ホンダは新型ハイブリッドセダン「インサイト」について一部の情報を先行公開した。発売は2018年中、価格は「アコード」と「シビック」の中間というのが主な内容だが、事前説明会で見聞きした新型インサイトの印象は、トヨタ自動車の「プリウス」に対する新たな選択肢になり得るのでは、というものだった。
環境車だからといって、妥協したくなかったホンダ
インサイトは今回の新型で3代目。ハイブリッド専用車として1999年に誕生した初代モデルは当時、燃費で世界一を達成したクルマだ。2代目は「ハイブリッド・フォー・エブリワン」を掲げて2009年に登場したが、2014年に販売終了となっていた。
新型「インサイト」の開発責任者を務めた本田技術研究所 四輪R&Dセンターの堀川克己氏によると、3代目では「ハイブリッド車が定着し、環境車のバリエーションが増えた今だからこそ、『環境車だから』と我慢、妥協をせずに済むよう、クルマの本質的な価値を備えたものを提供したい」と考えたとのことだ。
例えば走りの面では、初代と2代目はエンジンが主体で、それをモーターがアシストするシステムを採用していたが、3代目では電気自動車(EV)のように走ることも可能なホンダ独自の2モーターストロングハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」を搭載した。これにより、環境車だからと妥協せず、力強い加速とシームレスな走りを実現できたという。
ホンダは「2030年に四輪車グローバル販売台数の3分の2を電動化する」という目標を掲げているが、このi-MMDは「電動化に向けて大きく前進していくホンダが採用するシステム」であり、「これからは幅を広げ、より多くのクルマに搭載される可能性を持っている」と堀川氏は説明する。
デザインは正統派、パッケージングに工夫あり
デザインのキーワードは「エレガント」と「ダイナミック」。後部へ向けてなだらかに下降する屋根のラインにはクーペの要素も垣間見えるが、まず、オーソドックスなセダンのスタイリングだといえる。
新型インサイトでは、ハイブリッド用のバッテリーを床下に置くことで、ボンネットを必要以上に伸ばすことなく、短いオーバーハング(クルマを横から見たとき、タイヤよりも外側に出ている部分)を実現している。従来のハイブリッドセダンであれば、IPU(インテリジェントパワーユニット、バッテリーと制御装置が一体になったパーツ)という部品がトランクの一部を占拠してしまっていたところだが、こちらは小型化してリアシートの下部に移動させることで、トランクの使い勝手を向上させた。この辺りからも、環境車だからといってデザインや使い勝手で妥協したくないというホンダの考えが見てとれる。
ハイブリッドセダン市場の状況は?
新型インサイトが挑むハイブリッドセダンの市場といえば、トヨタのプリウスが圧倒的な強さを誇っているフィールドだ。でも、プリウスの奇抜なデザインには好き好きがありそうなので、オーソドックスなカタチをしたハイブリッドセダンが欲しいという需要が眠っていてもおかしくない。もちろん、環境車を選ぶ人であれば燃費と価格も重視するだろうから、インサイトがいくらで、1リッターあたりどのくらい走るのかというポイントは、販売台数を大きく左右するだろう。
ただ、ひとつ気になるのは、ここ最近のプリウスの販売に、一時期のような勢いが見られないことだ。日本自動車販売協会連合会のデータを見ると、プリウスの販売台数は2017年度が14万9,083台で前年比66.2%、2018年度上期が5万4,388台で同69.1%となっている。もし、プリウスが主役のハイブリッドセダン市場で需要が落ち込んでいるのであれば、新型インサイトは減りつつある需要をプリウスと奪い合うことになる。
インサイトはプリウスと正面から競合するのか、あるいはハイブリッドセダン市場の潜在需要を掘り起こすクルマとなるのか。それを考えるためにも、インサイトの登場により、プリウスの台数がどう推移するかには注目すべきだろう。
(藤田真吾)






