長澤まさみをはじめ、浜辺美波、上白石萌音や上白石萌歌といった今をときめく女優を数多く輩出する「東宝シンデレラ」オーディション。その第8回でグランプリと集英社賞(セフンティーン賞)をダブル受賞した逸材・福本莉子は、デビューから3年目を迎えてさらなる進化を遂げようとしている。

そのヒントは、8月3日から東京・日比谷の日生劇場で上演される音楽劇『あらしのよるに』にも潜む。人気絵本を原作とする同作は、オオカミのガブ(渡部豪太)とヤギのメイ(福本莉子)が嵐の夜に偶然出会ったことで、食物連鎖を超越した関係性を築いていく。

友人の勧めで「東宝シンデレラ」オーディションを受けたという福本。「友情」をテーマにした作品で今、何を思うのか。そして、2018年にインスタに投稿した「涙」の真相にも迫った。

  • 福本莉子

    女優の福本莉子 撮影:島本絵梨佳

――この取材の後、稽古を控えているそうですね。

今日は初めての衣装稽古です。やっぱり衣装を着ての稽古は、いよいよ本番というか、グッと気持ちが引き締まりますね。来週(8月3日)には初日を迎えますが、まだ不安もあるというか。メイとして腑に落ちてないところもあるので、小説や原作を読み直して、まだ役作りしているところです。

――どのようなところが腑に落ちてないんですか?

捕食される側のヤギが、捕食する側のオオカミと仲良くなる心理は結構難しくて。オオカミのガブには「食べたい」という葛藤があるんですが、ヤギのメイに惹かれている部分があって。ガブは、オオカミの競争社会の中では下っ端なので、メイと過ごす時間は特別なんです。でも、メイにとってみれば、いつ食べられるか分からない。その心理状態をつかむのは、すごく難しいです。

オオカミは恐ろしい存在だったはずなのに、ガブは雷が苦手で友達思いといった想像と違う一面があって。ネガティブになりやすいガブを、メイが優しく受け止めています。真逆のタイプで、互いに支え合っている関係性です。

  • 福本莉子

――人間界にも通ずるような物語ですね。

そうですね。ガブとメイが待ち合わせして、一緒にお昼ごはん食べてそれぞれの場所に帰る。最初はその短い時間を大切にしていて、一緒に逃げた後はそれだけ2人の時間が長くなるわけですから喜んでいたんですけど、やっぱりヤギとオオカミだから合わないところが出てきて。過ごす時間が長くなることによって互いの知らない部分が見えて来るのも、すごく人間っぽいなと感じました。

  • 福本莉子

――小学生の頃にも「あらしのよるに」に触れる機会があったそうですね。

アニメを見て、このお話を知りました。当時は「感動する物語」という印象があって、出演が決まってから小説や絵本を読みました。異なる種が仲良くなっていく過程を、あらためて知ることができました。

  • 福本莉子

――「友情」もテーマの1つですが、福本さんといえばグランプリを受賞した第8回「東宝シンデレラ」オーディションは、友人の勧めで応募したそうですね。

幼稚園から一緒だった子で、小学校では全然関わりがなくて、ほとんどしゃべらなかったんですよ。中学ではそれぞれ別の学校だったんですが、夏祭りで再会して話していたら、そこでオーディションを勧められて。それまでオーディションの存在は知りませんでした。その他の友だちも応援してくれて、でも、それ以上の細かいことはあまり聞かれなかったので、学校もすごく居心地が良かったです。

  • 福本莉子

――芸能界に興味はあったんですか?

何となくあったくらいです。「人生一度きり」と思って受けてみることにしました。それから3年経ってオーディションを受ける前の自分と比べると、考えられないような生活を送っていると思います。去年も、まさか自分がミュージカルで主演をさせていただくなんて……。しかも、新国立劇場! そして、10日間も! 映画の撮影もあって……本当に信じられないことの連続です(笑)。

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  • 福本莉子

――昨年大みそか、インスタにも「沢山泣いて笑ってとても充実した1年でした」と投稿していましたね。

昨年は舞台、映画、声優……とにかく初めてのことをたくさんやらせていただいて。本当に目まぐるしい一年でした。でも、初めてのことに挑戦する前日は本当に落ち込むんですよ(笑)。すっごく不安になって、「泣いて」というのはそういう時のことです。自分や役とひたすら向き合って……自分が対応できない悔しさも感じながら、毎回それを繰り返しています。いつも悩むことは変わらないですが、少しずつ精神的にタフになっていっているような気はします。体力的にも強くなったのか、あまり体調も崩さなくなりました。これからも経験を積んで、成長できたらいいなと思います。

――オーディションを勧めてくれた友人には、今でも感謝していますか?

はい! 受賞してデビューが決まった後も時々会っていたんですが、最近は全く会っていなくて、連絡も取っていません。不思議な関係ですね(笑)。

  • 福本莉子

――その他にも周囲の支えを実感することはありますか?

今年4月、大阪から上京して大学生になりました。自然と家族と連絡することが増えて、あらためて「母は偉大だ」と実感しています(笑)。でも、やっぱり大阪は恋しいですね。お休みが3日間ぐらいあると、大阪に帰って友達に会っています。

――本日はありがとうございました。いよいよ本番ですね。

ありがとうございます。やっぱり「ファミリーミュージカル」なので、小さいお子さんから親世代の方まで楽しんでいただけたらと思います。お芝居だけじゃなく、生演奏や身体表現にもすごくこだわっています。そこも見どころなので、幅広い世代の方々にいろいろなことを感じ取っていただけたらと思います。

■プロフィール
福本莉子
2000年11月25日生まれ。大阪府出身。身長156センチ。2016年、第8回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリ・集英社賞(セフンティーン賞)をW受賞し、芸能界入り。2018年5月公開の映画『のみとり侍』でスクリーンデビュー、同年6月上演のミュージカル『魔女の宅急便』で初舞台・初主演を務めた。以降も、ドラマ『僕の初恋をキミに捧ぐ』(テレ朝系・19年1月クール)に出演したほか、来年には『思い、思われ、ふり、ふられ』(20年8月)、主演作『しあわせのマスカット』(20年初夏)の2本が公開を控えている。