働き方の多様化が問われて久しいですが、すべての働き方が望まれるわけではありません。イヤな顔をされる働き方もあります。今回はそのひとつ「ぶら下がり社員」について解説していきます。
ぶら下がり社員の特徴
ぶら下がり社員とは、「仕事には受け身でいる」と割り切った社員のことです。別に怠けている社員ではありません。同僚の成果を横取りするわけでも、重大なミスを連発して足を引っ張るわけでもありません。
指示された仕事には真面目に取り組みますし、上司の意見には素直に従います。必要があるなら残業もします。ただし、「指示されたこと以上のこと」は決してしません。
なによりも大切なことは現状維持で、成長や貢献を鼻で笑い、出世にも転職にも興味を持たない。これがぶら下がり社員の特徴です。『「新・ぶら下がり社員」症候群』(東洋経済新報社)の著者、吉田実氏はその心理をこう表現しています。
「辞めません。でも、頑張りません。」
フリーライダーとの違い
ぶら下がり社員とよく似た言葉で「フリーライダー(ただ乗り社員)」がありますが、その違いは仕事を怠けているか、いないかです。
フリーライダーは、仕事を怠けながら他の社員の挙げた成果に「ただ乗り」して、パフォーマンス以上の給与を会社からもらっている人を指します。
ぶら下がり社員がいることの弊害
「与えられた仕事だけきっちりこなす」という働き方に対して、組織は苦い顔をします。若手ならばまだしも、本来、リーダーとなるような中堅層の人間にまで、管理するコストがかかってしまうからです。
会社の方針に基づいて部署の目標を設定し、チーム内に仕事を割り振るのが管理職の役割ですが、ぶら下がり社員は仕事が割り振られるのをじっと待っているだけで、会議中に提案はおろか発言すらしません。
こうした消極的な働き方は、周りに伝染するという危険性をはらみます。ぶら下がり社員の先輩ばかりでは、新入社員も「自分もそれなりの働き方で済ますか……」とモチベーションを失っていくでしょう。若手を成長どころか、腐敗させるような社員を望む会社はありません。
ぶら下がり社員が生まれる背景
ぶら下がり社員が生まれる背景としては「諦め」があります。
経営層がしょっちゅう意見のくい違いを起こしていたり、パワハラがひどかったり、売り上げだけなど「分かりやすいところだけ評価される」成果主義が横行しているような組織にいて、仕事への情熱を持ち続けることができるでしょうか。
下手に悩んでうつ病になるより、「この会社で自分は評価されない」と諦めて、一定の給与を稼ぐことに専念する。これはある意味で健全な選択といえます。
また、組織に対する諦めだけでなく、自分に対する見切りも、ぶら下がり社員を生む原因となります。「自分はこの程度なんだから、活躍なんてできるわけがない」という観念にとらわれていては、チャレンジはあり得ません。
ぶら下がり社員になるリスク
ぶら下がり社員は、ほとんど成長しません。すると、5年後10年後はどうなっているでしょうか?
本人は変わらなくとも、周りはどんどん変化していきます。会社がいつまでも安定しているとは限りません。業績が悪化すれば、歳だけ取って人件費がそこそこ膨らんでいてモチベーションの無い社員は、有力なリストラ対象となります。
あるいは、会社が買収されてまったく違う文化で働くことになるかもしれません。「ぶら下がり続ける」ことは、変化の大きいこの時代においてラクでは無いのです。
ぶら下がり社員にならないための対処法
ぶら下がり社員にならないためには、まず、「世の中には充実して働く人がいる」という事実を正しく理解することです。
世界にはつまらない人がたくさんいますが、面白い人もたくさんいます。家族のため、お金のため、自己研鑽のため、社会のため、理由は違えど、生き生きと働いている人は数多く存在するのです。
それならば、その人がどんな視点と環境を持っているのかを知り、実践していくことです。とりあえず、気になる異業種交流会やセミナーに参加することから始めてみるのが良いでしょう。