あしたのチームはこのほど、「中小企業のシニア雇用に関する調査」の結果を公表した。調査は2月19日~21日、全国の従業員5人以上300人未満の企業の経営者300人(東京都・大阪府に本社を置く経営者150人、東京・大阪以外の道府県に本社を置く経営者150人)を対象にインターネットで行われた。
現在働いている60歳以上の従業員数は、都市部の企業(本社:東京・大阪)では平均「3.0人」、地方の企業(本社:東京・大阪以外の道府県)では平均「5.7人」となり、都市部に比べて地方の企業で60歳以上の従業員数が多いことがわかった。また、60歳以上の従業員を1人以上雇用していると回答した人は73.7%となった。
定年退職したシニア人材を採用した経験のある経営者は、都市部で34.7%、地方では43.3%だった。同社では「若年層の人口流出などにより人材確保が難しい地方企業では、定年後のシニア人材も貴重な労働力として雇用しているのかもしれない」としている。
厚生労働省が65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用環境整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成する「65歳超雇用推進助成金」について「名前は聞いたことがあるが、内容までは知らない」「知らない」の割合を除いた認知割合は都市部で43.4%、地方で48.6%となった。また既に申請・利用している企業の割合は都市部で4.7%、地方で12.0%と、地方企業の1割以上が助成金を利用してシニアを雇用していることがわかった。
今後、シニア人材を「採用したい」「やや採用したい」をあわせた割合は都市部で51.4%、地方で55.3%と、いずれも半数を超える結果となった。採用したい理由は人材確保のほか、「信用できる」「さまざまな経験・スキルが、会社全体に効果が期待できそう」「若手を育成していくためにも経験者が必要」などが挙げられた。また「人生の充実につなげる」など、シニアの元気や生きがいのために働いてもらいたいという意見もあった。
採用したくない理由は、力仕事やパソコン作業など業務内容がシニアにとって適応が難しいと考えられるといった回答のほか、仕事を覚えて慣れるまでの速度に対する不安や、教育をするリソース不足などが挙げられた。
前問で「採用したい」「やや採用したい」と回答した人にシニア人材に期待する効果(成果)を聞いた。もっとも多い回答は「即戦力としての活躍」(68.8%)、次いで「技術やノウハウの継承」(53.1%)となった。都市部と比べて地方で「技術やノウハウの継承」の回答割合が多くなっている。
「深刻な少子高齢化の中、事業そのものや、その土地ならではの技術・ノウハウを継承していくために、次の世代に伝えていく役割をシニア人材に期待しているのかもしれない」と同社。
シニア人材を採用するにあたり、不安に思うことや課題となると思うことを聞いたところ、第1位は「本人の健康状態や親・配偶者の介護等による、急な退職・休職」(58.1%)となった。シニア世代は、本人の健康状態の不安に加え、親や配偶者も高齢であることから介護等で急に働けなくなってしまうことが予想される。戦力として期待するからこそ、急な退職・休職をリスクと感じる経営者が多い印象だ。
第2位は「雇用者としての安全配慮(健康管理・労働環境整備など)」が38.1%と、4割近くが回答した。シニアを雇用する場合、勤務時間・シフトや、設備面などこれまで以上に安全配慮をしなければならないと感じるのかもしれない。第3位は「シニア人材の査定・人事評価」26.9%となった。
シニア人材を採用する際にどのように給与査定を行うか、現状での考えを聞いた。最も多い回答は「成果に応じて給与を変動させ、年齢に応じた給与の調整は行わない」(39.4%)で、年齢に関わらず他の社員と同じ条件で成果を基準に評価したいという意見が多い。
次いで「成果に応じて給与を変動させるが、年齢に応じた給与の調整を入れる」(28.8%)となっており、成果に対して評価はするものの、年齢に応じた水準を設定し、人件費を抑えたい様子もうかがえる。
一方で「昇給や昇進はなくし、一定の給与を支払う」ことで、安全に無理なく働いてもらいたいという人もいた。「どのように報酬を決めるべきかわからない」の回答も14.4%と、経営者にとっても経験や前例が少ないため、シニア人材の給与査定をどうするか、正解のわからない課題となりそうだ。
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定年後のシニア人材を採用したいとお答えの方にお聞きします。シニア人材を採用する際に、給与査定はどのように行ないますか。あなたの考えにもっとも近いものをお答えください。(単数回答)n=160 ※シニア採用意向のある経営者
シニアに対するイメージを聞いたところ、第1位は「真面目である」(40.7%)、第2位は「仕事が丁寧」(32.3%)と、仕事に向かう姿勢に関するポジティブな評価が上位となった。
「身体が衰えている」(31.0%)、「IT・機械に弱い」(29.7%)、「フレキシブルな対応が難しい」(29.3%)といった弱点があっても、「真面目」で「仕事が丁寧」な人材は、取り組み方を工夫すれば弱点をカバーできる可能性が期待できる。
同社では「人材不足や、人生100年時代を背景にセカンドキャリアへの関心・ニーズが高まる中、中小企業にとってはシニア人材を活用する体制・準備を整えることが必要となってくるのではないか」と指摘している。