JR西日本は10日、北陸本線米原~木ノ本間を走る「SL北びわこ号」の春季運転を実施した。今春の「SL北びわこ号」は蒸気機関車D51形200号機が牽引。湖北路を走る「デゴイチ」をひと目見ようと、駅や沿線では地元住民や鉄道ファンらが多く集まった。
「SL北びわこ号」は1995(平成7)年に運行開始し、2018年5月まで「ポニー」の愛称で親しまれたC56形180号機が牽引した。2018年7月から「デゴイチ」ことD51形200号機が牽引する予定だったが、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)の影響により、C57形1号機が代役を務めた。2019年春季運転でD51形200号機が「SL北びわこ号」を牽引することになり、3月10日の米原駅10時9分発・木ノ本駅10時52分着「SL北びわこ1号」で運行開始した。
蒸気機関車D51形200号機は1938(昭和13)年に浜松工場で製造。おもに中部地方や関西地方で活躍し、米原機関区に在籍したこともあるという。1972(昭和47)年に引退し、梅小路機関車館(現・京都鉄道博物館)で動体保存された後、2017(平成29)年から「SLやまぐち号」で本線復帰を果たした。
当日は米原~木ノ本間を走る「SL北びわこ1号」の車内も公開された。5両編成の12系客車をD51形200号機が牽引し、車内放送では旧国鉄型客車でよく聞かれた「ハイケンスのセレナーデ」のチャイムが流れる。否応なしに旅の雰囲気が盛り上がる。
10時9分、地元関係者や鉄道ファンらに見守られながら米原駅を発車。蒸気機関車らしい独特の前後運動を感じながら、少しずつ加速した。当日は曇り空であったものの、進行方向右手には伊吹山地が見えた。
「SL北びわこ号」は全車指定席となっており、この日は満席だったという。乗客たちは蒸気機関車の勇姿を感じながら、思い思いに列車の旅を楽しんでいる様子だった。窓を開ける乗客が多かったこともあり、ほんのりと炭の匂いが車内に立ち込めた。
ところで、「SL北びわこ号」に使用される12系客車は製造当初の姿をとどめており、国鉄民営化から30年以上経った現在では貴重な存在といえる。
ボックス席のテーブルの下には、瓶入りジュースを開けるための栓抜きが設置されており、現在ではほとんど見られない設備に驚く乗客の姿も。車内放送にて、「12系客車は臨時列車向けにごくわずかしか残っていない」といった内容の案内もあった。「SL北びわこ号」に乗車した際は、蒸気機関車だけでなく12系客車の車内設備にも注目してほしい。
10時57分、5分遅れで木ノ本駅に到着。ホームは人であふれ、D51形200号機の周囲は記念撮影を行う人でごった返していた。ときおり「ボー」という迫力ある汽笛を聞くことができた。
「SL北びわこ号」を運転した乗務員は、昨年まで同列車を牽引したC56形と比べて「D51形は馬力があり、頼もしい」と発言。「デゴイチ」が牽引する初めての「SL北びわこ号」だったが、「蒸気機関車の性能を頼りにしました」と話していた。
同列車の今年の運行計画は滋賀県のサイト内でも案内されており、今後の運転日は9月8・15・22日と10月13・20・27日、11月3・10日(いずれも日曜日)とのこと。9月以降の機関車の形式は現時点で未定とされている。