タイトル経験者の若手棋士を連破。朝日杯依然負けなし

1月19日に名古屋市「朝日新聞名古屋本社・朝日ホール」で第13回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社)の本戦1・2回戦が行われました。この日は朝日杯を2連覇中の藤井聡太七段が登場。1回戦で菅井竜也七段を、2回戦で斎藤慎太郎七段を破り、ベスト4へ進出しました。

10時から行われた1回戦の相手は菅井七段。王位のタイトル獲得経験があり、順位戦B級1組では現在首位でA級目前。ここまで藤井七段が1勝2敗で負け越している強敵です。

後手番になった藤井七段は先手中飛車に対して得意の急戦策で応戦。飛車先を突破し、後手がポイントを上げます。しかし先手も桂香を入手して反撃、後手玉がみるみる薄くなっていきました。

玉が三段目に露出し、絶体絶命かと思われた藤井七段でしたが、そこからの受けが見事でした。自陣に金銀を打ち付けて攻めを受け止め、金銀を取らせる間に穴熊攻略を進めます。受けがなくなった菅井七段決死の猛攻にも冷静に対処し、最後は自玉の上に飛車を打つ受けの決め手を放って勝利。168手の大熱戦を制しました。

朝日杯本戦は同日に連戦するシステム。14時からの2回戦の対戦相手は、1回戦で三浦弘行九段を破った斎藤七段。斎藤七段は王座のタイトル経験者で、順位戦B級1組では現在2位。また、対戦成績は藤井七段が1勝2敗で負け越しているなど、実績・実力十分な難敵です。

藤井七段は先手番になり、戦型は両者の得意戦法である角換わり腰掛け銀に。受けの陣形を崩さないように徹底的な待機戦略を採る後手に対して、先手は駒の配置を細かく調整します。

仕掛けの糸口を見出した先手が動き、本格的な戦いが始まったのはなんと71手目でした。これは急戦調の将棋なら決着がついていてもおかしくない手数です。

先に仕掛けた藤井七段は、一気に攻め込むことはしませんでした。働きの弱い5筋の銀を2~3筋で活用するために、一時的に攻撃の手を緩めます。隙ありとみた斎藤七段は持駒の角を打って攻勢をとりますが、戦果を上げられぬうちに、先手の銀と交換になってしまいました。ついに藤井七段がリードを奪います。

藤井七段は敵陣に馬を作り、自陣の飛車とのコンビネーションで上下から敵陣に迫ります。受けているだけでは勝ちがないとみた斎藤七段は、攻め合いに活路を見出そうとしますが、藤井七段は見切っていました。

竜を玉のすぐ近くに作らせ、その上守りの金駒が1枚もなくなるまで後手の攻めを呼び込んでからの、攻防の馬切りが決め手で勝負あり。取れば自玉が詰み、取らなくても馬の利きが強力で敵玉が寄らないということで、手段のなくなった斎藤七段が投了を告げました。147手での決着。1回戦に勝るとも劣らない大激闘でした。

これで藤井七段は3年連続で準決勝に進出。また、朝日杯の連勝を負けなしの16に伸ばしました。もし今回も優勝できれば、羽生善治九段が第7~9回に達成した3連覇と並んで、朝日杯最多連覇記録となります。

藤井七段が今年も力を見せつけて3連覇を達成するのか、それとも止める棋士は現れるのか。大注目の準決勝・決勝は2月11日に千代田区「有楽町朝日ホール」で行われます。

今年もこの舞台に藤井七段が帰ってきた。写真は一昨年の朝日杯準決勝(右が藤井七段)