LINEは6月27日、事業戦略を説明する「LINE CONFERENCE 2019」を開催し、その中でLINE Pay事業についても紹介した。順調にユーザー数は伸びているが、LINE Payの長福久弘COOは今後、ビザ・ワールドワイド・ジャパンらと提携したクレジットカードの発行を含めてさらなる機能拡充を進めていく意向を示した。

  • ビザとの協業など、戦略的事業として注力するLINE Pay

    ビザとの協業など、戦略的事業として注力するLINE Pay

LINE Payは現在、日本、台湾、タイでサービスを展開。利用者数は4,800万人、流通総額も1兆円を突破した。台湾ではユーザーが1年で290万から630万、タイも同じく310万から600万とほぼ倍増しているという。台湾とタイでは公共交通機関での乗車にもLINE Payが利用できるようになり、「通勤時間帯の混雑解消につながったという声も聞く」と長福氏は胸を張る。

  • 日本以外に、台湾、タイでサービスを展開するLINE Pay。利用者が倍増するなど順調だという。台湾、タイでは交通機関への乗車にも利用されている

    日本以外に、台湾、タイでサービスを展開するLINE Pay。利用者が倍増するなど順調だという。台湾、タイでは交通機関への乗車にも利用されている

日本では、20%還元などの「Payトク」キャンペーンを随時実施してきた結果、キャンペーン開始前後ではコード払いの利用数が急拡大。300億円投じた送金キャンペーン「300億円祭」も実施したが、こうしたキャンペーンによって加盟店側にも利用向上による効果が現れているという。

  • LINE Payの長福久弘COO

    LINE Payの長福久弘COO

例えばローソンは、日々の決済件数が245%、決済金額では204%の向上。ライトオンは新規顧客の来店数が通常の50%から70%に増加。LINEデリマではクレジットカード決済をLINE Pay決済が抜いて、利用率が順調に拡大していることを示した。

日本での登録ユーザー数は、4月には3,200万だったが、6月の時点で,3600万まで拡大。決済可能個所も171万カ所に達した。月間の決済回数は1,100万件を突破し、LINE Payの認知度も82.3%まで上昇しているという。

加盟店拡大では、同じコード決済のメルペイと協業して「Mobile Payment Alliance(MoPA)」を結成。加盟店をお互いに開放することで、それぞれの加盟店で利用できるようにしている。今回、そこにNTTドコモが提供するd払いも参画することになる。各社は、MPM方式(店舗にQRコードを掲示して利用客がスマートフォンで読み取る方式)で相互利用が可能になるため、3社の決済を導入した店舗であれば、1つのQRコードを掲示するだけで3社の決済に対応できる。

  • 加盟店拡大の施策としてメルペイ、NTTドコモと協業。中央はNTTドコモのプラットフォームビジネス推進部ウォレットビジネス推進室長に就任する田原務氏。右はメルペイの青柳直樹社長

    加盟店拡大の施策としてメルペイ、NTTドコモと協業。中央はNTTドコモのプラットフォームビジネス推進部ウォレットビジネス推進室長に就任する田原務氏。右はメルペイの青柳直樹社長

こうした加盟店の拡大戦略に加え、公共料金や保険、外貨などでLINE Payが利用可能になり、「出口」を順調に強化。さらに今後は「入口」も拡充するという。これはチャージ方法の強化で、今までは現金やクレジットカードでのチャージだったが、長福氏は今後、「法規制が緩和されれば給与振り込みもLINE Payで可能にする」と話し、これによって「お金にまつわるすべての行動をLINE Payで解決できる」と強調する。

  • 出口となる利用範囲は広がってきたが、現時点で入口となるチャージは銀行口座連携、現金、ポイントに限られていた。これをクレジットカードや給与振り込みへ拡大していく

    出口となる利用範囲は広がってきたが、現時点で入口となるチャージは銀行口座連携、現金、ポイントに限られていた。これをクレジットカードや給与振り込みへ拡大していく

こうした流れをさらに加速しようというのがビザとの協業だ。グローバルでの協業となり、「アジアにおけるモバイル決済普及のための包括的パートナーシップ」(同)という位置づけだという。この協業では、「革新的決済サービスの提供」「加盟店サービスでの協力」「フィンテックサービス」といった点で協力することになる。

  • ビザはグローバルの協業において、EUのGoogle Pay、米国のApple Payに並ぶアジアのパートナーとしてLINE Payを選んだ

    ビザはグローバルの協業において、EUのGoogle Pay、米国のApple Payに並ぶアジアのパートナーとしてLINE Payを選んだ

まずはLINE Payアプリ内でクレジットカードを発行するVISAブランドのバーチャルカードを発行。アプリから発行できるほか、特別なポイントプログラムなどを提供するという。

  • LINEアプリ内で発行できるバーチャルカード

    LINEアプリ内で発行できるバーチャルカード

これに加え、物理カードも発行する。イシュアとして発行業務を担当するのはオリエントコーポレーション(オリコ)で、初年度年会費無料、初年度還元率3%と言った特徴を備える。8月にも予約を開始し、LINE Payへのチャージが大きく強化される、と長福氏はアピールする。

  • 新カードの特徴

    新カードの特徴

現在、台湾など海外からの観光客が、国内のLINE Pay加盟店でコード決済を利用できるインバウンドの取り組みを強化している。加盟店数が多いことからまずはインバウンド対応を進め、日本のLINE Payユーザーが海外でLINE Payを使うアウトバウンドは今後の検討としている。

今回のビザとの協業でクレジットカードが発行されれば、海外ではクレジットカードを使えばよくなるため、アウトバウンド対策にもなるだろう。

こうしたパートナーシップ戦略は今後も重視していく考えで、他にも中国ではWeChat Pay、韓国のNAVER Pay・PAYCO、日本ではJCBといったパートナーがあり、LINE Pay拡大につなげていく。ビザとの協業後も、JCBとはLINE PayカードやQUICPay+での協業を変わらず継続するという。

ビザとの協業は、もう一つの効果があり、それが2020年の東京五輪だ。ビザは五輪のオフィシャル決済テクノロジーパートナーとなっており、会場では他の決済サービスは利用できない。ここでLINE Payはマーケティング領域でビザに協力することで、五輪を盛り上げ、キャッシュレス決済の発展に寄与したい考えだ。

  • 東京五輪でのマーケティング協力では、LINE Pay Visaカード会員限定で選手のスタンプなどを提供する

    東京五輪でのマーケティング協力では、LINE Pay Visaカード会員限定で選手のスタンプなどを提供する

これにともない、ビザは日の丸をイメージしたという赤い特別なクレジットカードを発行する。これはLINE Payを通じて発行する限定カードとなっているという。

  • 日の丸をイメージした赤い特別なカードも発行

    日の丸をイメージした赤い特別なカードも発行

LINE Payと同様に重要視されているのが、現在設立準備中の「LINEスマホ銀行」だ。日本、台湾、タイ、インドネシアの4カ国で同時に設立準備を進めており、日本でも設立準備会社が設立された。

LINE PayとLINEスマホ銀行の両輪で、「国をまたいだ便利な金融サービスを提供できれば。次世代のアジアナンバーワンの金融サービスを目指す」とLINEの代表取締役社長CEOである出澤剛氏はアピールしている。