ライターの小林久乃です。忘年会シーズン到来。老若男女問わず、ドッカンドッカン飲んでも怒られないドリームシーズンですね。でも、そんなに“忘れたい一年”だったのかしら……? ちなみに私は楽しいことが続いたので、棺桶に入る寸前まで忘れたくない1年だったと、軽く自慢しておきます。さて、今回はドラマ2作品で見つけてしまった、泥酔したイケメンの麗しさについて書いていきたいと思います。新年に向けて、新しい恋の成就作戦になるかもしれません。

泥酔にも限度とマナーをお忘れなく

  • ドラマ『G線上のあなたと私』に出演中の中川大志(左)と波瑠

    ドラマ『G線上のあなたと私』に出演中の中川大志(左)と波瑠

現在放送中のドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)でこんなシーンがあった。20歳になってやっと飲めるようになった慣れない酒に、酔っぱらう加瀬理人(中川大志)。いつもはそっけない対応をしている小暮也映子(波瑠)に、壁ドンならぬシャッタードンをしながら

「(姿が見えなくて)あせった……。ナンパされていなくなったと思った。……今日、かわいいから」

と、赤ら顔のトロンとした目で迫ったのである。視聴しながらゴクリと唾を飲み込む私。このシーンは繰り返して何度も見た。そして既視感を覚える胸ドッキドキシーンがまた放送されたのだ。

今度の舞台は『同期のサクラ』(日本テレビ系)。木島葵(新田真剣佑)が酔った勢いで、北野サクラ(高畑充希)に迫ってキスをしようとする。

「このまえ思ったけど、おまえ、結構かわいい顔してんだな。何ならマジで俺とつき合わない?」

サクラに拒絶をされて、キスには至らなかった。でも両シーン(サクラ風に)ひじょーに良かった。酔っている二人が超絶イケメンということは差し置いても、なぜハートを鷲掴みにされたのかを考える。

そう、思えば最近の若手男子は本当に飲まない。いや、飲めないのか、まだ酒の極みを知らないのかはそれぞれなのか。酒を飲むことに快楽やストレス解消を見出している男子は、ここ5~6年くらいで激減してしまった。時代といえばそれで片付けられてしまうのかもしれないけれど、寂しい気もする。平成から働いている私世代からすると"酒が飲める"というのは、社会人のマナーのようなもので、飲めることが当たり前だったのに。それが今なら、コンプライアンス的にまずいとか、そういうことですよね?

女が男を酔わせて口説く時代がやってきた

ドラマ『同期のサクラ』に出演中の新田真剣佑

男子が酔う。そんな光景が珍しいからこそ、挙げた2シーンは引っかかったのかもしれない。思い返すと、若手男子が酔っぱらうシーン自体がドラマから減った。酒、タバコなどの嗜好品は、悪の素だと思われる傾向が強い。

「普段は飲まないんですよね。会社の人と飲みに行ったりすることもないです」

行きつけの立ち飲み屋で、20代の男子たちから聞く話。彼はコーラを嗜んでいた。では最近の男子はどうやって愛を告白するのだろうか。私たち世代は、酔った勢いで恋愛のすべてをまかなっていた。恋がうまくいったことも、いかなかったこともぜんぶ酒のせいだ、と言い切っていた。

「……告白とかしないんですよね」

「なんとなく、雰囲気で。それかLINEで言うとか。ダメでもそのほうが傷は浅くて済むじゃないですか」

「合コンがないし、女の子と"飲みに行く"っていうか"食事にいく"という発想かも。スタバでデートとかしますよ」

男子たちの話を聞きながら、急速に心が寒くなっていた。もし自分が令和の青春を生きていたら、このノリにはついていけなかったかもしれない。

私も最初は酒が苦手だった。それが失恋するごとに酒の量が増えて、30代になった頃、焼酎や日本酒の銘柄を覚えた。最終的に接待の場で飲めない女を気取るのも、失礼に当たると訓練を開始。飲めない酒種はこの世に存在しない。アルコールが入っていればなんでも好きだ。結果、仕事も恋も友情も酒で育んでいることが多いので『私、正解』と自負している。

ふと立ち飲み屋で男子を眺めながら、その向こうを見ると、男子と同年代の女子が豪快にハイボールを飲んでいた。そう、男性社会人は飲酒から遠ざかる傾向が高いけれど、女性社会人は飲む。

「私、お酒は苦手でぇ」

「あ、ビール飲めない人なんですぅ」

など、ふざけたことを抜かす女子もかつてはいた。グラスの口を手でふさぐ仕草が、妙に鼻についたことを覚えている。それが今では、飲めない女性の姿を見かけない。こんなところに、現代の社会の縮図が見えているのかと、ちょっと嬉しくなる。私も一生懸命働いている身分なものでね。

今回の結論。ひと昔前は酔った女性をお持ち帰りする男性の姿が酒場に横行した。でもひょっとしたら、これからは酔って千鳥足の男性を女性が、なんとかして自宅に連れ込むことが普通になるかもしれない。そう、もし中川大志くんと新田真剣佑くんが酔っていたら、どうにかなるチャンスも庶民の私にも訪れるかもしれない。そんな妄想を抱きながら、本日ここまで。

小林久乃

ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。地元タウン誌から始まり、女性誌、情報誌の編集部員を経てフリーランスへ。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事も持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には10万部を超えるベストセラーも。最新刊は『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。