今年の日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)はトヨタ自動車の「RAV4」に決定した。3種類の4WDを用意した走りの快適性や良好な使い勝手などが高評価につながった。授賞式では選考委員や惜しくも2位となった「MAZDA3」の主査などに話を聞くことができたので、お伝えしたい。

  • トヨタ「RAV4」

    「2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー」で最優秀車の栄冠に輝いたトヨタ「RAV4」。開発責任者を務めた同社の佐伯禎一チーフエンジニアは「RAV4の良しあしだけでなく、トヨタに対する、もっと頑張れよという思いや期待を改めて感じた」と受賞の喜びを語っていた

COTYでは選考委員(今回は60人)が各25点を持ち、「10ベストカー」に各自の評価基準で配点していく。その際、必ず1台に10点(最高点)を付け、残りの点数をほかのクルマに割り振るのがルールだ。今回、マイナビニュースでは、選考委員の御堀直嗣さん、森口将之さん、安東弘樹さんに話を聞くことができたので、以下でご紹介したい。

  • 日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考結果

    今回の選考結果。「RAV4」が2位のマツダ「MAZDA3」に100点以上の差をつけて最優秀車に選ばれた。3位のBMW「3シリーズ セダン」が今年の「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」だ

選考委員・御堀直嗣さんの談話

ホンダの軽自動車「N-WGN」に10点をつけた御堀さんは、その理由をこう語る。

「ちゃんと、真面目にクルマを作っているというところを評価しました。クルマとしての良さだけでなく、消費者に安全に乗ってほしいという思いが伝わってきたので。軽自動車としては、『デイズ』(日産自動車)と『eKワゴン』/『eKクロス』(三菱自動車)もシャシーの性能は高かったのですが、N-WGNは正しい運転姿勢をとれる点を重視していた。そこが基本だと思うし、そういったところに気づいた軽自動車が、やっと出てきたという感じです」

N-WGNは、軽自動車として初めて「テレスコピック機構」(前後方向にハンドルの位置を調整できる)を搭載したり、アクセルとブレーキのペダル位置を適正化するなど、正しい運転姿勢にこだわったクルマだ。そのあたりが評価のポイントとなった。

  • ジープ「ラングラー」

    「エモーショナル部門賞」を受賞したジープ「ラングラー」

選考委員・森口将之さんの談話

森口さんはMAZDA3に10点をつけた。その理由も含め、総評を聞いた。

「MAZDA3が10点で、その次が『カローラ』(トヨタ)だったんですけど、あのクラスに、グローバルに出しても恥ずかしくないようなクルマが出てきたということで、その2台がすごく目につきました。この2台は車幅など、日本の道路事情、車庫事情を考えたクルマであることも評価したい。カローラは、そのために日本専用の設計にしているくらいですし。なおかつ、走りも世界に出して恥ずかしくない。カローラについては、伝統のクルマをあそこまで変えてきたという勇気も評価したいです」

「デザインに関していうと、特にMAZDA3は、あの形を量産車として実現したところがいいですね。走っていても、何か別物といった感じがする。あのクルマが200万円台前半から買えるということは、クルマを愛車として楽しむという意味でも大事なことですし、買った人にとっても、あのクルマはプライドになりますよね」

「それと、カローラ、マツダ3、3シリーズは、割とベーシックなクルマ(価格が安いほうのグレード)が良くできていました。マツダ3の中では1.5リッターですが、安くて、ちゃんと走って、走りは軽快で、乗り心地はまろやか。3シリーズの320i、カローラの1.8リッターも意外によかった。ベーシックなものをちゃんと作っているところは、評価できますね」

「RAV4は、私も点数を入れたんですけど、このクラスの中ではよくできています。最近のトヨタってハズレがないんですけど、その中の1台という感じですね。デザインは、ゴツゴツ系にしたのが逆に新鮮。オフロードもそこそこ走れるし、今のSUVの中に、一石を投じたという気がします」

森口さんからは、意外な提言も飛び出した。

「今年でいえば、東京モーターショーにも何か賞をあげたかったね。来場者数も多かったし、カローラ同様、革新的というか、かなり攻めた内容だったので」

  • 日産「デイズ」と三菱自動車「eKクロス」

    「スモールモビリティ部門賞」を受賞した日産「デイズ」(左)と三菱自動車「eKクロス」

選考委員・安東弘樹さんの談話

安東弘樹さんもMAZDA3に10点。その理由からは、クルママニアのブレない評価軸が見て取れる。

「MAZDA3に10点をつけた理由ですか? 要は、MT(マニュアルトランスミッション)ですね。富士で乗ったんですけど(最終選考会@富士スピードウェイのこと)、クラッチの重さも含めて、よかったです。MTだから点数を入れると決めているわけじゃないんですけど、結局、乗っちゃうと、顔がにやけるのはMTなんですよね。富士で乗った時も、『ほかのクルマの時と顔が違いますよ!』といわれました。MADZA3のMTは、クラッチの重さがちょうどいい。慣れていない人には若干、重く感じるかもしれないんですけど、踏んでいる感じがするというか、クラッチが圧着していることを感じられます。やっぱりMTが好きなんだな、自分は。そう思いました」

「RAV4は、道具として割り切って使う分には、いいと思います。今、そういうクルマって、あまりないじゃないですか。『ラングラー』までいっちゃうと、ヘビーデューティー過ぎるし。それと、トヨタがFFモデルだけでお茶を濁さず、パワーユニットに応じて4輪駆動のシステムをちゃんと作ってきたところ。本気で作ったんだなというところに、好感が持てました。みんなでワイワイ乗る分には、楽しいクルマだと思います。一方のMAZDA3は、ライフスタイル全体というか、MAZDA3がある生活を楽しむという感じかな」

「あと、軽自動車の結果が意外でしたね。N-WGNがいいという声をよく聞いていたんで。軽自動車の中から購入するなら、私は間違いなくこれを選びます。何といっても、タコメーターがちゃんとついていますし」

「日本車については正直、数年前まで、あきらめていたというか、私はこの先も買わないだろうなと思っていたんですけど、最近は各社の方向性が決まってきて、各社が自分の色を見せてくれ始めたのが、すごくうれしいですね。いいなと思うクルマが最近、日本のメーカーから出てきてます。来年は電動化が避けて通れないでしょうね。どのくらい本格的なものを、各メーカーが出してくるのか。楽しみでもありますが、変なクルマが出なければいいなというか、『とりあえず電気にしました』みたいなものが、なければいいなと思っています」

  • BMW「3シリーズ」

    「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したBMW「3シリーズ セダン」

「MAZDA3」主査・別府耕太さん

森口さんと安東さんは10点をつけたが、惜しくも2位という結果となったMAZDA3。開発責任者を務めたマツダの別府耕太さんに受け止めを聞いた。

「100年に1度といわれる自動車の変革期の中で、マツダ3では、いろいろなことに挑戦しました。クルマのベーシックな部分をできるだけ研ぎ澄まして、次の100年を作っていこうという意気込みで作ったのがMAZDA3というクルマです。今回の結果については、ある部分は評価をいただけたものの、ある部分は『まだまだ足りない』という、叱咤激励なのかなと。まだまだの部分に、さらに磨きをかけろというエールだと思っています」

日本カー・オブ・ザ・イヤーの公式サイトでは、選考結果の詳細や選考委員の選考理由などが確認できる。今回の結果に納得の人も納得がいかない人も、一度チェックしてみてはいかがだろうか。