コンビニやファーストフード、ファミレスで、「おや?」と首をかしげる敬語づかいにしばしば遭遇します。
「デザートのほうも一緒にいかがですか?」のように「～のほう」や、「こちらはコーヒーです」を「こちらコーヒーになります」と「は」を抜くなど、ファミ(リーレストラン)コン(ビニエンスストア)言葉といわれます。
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ファミコン言葉を聞いたことはありますか?
ファミコン言葉とは
ファミコン言葉とは、接客に使われがちな、ちょっとおかしな敬語のことです。ファミコンといってもゲームとは関係無く、ファミレスとコンビニなどでよく耳にする言い回しで、バイト敬語などともいわれます。
下記がファミコン言葉の一覧です。ひょっとしたら、ふだん当たり前のように使っているかもしれません。
(1)「こちらランチセットになります」(なります)
(2)「温めてよろしかったでしょうか?」(よろしかった)
(3)「ご注文のほうは以上でしょうか」(のほう)
(4)「5,000円からお預かりします」(から)
ひとつずつ見ていきましょう。
ファミコン言葉の間違った例1
「こちらランチセットになります」
「水が氷になる」「夜になった」というように、本来「なる」は物事の変化を現す言葉です。ですから、「こちらランチセットになります」は、「目の前に置いたこれが今からランチセットに変化しますよ!」という意味でびっくりされてしまうのです。
不自然さを避けたいのならば、「こちらランチセットです」「こちらランチセットでございます」と言いましょう。
しかし、「まさかこれがランチセットだって!?」と相手の期待を超える自信があるならば、予想から現実への変化が生じますので、「こちらランチセットになります」と使うことができます。
NHK放送文化研究所も、「料理名だけでは予想が付かないものに対しては有効である」(※)と述べています。※NHK放送文化研究所 ことばの研究「こちら、～になります」
ファミコン言葉の間違った例2
「温めてよろしかったでしょうか?」
これのおかしなところは、「よろしかった」と過去形になっているところです。すでに起こったことを確認してしまっているのです。
電子レンジで温めるのはこれからのはずなのに、「過去に自分は温めましたが、それはベストな判断でしたか?」と聞くのは変ですよね。「温めてよろしいでしょうか?」と現在形にしましょう。
ファミコン言葉の間違った例3
「ご注文のほうは以上でしょうか」
さて、これはどこが変なのでしょうか？
「ほう」は方向や方角など、なんらかの対象を指す言葉ですが、必ずしも明確ではなく、分野をぼかした時にも使います。例えば、「最近、お仕事のほうはどうですか?」「お荷物のほう、お預かりします」といった具合です。
ですから、対象が2種類以上ある場合の「コーヒーのほうはホットになさいますか」や、慎みをもって金銭の話題をぼかす「お会計のほうは1,080円です」は間違った使い方とはいえません。
しかし、選択も曖昧も必要ない場合は、付ける必要がありません。「ご注文は以上でしょうか?」で十分です。
ファミコン言葉の間違った例4
「5,000円からお預かりします」
「から」は出発地や原因、素材など、ものごとの「はじまり」を表します。「5,000円からお預かりします」は、「5,000円から計算を始めますよ!」といった意味を発しているわけです。「5,000円お預かりします」と比べても、そこまでおかしな表現ではなさそうです。
しかし、そこには「もう端数は出せないんですね!?」という確認も込められていますので、小銭をまだ探しているにもかかわらず言われると、「急かされている」「決め付けられている」と、不快にしてしまうリスクがあります。使う場面には気を付けましょう。
ファミコン言葉を直すには
さて、さまざまなファミコン言葉を見てきましたが、場面によっては使ってもおかしくないものもありましたね。
敬語表現に唯一の正解は無いのです。地域によっても、世代によっても、いろいろな敬語があります。大切なことは、相手と状況に応じた敬意を伝えること。そして、その敬意をきちんと受け取ることです。
「敬語を学ばなくて良い」といっているわけではありません。学ばずに適切な表現を選ぶことはできません。注意しなければいけないのは、これは絶対にダメとか、これだけ使っていればいいとか、単純化してしまうことです。
文化庁も『敬語の指針(※)』で、「マニュアル敬語」の危険性をこう述べています。
いつでも、どんな相手にでも、限られた言語表現だけを画一的に使うことは、相手、例えば、顧客にかえって不快な思いを与えたり、その場にそぐわない過不足のある敬語使用になったりすることにつながりやすい。
※文化庁 第6期総会 敬語の指針(答申)
正しい敬語を暗記するのではなく、敬意の表し方を増やしていきましょう。
