驚異の大局観と終盤力を発揮し、決勝トーナメントへ一歩前進
1月8日に第33期竜王戦1組ランキング戦(主催:読売新聞社)の羽生善治九段-橋本崇載八段戦が行われました。結果は羽生九段の勝利。2回戦へ進出となりました。
振り駒の結果先手となった橋本八段が飛車先の歩を伸ばし、戦型は最近大流行中の相掛かりに。両者とも飛車の位置を細かく調整しつつ、最善の陣形を模索する神経を使う序盤戦から先にポイントを上げたのは橋本八段でした。自陣に角を据えて飛車取りを掛け、後手が飛車を逃がす隙に桂得を果たします。
しかし、羽生九段は慌てません。自陣を整備したのち、桂損の代わりに盤上の駒をフル活用して先手陣に圧力を掛けます。橋本八段に悪手らしい悪手がないまま、気が付けば羽生九段の駒は両端の香以外はすべてさばけ、盤面中央を完全に制圧してしまいました。
橋本八段の決死の反撃によって羽生玉は危ない形になりましたが、駒を蓄えた羽生九段はあっという間に橋本玉を追い詰めてしまいます。なんとか自玉に対する包囲網をかいくぐろうとする橋本八段の攻防の飛車打ちに対し、羽生九段はそれを上回る攻防の桂打ちで切り返し、勝負あり。その桂を橋本玉を詰ますのに活用する美しい収束で、羽生九段が108手で勝利を収めました。
桂を損しながらもバランスを取って局面を優位に持っていく大局観と、終盤の凄まじい切れ味。改めて羽生将棋のすごさを実感する一局となりました。
これで羽生九段はランキング戦2回戦に進出です。1組ランキング戦では決勝トーナメントに進むために3回勝利する必要があり、あと2勝が必要となります。また、1組は3勝するまでに1度は負けても大丈夫というのが面白いシステム。初戦で敗れてしまった橋本八段にもまだチャンスがあるということです。ちなみにこれは1組だけで、2組以下は昇級者決定戦に回り、上の組への昇級を目指す戦いになります。
8期目の竜王獲得に向けて一歩前進した羽生九段。次戦では木村一基王位-佐藤康光九段戦の勝者と対局します。