東日本大震災以降も各地でたびたび起こる地震、地球温暖化の影響からか毎年のように発生する大雨や台風など、損害保険の対象となる被害が頻発しています。“災害が多い→保険金の支払いが増える→保険料が上がる”という流れは当然のこことはいえ、値上げが続くと家計への影響は小さくありません。
さらに自動車保険や傷害保険も値上げの予定があり、ますます負担は大きくなりそうです。まずは、いつから、どのくらい保険料が高くなるかを正しく知っておきましょう。
誰もが「近年、本当に自然災害が増えている」と思っているはず 自分や身近な人が被災していないと少し実感は薄いかもしれませんが、自然災害が増えていることは多くの人が認識しているはず。下図の風水災などによる支払保険金ランキングを見てみましょう。
ベスト10のうち7つは2000年以降。しかも、このランキングは2018年末までの災害が対象で、2019年のものは含まれていません。2019年9月の中間決算時に発表された大手3グループの保険金支払額見通しの合計は、台風15号が3788億円、19号が4900億円ですから、上位に入ってくることは確実。ということは、ベスト10のうち半分が2018年と2019年におこった災害ということになります。
大きな地震も2000年以降、頻発していることがわかるのが下図です。1位の東日本大震災は保険金の支払額でも突出しており、いかに大きな災害だったかがわかります。地震ランキングでも2000年以前のものは1995年の阪神淡路大震災だけ。地震保険は加入率の上昇によって支払額が増加しているという面もありますが、確かにこれを見ると保険料が上がるのも仕方がないことなのかもしれません。
保険料は何が、いつ、どのくらい値上がりする?
では具体的に、何の保険がどのくらい値上がりするのでしょう。
火災保険
火災保険は、名称は「火災」ですが、火災だけでなく落雷、破裂・爆発、風災、雪災・ひょう災、水災、盗難など、住宅に関する被災をカバーする住宅向けの総合保険です。ただし商品によって内容は異なりますし、水災を対象にしないと保険料が安くなるものが多いので、この機会にどんなときに保険金を受け取れるのかを確認しておくといいでしょう。
これまで火災保険は住宅購入時に35年分を一括で支払うことが多かったため、値上がりに対して意識が薄い傾向がありました。ところが2015年10月の値上げ時から、保険期間の最長期間が10年になったため、これからは実感する人が増えるはず。ここ最近では2015年10月、2019年10月と2回の値上がりがあり、全国平均では10%程度上昇しました。
2021年の値上げはまだ公表されていませんが、保険料を算出する際の目安になる損害保険料率算出機構の「参考純率」が2019年10月に平均4.9%引き上げられたため、これまでの例から2021年1月にも火災保険料を値上げするのではとみられています。
地震保険
東日本大震災の発生、南海トラフ巨大地震の被害予測などをふまえ、2015年に決定したのが2017年、2019年、2021年と3段階に分けて合計14.2%の保険料を値上げすることです。2021年の値上げは、すでに決定していたことの最後の値上げということになります。
今回の値上げは全国平均で5.1%。ただし地震保険は所在地(都道府県)と建物構造(鉄骨・コンクリート構造、木造)で保険料が異なるため、実際の増減率はさまざま。ちなみに引き上げ率が最大なのは福島県の木造で14.7%、逆に愛知県、三重県、和歌山県の鉄骨・コンクリート構造は18.1%の引き下げになります。さらに長期係数(長期契約の割引係数率)が変更されるため、長期契約をした際の割引率も低くなります。
自動車保険
自動車保険に消費税はかかりませんが、使われる部品の代金は消費増税の対象となるため保険会社は負担が増えます。また最近増えてきた自動運転支援システムなどは純正パーツや系列ディラーによる修理が必要、メーカーが作業の効率化を図るため部品のモジュール化を進めたことによって限られた部分の故障でも関連する部品をすべて取り換えなくてはいけない、といったことからも修理費がかさむようになってきています。
また、民法の改正で法定利率が5%から3%に引き下げられるため、損害賠償額が増え保険会社は支払う保険金が増加することになります。これらの費用を保険料に転嫁することでカバーしよう、というのが今回の値上げの理由です。
傷害保険
2019年10月、6年ぶりに平均で4%値上げした傷害保険。日常生活中の事故や交通事故などによって起こったケガが所定の要件に当てはまれば補償してくれる保険です。値上げの理由は、ケガを被るリスクは加齢とともに高まる傾向があるため、高齢者の事故が多いこと、高齢者は治療が長期化しやすいこと、加入者に占める高齢者の割合が高くなってきたことが挙げられます。高齢化は避けられない状況の中、今後も定期的に値上げが行われる可能性があります。
自然災害の増加、高齢化に伴う事故や傷害の増加で、損害保険料の値上げ傾向は避けられないことのよう。せめてもの防衛策として、加入は早めに検討して値上げのタイミング前に済ませること。内容は定期的に見直して不要な特約は外す、必要がなくなった契約は解約するといったことを心がけましょう。