JR東日本盛岡支社は15日の終電後、東北新幹線で走行試験を行う新幹線試験車両E956形「ALFA-X」の盛岡駅での発着場面を報道関係者らに公開した。「ALFA-X」の走行試験は営業列車のない夜間を基本に、年間最大約70日程度の実施を予定している。
「ALFA-X」は「さらなる安全性・安定性の追求」「快適性の向上」「環境性能の向上」「メンテナンスの革新」をコンセプトに、次世代新幹線の開発を進めるための試験プラットフォームとして製作された。トンネル突入時の圧力波の抑制をめざし、10両編成の両先頭車で異なる形状を採用。1号車は先頭長約16mでE5系並みの客室空間を確保し、10号車は約22mに及ぶロングノーズで環境性能を追求している。
落成後の5月9日に報道公開を行った後、5月10日の終電後に1回目の走行試験を実施。5月12日の終電後に行われた2回目の走行試験で、初めて岩手県内を走行した。3回目となる5月15日終電後の走行試験では、仙台駅から走行してきた「ALFA-X」が0時57分頃、盛岡駅14番線ホームに入線。車体側面の表示器には「試運転」と表示された。30分近く停車した後、1時25分頃に発車し、北上方面へ折り返して行った。盛岡支社によれば、今月は岩手県内を走行する試験を計6回行う予定だという。
「ALFA-X」が盛岡駅を発車した後、JR東日本盛岡支社運輸部の神山和則氏がインタビューに応じ、現在の状況を「営業最高速度と同じ320km/hでの走行試験を行い、ここまで順調に進んできています」と説明。いまは基本的な性能を確認している段階であり、「次世代新幹線としての環境性能や安全性の向上について、岩手県内を含む仙台~新青森間で検証を進めていきます」「新幹線をより利便性高くご利用いただくため、先進的な試験車両である『ALFA-X』を用い、しっかりと開発を進めたい」と述べた。
この日、「ALFA-X」は盛岡駅を発車した後、北上駅まで往復し、営業運転が始まる朝までに仙台駅へ向かい、新幹線総合車両センターへ戻ることになっている。なお、同車両は環境性能の向上をめざし、2種類の新型低騒音パンタグラフを搭載する予定だが、現在行っている走行試験は320km/hでの走行や基本的な性能の確認が中心ということもあり、E5系と同タイプのパンタグラフを搭載しているとのことだった。
「ALFA-X」は今月中に青森県内での走行も行う予定。報道公開では北海道新幹線への乗入れに関する質問もあり、「札幌延伸も控える中、(ALFA-Xの)雪や寒さへの対応について、鉄道総研やJR北海道とも協力しながら進めていくことを現在検討しています」と説明があった。「ALFA-X」の走行試験は2022年3月まで行われる予定で、最高運転速度360km/hの走行に加え、車両性能試験として数回程度、最高速度400km/hで走行することも発表されているが、具体的な実施時期などは現時点で未定とされた。