渡された資料を読み上げるときに、云々を「でんでん」と読んだ途端、クスクスっと笑い声が……。どうやら読み方を間違えちゃったみたいだけど、何て読めば良かったの? というわけで、今回は「云々」の正しい読み方や使い方について解説します。
云々の表記と読み方
云々は本来、「云云」と表記されるものです。ただし、日本語には、同じ漢字が続く場合には二つ目の漢字を「々」と表記しても良いというルールが存在するため、このような表記になっているのです。ほかにも、「諸々」「常々」「近々」といった表現がありますね。
読み方については、「云」は「うん」と読みます。当然、云々は「うんうん」と読むと思いきや、これまた日本語には、二つの語が連接するときに、前の音節の末尾の子音が、あとの音節の頭母音(または半母音+母音)と合して別の音節を形成する「連声(れんじょう)」というルールが存在するため、「うんぬん」と読むのが正解です。
皆さんも、「三位(さんみ)」、「因縁(いんねん)」、「観音(かんのん)」、「天皇(てんのう)」といった言葉を口にするとき、自然と連声のルールに従って発音していると思います。
ちなみに、過去の国会答弁で、安倍首相が「でんでん」と読んでしまい大恥をかいてしまったことがありました。皆さんも注意しましょう。
云々の意味
では、云々はどういう意味になるのでしょうか。云は送り仮名に「う」を付けると「云う(いう)」と読むことができ、「口ごもって声を出す」「ものをいう」という意味になります。
云々は云が繰り返されているわけですから、「ものをいう。そしてまた、ものをいう」という状況を指しています。そこから転じて、云々は主に、「とやかくいうこと」「あれこれ議論したり批評すること」という意味で用いられたり、引用文や語句のあとをぼかしたり省略したりする際に「以下略」の意で用いられます。
云々の語源とは?
云は、もともと「雲が渦巻きながら上昇していく姿」を表した象形文字で、「雲」の古字です。雲は雨を降らすものであることから、後に云に「雨」が付されて雲という文字が形成されました。
現在では、雲は空を覆う雲を意味する語として、云は主に「言う」という意味で使い分けされています。
云々の使い方と例文
「あれこれ議論したり批評したりすること」の意味で
云々は、ああでもないこうでもないと議論したり、物事に対してとやかく言ったりする場面で使用されることが多い言葉です。
- 負けたことに変わりはないから、誤審について今さら云々する気はない。
- 結果が出てもいないのに、云々しても仕方がない。
- 一人の人生がかかっている。法定は軽々しく云々する場ではありません。
- 本人が一番分かっているはずだ。我々が云々するのはよそう。
引用文や語句のあとをぼかしたり、省略したりする場合
云々には、引用文や語句のあとに続くものをぼかしたり、省略したりするといった便利な使い方ができます。例えば、種類が多いものを列挙する際に、2~3種述べたあとで云々とすれば、それ以降の種類を述べる必要はありません。
また、話すと長くなるような文章について、途中まで話したところで云々を用いることで、それ以降を省略することが可能です。
- 報酬云々の話ではなく、誰と仕事をしたいかが大事なんです。
- 部長が先方と揉めたとか云々で、交渉は決裂したそうです。
- 黄色い花をテーマにするのであれば、ひまわり、バラ、ガーベラ云々ありますが。
- 我が社の企業理念に「自社の優れた技術でもって社会に貢献し、世界中の人々に云々」とある通り……。
人から伝えられたことを述べる場合に
云うと「言う」は同義ですが、人から伝えられたことを述べる場合には、云うを使用します。そのことから、云々は伝聞の場面で使用されます。
- ○○から連絡があり、身内に不幸があったと云々。今日はお休みするそうです。
- 担当の話によると、ちょうど在庫を切らしてしまったと云々。
言うに言われない事柄・事情を伏せたい場合に
云々には、言いたくない事情や、口に出来ないような内容を、云々に置き換える使い方もあります。
- 実は家庭の事情云々で、妻が実家に帰っておりまして。
- 急な話ですが、○○君は云々の事情により退職しました。
云々を使用する際の注意点
云々を、お客様や目上の人に対して使用するのは好ましくありません。特に、内容をぼかしたり省略したりするような使い方は、相手に対して失礼になりますので注意が必要です。
また、ビジネスでは、内容を正しく明確に伝えることが基本です。安易な省略などで誤解が生じることのないよう、大事な会議や打ち合わせなど、重要な場面での使用は避けた方が良いでしょう。
云々の類語
内容を省略する際には、云々を用いる代わりに「かくかくしかじか」「これこれしかじか」「あれこれ」「てんやわんや」といった語句に置き換えることができます。
また、似たようなものを列挙するような場合には、単純に「~など」「そのほか」と言い換えても良いでしょう。
「尽く(ことごとく)」「予め(あらかじめ)」「承る(うけたまわる)」など、日本語には、普段何げなく使っている言葉なのに、いざ文字になると読み方が分からない。そんな言葉がたくさんあります。
誤った読み方で恥をかくことのないよう、気を付けたいものですね。