JR東海は23日深夜、東海道新幹線東京~品川間の本線上で異常時対応訓練を実施し、その様子を報道関係者らに公開した。車両故障により早期に運転再開できない状況を想定し、最寄り駅まで徒歩で避難する訓練が行われたほか、現地の社員と指令が連携し、乗客に向けて運行情報を適宜提供する訓練も実施された。
東海道新幹線では、大規模災害や不測の事態の発生に備え、各現場での通常の教育訓練に加え、さまざまな専門分野を持つ社員が参加しての実践的な大規模訓練も行っている。5月23日の終電後に行われた訓練では、駅員、運転士、車掌、パーサー、設備保守担当者、管理部門の社員ら約200名が参加した。東京~品川間を走行中の列車の台車に異常が発生し、品川駅手前300mの本線上で停止したという想定で訓練が行われた。
東京駅を発車した訓練列車は、品川駅に着く直前で急ブレーキとともに停止。異常が発生した号車の床下機器を車掌が確認し、運転見合わせの情報を受けて駆け付けた車両担当の保守係員とともに点検を行った結果、異常な臭いが認められたことから継続運転は不能と判断された。
車内では運転見合わせを知らせる車内放送が日本語・英語の2カ国語で行われ、車内テロップも日本語・英語で表示される。運行情報を知らせるTwitterアカウントからも、運転見合わせや車両点検などの情報発信が行われるという。座席後方の背面テーブルに表示されたQRコードから多言語運行情報ウェブサイトを見ることもでき、パーサーが外国人の乗客に案内する場面もあった。
訓練列車は継続運転不能と判断されたため、乗客役の社員らはドアに取り付けられた非常用脱出はしごで列車から降り、線路脇通路を徒歩で避難し、最寄りの品川駅へ向かうことになった。体の不自由な乗客がいることを想定し、担架を使用した避難誘導も実施。乗務員と保守係員が連携し、歩行困難者を乗せた担架を駅まで運んだ。
品川駅の新幹線ホームでは、駅係員による日本語・英語の放送案内をはじめ、外国人の駅利用者向けに「ポケトーク」を使用した情報提供訓練も行われた。なお、今回行われた訓練のうち、外国人も含めた乗客および駅利用者に向け、列車運行に関する情報を発信する訓練は初実施だったという。JR東海は今年3月以降、指令所に情報発信専任の担当者を新たに配置し、Twitterや車内テロップなどで運行情報を提供している。
訓練の後、取材に応じたJR東海 新幹線鉄道事業本部 運輸営業部長の辻村厚氏は、乗務員と保守係員が連携した訓練を「本線上で、なおかつ現車を使ってできたことはひとつの成果。これまでの訓練が生かされたと思っていますが、(今回の訓練に対する)専門家の評価を待った上で、課題があれば今後に生かしたい」とコメント。ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックを控え、訪日外国人のさらなる増加が見込まれる中、今回のような大規模な訓練を通じて社員の対応能力を上げることで、「お客様にさらに安心していただける新幹線をつくっていきたい」と辻村氏は述べた。