自民党と公明党は、2019年度の与党税制改正大綱をまとめた。今回の改正では、2019年10月の消費増税への対策とともに、社会・経済の変化に対応した税制の抜本改革の動向が注目されていた。

自動車関連の税制については、消費増税後に景気が冷え込むことを防ぐため、2019年度単年度で530億円の減税措置がなされた。これは従来、クルマを購入する時に消費税との二重課税となっていた「自動車取得税」を廃止し、保有段階で課税する「自動車税」を年間1,000~4,500円の幅で引き下げるものだ。

小型車を中心に「自動車税」が減税となる(画像はトヨタ自動車の小型車「ヴィッツ」)

自動車税制の抜本改革を明言

一方で、今回の改正では、クルマの電動化やカーシェアリングの普及など、自動車を取り巻く環境の変化に応じて、自動車関連税制の抜本改革に着手する方針も示した。「『保有から利用へ』の変化などを踏まえて、課税のあり方について中長期的な視点に立って検討を行う」ことを明記したのだ。

つまり、従来は排気量で金額を決めていた「保有」に対する課税から、走行距離など「利用」に応じた課税に軸足を移すとの方針を打ち出したわけだ。こちらは2020年度以降に具体化を目指す方針という。

かねてから、複雑かつ苛重な日本の自動車関連税制を簡素化し、軽減するというのは自動車業界の念願だった。今回の税制改正は、その抜本改革に向けて一歩踏み込んだものとして評価できる。

保有段階で税金を支払う自動車税は、排気量別に税率が引き下げとなる。特に小型車ほど減税幅が大きく、最大で年間4,500円の減税となる。この自動車税は1950年(昭和25年)の創設以来、増税が繰り返されてきた歴史があり、今回は小幅な減税ではあるものの、「創設から70年近く経過した自動車税に初めて風穴が開いた」(豊田章男自工会会長)ことになる。

トヨタ自動車の豊田章男社長は日本自動車工業会(自工会)会長に就任して以来、一貫して自動車関連税見直しの必要性を訴え続けている

だが一方で、エコカー減税の見直しやグリーン化特例の縮小、環境性能別の燃費課税基準見直しなど、実質的な増税となる決定も今回の改正には盛り込まれている。これには、地方税減収対応の財源確保という意味合いがある。これからクルマを買う人は、自動車税の減税とエコカー減税などの見直しをしっかりと把握し、購入車種を選ぶことが必要になるだろう。

ダウンサイズの小型車に手厚い自動車税の減税

2019年度税制改正大綱の本文を見ると、自動車に関する措置については「消費税率10%への引き上げにあわせ、自動車の保有に係る税負担を恒久的に引き下げることにより、自動車ユーザーの負担を軽減し、需要を平準化するとともに、国内自動車市場の活性化と新車代替の促進による燃費性能の優れた自動車や先進安全技術搭載車の普及等を図る」とある。具体的には、2019年10月以降に購入するクルマについては、小型車を中心に全ての区分で自動車税の税率を下げる。減税幅は以下の通りだ。

・660cc~1,000cc:29,500円(現状)-4,500円(減税幅)=25,000円(新たな税額)
・1,000cc~1,500cc:34,500円-4,000円=30,500円
・1,500cc~2,000cc:39,500円-3,000円=36,000円
・2,000cc~2,500cc:45,000円-1,500円=43,000円
※2,500cc超は一律1,000円減税、軽自動車税は据え置きで10,800円

これを見ると、排気量を落としてターボで馬力を向上させる「ダウンサイジングターボ」のトレンドに対応し、小型車の減税を手厚くしたものとなっている。いわゆる「リッターカー」が4,500円と最大の減税幅だ。さらに、二重課税だった自動車取得税も廃止となる。

これだけなら、購入時と保有時で自動車関連税は減税になるわけだが、一方で、今回の改正では、燃費に応じて取得価格の0~3%の税率で課税する「環境性能割」を導入するとの方針も打ち出している。これには環境性能に応じた「燃費課税」としての側面がある。税率は増税後の1年間限定で一律1%を引き下げるが、2年後からは元に戻すとのことだ。

さらに、自動車重量税に適用しているエコカー減税については、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの他、2020年度の燃費性能を40%以上上回るガソリン車を免税対象とし、それよりも環境性能の低いクルマでは減税幅を縮小する。エコカー減税は、2019年10月の消費増税時に廃止する自動車取得税にも適用しているが、廃止までの半年間は、自動車取得税に対する減税も縮小する。つまり、エコカー減税では減税幅を縮小するという話なので、実質的には増税になる。

さらに、2021年10月からは、自動車税と軽自動車税の「グリーン化特例」をEVなどに限定する。税率を軽減する対象車種を絞る措置なので、これも実質的な増税だ。

つまり、自動車取得税を廃止し、自動車税を排気量別で減税する代わりに、燃費課税を新設し、エコカー減税とグリーン化特例を限定・縮小するという方向性が打ち出されたわけだ。これまで対象車種が緩やかだったエコカー減税も、EVやPHVなどに絞られることになる。自動車関連の税金が、単純に減税となるわけではないのだ。

「保有から使用へ」でクルマと税金の関係はどうなる

今回の税制改正で、与党税制調査会において最も議論が白熱したのが自動車関連税制の減税についてだった。クルマの保有や取得などにかかる税負担を単年度で減らす(自動車税の減税)だけでなく、自動車関連税の抜本的見直しを中期的な課題と明確に位置づけ、「保有」に対する課税から「利用」に応じた課税へと軸足を移していく姿勢を明確にした格好だ。

日本の自動車関連税制は従来、いかにも複雑かつ苛重なものであった。クルマの購入、保有、利用の3段階で、消費税を含め9つもの税金が課せられていたこと自体、世界的に見ても珍しいケースだったのだ。

そもそも、日本におけるクルマへの課税は、クルマを「ぜいたく品」とみなし、戦費調達のための「奢侈税」として課税したことからスタートしていて、その感覚は基本的に変わっていない。「クルマは税金がとりやすい」ということで、ここまできたというのが実情といえる。

日本ではクルマを「ぜいたく品」とみなして課税を始めた経緯がある(画像は日産自動車の「ヘリテージコレクション」にて撮影)

フランスのマクロン政権が「燃料税増税」を発端とする激しいデモで揺れているが、日本国民は、自動車税を黙って納税し続けてきた“優等生”だったわけだ。

しかし今回は、自動車関係21団体で構成する「自動車税制改革フォーラム」が7,800万ユーザーの声を全国47都道府県知事に届けるなど、自動車関連税の負担軽減に向けた要望が高まっていた。こういった動きなどを受けて、自動車税の減税論議が白熱した結果、与党税制調査会は、抜本的な税制体系の見直しを中期的な課題として明確に位置づけることとなったのだ。

自動車税体系の抜本的な見直しは、自動車業界が大転換期を迎え、クルマと人との関係が「保有から利用へ」と変化している状況に対応しているものとして、高く評価したい。だが、実際に重要なのは、その税負担の構造をどう変えていくかである。安易に走行距離だけで課税すると、地方に住む自動車ユーザーや運送業者などが負担増で苦しむことにならないだろうか。プライバシー保護の観点からも、走行距離に応じた課税には課題が多い。

また、自動車関連税全体の減少を防ぐため、どこかの税率を下げつつどこかでは税率を上げるという観点が先行するようでは元の木阿弥となろう。購入から保有、利用までの段階で税体系をしっかりと精査し、「保有から利用へ」という大きな流れを確実に捉えた上で、グローバルレベルの抜本改革に結びつけて欲しいものである。

(佃義夫)