●『東京レイヴンズ』(2010年5月刊行)

『東京レイヴンズ』からは、黒崎真音が黒の衣装で登場して「X-encounter」を熱唱。魂の叫びがそのまま歌声になったようなパワフルでカッコいいステージは、間奏で観客を煽るとさらに熱量を増してみんなの元へと届けられた。

作家からのお祝いメッセージ、その2でも30年の歴史を感じさせる豪華な先生たちのメッセージを紹介。そして、最後はあの作品のステージへ。

●『スレイヤーズ』(1990年1月刊行 ※長編文庫第1巻)

※長編第1作は1989年に第1回ファンタジア長編小説大賞準入選。同年、短編第1作も誌面に掲載されている。 ※当時のタイトル表記は『スレイヤーズ!』

まずは、前述の生口上からどよめきと歓声に迎えられた、林原めぐみと奥井雅美による「Get along」(TVアニメ『スレイヤーズ』オープニングテーマ)のライブ。2人とも赤と黒を基調としたリナ=インバースを髣髴とさせる格好なのが熱い。スクリーンの映像が4:3なのも歴史を感じる。

熱い歌声、2人のハーモニーはもちろんのこと、背中合わせでチラッと顔を合わせる姿も感動的だ。ちなみに、この2人が生でこの曲を披露したのは奥井のライブに林原がシークレットで出た時ぐらいであり、本当に貴重な瞬間となった。

続くトークパートには、林原めぐみ(リナ=インバース役)、川村万梨阿(白蛇のナーガ役)、鈴木真仁(アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン役)、緑川光(ゼルガディス=グレイワーズ役)が登場。当時の裏話も交えてトークを展開していった。

昨年(2018年)、18年ぶりに新作が出たことでも話題となった『スレイヤーズ』は、累計2000万部を達成した、ライトノベルの金字塔的な作品。

しかし、当時は作品イベントが今のように頻繁に行われていなかったこともあり、劇場版は舞台挨拶があったものの、TVシリーズのイベントはおそらく今回が初めてだという。鈴木に至っては『スレイヤーズ』関連で人前に出るのが初という驚きの事実も。

さらに物語の設定上、リナ以外はTVシリーズ組(今回の出演者では、緑川と鈴木)と劇場版組(川村)は一緒にならないため(例外は「スレイヤーズEVOLUTION-R」。川村がナーマ役として出演していた)、このメンバーが集結したこと自体がレアなのだとか。

どちらにも出演している林原は、TVシリーズと劇場版でのリナの立ち位置の違いを説明し、「劇場版だとナーガがやっかいなんですよ」とぶっちゃける。すると川村もそれに応酬して笑いを誘っていた。

そうかと思えば、やっぱり食べ物の話で盛り上がるのも『スレイヤーズ』。打ち上げのお店のハラミを食べ尽くしたことや、林原から鈴木はハラミを、緑川はとんかつ茶漬けを教えてもらったことなど、食べ物ネタは話題に尽きない。松本保典(ガウリイ=ガブリエフ役)が、アフレコ後に昼過ぎから飲んでいたこともあったとの暴露話も飛び出していた。

そして、何より印象的だったのはアフレコについての話だ。命を削るほどの熱量で行われていたアフレコは、朝は元気でも夜になると林原も川村もヘロヘロのゾンビのような状態だったという。その姿を緑川はすごいと思って見ていたそうで、鈴木は当時デビューしたてで噛むことも多かったが、笑って「大丈夫だよ」と言ってくれた先輩たちの優しさを語っていた。

アフレコのエピソードは他にも多数。例えば、川村は11人のナーガが出てくるOVA『スレイヤーズすぺしゃる』で、笑いを何パターンも録って重ねたため、最後は酸欠状態になったのだとか。

「限界は自分で決められないんです」と話す林原。予めこのぐらいかと考えて臨んでも、実際のアフレコではそれ以上のものが出てきて、自分でも止められないという。役者魂とも言うべき姿は、ベテランの方たちにも伝わったようで、故・内海賢二のエピソードはとても印象深いものだった。

それは、内海がゲストで出演した時のこと。アフレコ時に絵の状態があまり良くなく、心苦しく思いながらも林原たちはフルの力でテストをやっていたそうだ。それを見た内海は「めぐたちがこんなにやるんじゃ、俺たちも手を抜くわけにはいかないな。絵がどうのとか言ってる場合じゃねぇ。やるぞ!」とベテランの皆に発破をかけてくださったのだとか。

どんな状況だろうと100%以上のものを出してこそ『スレイヤーズ』という気持ちでやっていたと語る林原の言葉が、とても印象的だった。

内海については、川村からもとっておきのエピソードが。劇場版に内海が出演した際、自身の出番後も村人のガヤなどに参加してくれたという。しかし、「うひょひょひょひょ」と笑う内海は、ディレクターから、「内海は声が目立つので出て下さい」と言われてしまったたらしい。笑い話であると同時に、そこまでさせてくれる現場だったと言えるだろう。林原も「そういうことって嬉しいですよね」と口にしていた。

貴重な裏話が次々飛び出した『スレイヤーズ』ステージのラストを飾ったのは、エンディングテーマ「KUJIKENAIKARA!」のライブ。林原と奥井によるこの曲のフルコーラス披露は、オープニング以上に貴重かもしれず、会場は2人の美しいハーモニーと大歓声に包まれていた。

最後は改めて全員が登場し、ファンタジア文庫編集長からのメッセージが紹介される。出演者からの挨拶では安野が林原にいじられる場面もあり、ファンタジア文庫を通じて先輩と後輩の繋がりが生まれ、さらにより良い作品が生まれていくのだろうと感じさせてくれた。