部屋探しなどを代行するリベロは1月22日、「引越し難民ゼロプロジェクト」開始を発表した。「ムリ:引越し難民、ムダ:空き荷台、ムラ:転居手続きミス」をゼロにする"3つのゼロ宣言"のもと、全国約50の引越し会社と共に2020年の引越し繁忙期(3~4月)に向けて対策を行う。

  • 左から、アップル 田中康貴氏、日本通運 土田久男氏、イナミコーポレーション 稲見正隆氏、リベロ 常務取締役 横川尚佳氏、リベロ 代表取締役 鹿島秀俊氏

引越し難民が発生する背景

「引越し難民」をテーマにしたトークセッションでは、リベロ 代表取締役 鹿島秀俊氏、リベロ 常務取締役 横川尚佳氏、アップル 田中康貴氏、イナミコーポレーション 稲見正隆氏、日本通運 土田久男氏が登壇し、昨今の「引越し難民事情」、引越し業界の現状と課題、今後の対策について意見を述べた。

田中氏は、引越し難民の問題とは、需要と供給のバランスが崩れている事象を指すと説明。また横川氏は、日本では4月が企業や学校の新年度となるため、3、4月に引越しが集中すること、働き方改革の推進や若年層の免許取得率の低下など、複数の要因が重なり引越し難民が発生していると補足した。

  • 複数の要因により引越し難民が発生すると話す横川氏

この問題に対して、稲見氏は「繁忙期は社員総出で対応し、営業も引越し現場に出るなどします」と話す。また、土田氏は「繁忙期は通常の倍以上の荷物を扱うので、窓口となるコールセンタースタッフを3倍に増員。そして、引越し作業前の荷物個数の事前確認メンバーも増やすなどしています」と説明する。

しかし、各社のリソースは限りがあるため、引越しの依頼を「断る」引越し難民が発生。会場で紹介された資料によると、約7割の引越し会社が「お断り率」20%以上だという。

  • 引越し繁忙期の現状 提供:リベロ

引越し料金の課題

運よく引越し会社を見つけることができても、今度は料金の問題がある。繁忙期という理由で、引越し費用が通常より高くなることは避けられないのだろうか?

これに関して、稲見氏は、「愛媛県内で引越しをする案件であれば、1日5、6件対応できます。しかし、遠方への引越しだと、長時間の移動に伴うスタッフの人件費、車両費など経費が増えます。また、引越し先で別の案件があれば、帰りの荷台が空いたトラックを有効活用できますが、そうしたことは滅多にありません」と話す。

ビジネスである以上、非効率といえる長距離の引越しや、日時指定などの制限があると費用の上昇は避けることができないようだ。日通の土田氏も、「繁忙期に備えて臨時スタッフを増やすが、どうしてもそろえるための費用が高騰します」と苦しい台所事情を説明した。

  • 2019年、ピーク時の提示料金状 提供:リベロ

続けて、引越しピーク時期には、「早めの見積もり依頼」「複数の引越し候補日」「引越し会社に作業時間を任せる『フリータイム便』の利用」「引越し作業前の最低限の段ボールへの箱詰め作業」などを協力してほしいという、引越会社からの要望が紹介された。

逆に繁忙期でも、金額を抑えて、断られずに引越しの依頼をすることは可能なのだろうか? そんな質問が鹿島氏より参加していた引越し会社へ投げかけられ、引越革命の担当者が「フリータイム便利用で作業時間をこちらに任せてもらったり、1週間単位で引越し日を任せてもらったりすれば配車を効率よく組むことで、通常はNGとなる案件でも対応できますし、金額も比較的安く調整することができます」と答えた。

鹿島氏「業界として、引越し難民はなくなさないといけないし、対応しないといけない。引越し会社単体でみると、対応できない案件をゼロにすることは限界があります。そこで、エリア限定でサービス展開する引越し会社が連携することで、限りなくゼロにすることはできると思います。遠方の引越しも、相互協力すれば往復作業が可能になるし、トラックの荷台の空きスペースをシェアすることもできるしょう」。


繁忙期に案件を逃すことは、引越し会社にとって死活問題。従来の会社単位での解決を目指すのでなく、業界全体で取り組むのは面白い試みだと思う。各社間での調整など、簡単ではないだろうが、利用者である我々としても、ぜひ実現してほしい。