騒音が出てくる。軽自動車としては全く問題のない水準だが、軽であることを忘れさせる上質なターボエンジン車の後に乗ったので、その差を実感せざるを得なかった。
見た目があまり変わっていないので、乗り換える意義が見いだしにくいと考えている初代ハスラーのユーザーがいるとしたら、新型に試乗してみることをお勧めしたい。フルモデルチェンジ直前まで高い人気を誇った初代ハスラーではあるが、2代目となる新型は、見事な進化を遂げていた。