上司に「これ使っている人、すっかり見かけなくなりましたね」と言ったら、「もうシュリンクしたんだよ」と言われた。「シュリンク」ってどういう意味? というわけで今回は、ビジネスシーンにおけるシュリンクの意味と使い方について解説します。
シュリンクの意味
シュリンクは、「縮小」「収縮」「しりごみする」「ひるむ」といった意味を持つ英単語【shrink】が語源となっているカタカナ用語です。おおむね、「小さくなること」という意味合いで覚えておくと良いでしょう。
ビジネスシーンでのシュリンクの使い方と例文
一般的なビジネスシーンでは、「市場の縮小」「業界の低迷」といった意味で用いられます。商品やサービスに対するニーズが減退することを「シュリンクする」といい、縮小していく市場のことを「シュリンク市場」、低迷状態にある業界を「シュリンクマーケット」と呼びます。
(例文)
- ◯◯業界のシュリンクが、急速に進んでいる。
- シュリンク市場を復活させるよりも、新たな商品を開発しよう。
IT業界におけるシュリンクの使い方と例文
IT業界におけるシュリンクの意味は、主に「圧縮」です。機能や品質はそのままにデータを圧縮し、半導体のサイズを小型化する際に「シュリンク」という言葉が用いられます。 私たちが今、スマホやタブレットなどの通信機器を携帯できるようになったのも、ICチップのシュリンク(小型化)に成功したことが大きいと言えるでしょう。
(例文)
- チップをさらにシュリンクできませんか?
- これ以上のシュリンクは、今の技術では無理です。
包装におけるシュリンクの使い方と例文
商品を透明なフィルムでピタッとパッキングすることを「シュリンク包装」あるいは「シュリンクラップ」といいます。特に、本やDVDなどの出版関連で使われているもので、シュリンク包装することで立ち読みができないようになっています。
また、ソフトウェアもシュリンク包装されていますが、IT業界では、購入者がパッケージの封を破いてメディアを取り出した時点で使用許諾契約に同意したものとみなします。これを「シュリンクラップ契約」といいます。
(例文)
- この商品はシュリンク包装で販売します。
- シュリンクラップされているので、破れないように丁寧に扱ってください。
シュリンクの具体的な事例
ここで、シュリンク市場の具体的な事例を挙げてみましょう。
ガラケー
一般家庭における通信手段が固定電話しかなかった時代にポケベルが登場し、それから間もなく携帯電話としてガラケーが広く普及しました。
しかし、スマホが登場するとガラケー市場は徐々にシュリンクし、使用出来るのもあとわずかとか。現在ではスマホが主流となっていますが、このスマホもいつかはシュリンクする時が来るのではないでしょうか。
銭湯
銭湯もシュリンク市場の一つです。最盛期には全国に2万3,000店を数えたものの、現在では、銭湯の煙突を目にすることもだいぶ少なくなりました。
その背景には、一般家庭にお風呂が普及したことは勿論のこと、ヘルスセンターや健康ランドといった大型レジャー浴場等の増加に加え、一般公衆浴場並みの料金で食事や休憩、娯楽施設も併せ持つ、いわゆるスーパー銭湯等の増加が挙げられます。
写ルンです
「写ルンです」とは、1980年代に富士フイルムが発売したレンズ一体型の使い捨てフィルムカメラ。安価で手軽に購入することが出来ることから、一昔前は多くの人が利用していましたが、その場で写り具合を確認することができ、何度でも取り直しがきくデジタルカメラが登場すると、「写ルンです」を始めとするフィルムカメラ市場は徐々にシュリンクしはじめます。
そして、携帯電話にカメラ機能が付帯されたことで、一気にシュリンクしていきました。
しかしながら、この「写ルンです」の人気が近年復活。自分で写した写真をSNSに投稿する若者にとって、フィルムならではのアナログの質感と、現像するまでどう映っているのかがわからない点が魅力的なのだとか。一度シュリンクした市場が復活するという、珍しいケースといえるでしょう。
大抵の商品やサービスは、いずれシュリンクしていくものですが、それはつまり、取って代わる新たな商品やサービスが誕生した証しでもあります。そうした進化と衰退が繰り返されることで、私たちの生活や文化が発展していくのではないでしょうか。
固定電話からガラケー、そしてスマホへ。スマホがシュリンクする時、はたしてどんな商品が登場するのか、楽しみですね。