6/29に参議院で可決された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」をご存知でしょうか。これによって、来春から働き方が改革されると話題になったため、聞いたことがあるという方も多いことでしょう。

この中に、「年5日の有休取得の義務化」があるのですが、大手を振って有休を取れるようになるから、これって喜ばしいことでしょうか。それとも休みが義務になるなんてとんでもないことなのでしょうか。

きちんと内容を押さえておきましょう。

来春から年5日の有休取得は「義務」なんです

来年の4月1日から、働き方改革関連法が順次施行されます。

大まかに説明すると、ポイントは3つ。時間外労働の上限規制の導入、正規雇用と非正規雇用との待遇の差別の禁止、そして年次有給休暇の確実な取得です。

  • 画像は厚労省のリーフレット

中でも、年次有給休暇の確実な取得、簡単に言うと、有休取得の義務化に関しては、施行が2019年の4月1日からとなり、業種や会社の規模が違えども、猶予期間なくはじまります。

細かな規定や、罰則などに関しては、まだこれからで、9月上旬頃に政府から公布される予定なのですが、そうなってから慌てぬよう、知っておくべきことがいくつかあるので、ご説明します。

有休の付与タイミングと日数

自分の有休がいつ、そして何日間付与されるか、ご存知ですか?4月入社の正社員の場合、入社して6カ月後に10日付与されますので、毎年10月には10日以上付与されているはず。

また、有休は、勤続年数によって日数が変わります。入社した年は10日ですが、翌年の付与は1日増えて11日。その翌年は12日と毎年1日ずつ増えていき、5年目にはプラス2日の16日に。6年目もプラス2日で18日。そして7年目には20日付与されます。

今回施行される、有休取得の義務ですが、この付与されたすべての有休を消化しなくてはいけないわけではありません。毎年5日間以上を消化する、ということが義務化されたのです。

パートやアルバイトも全員5日の消化が義務化される?

今回施行される有休取得の義務化に関しては

「使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする」

とされています。

つまり、義務化されるのは、10日以上の有休が付与される人のみです。年に10日以上有休が付与されるパートやアルバイトには、確実に有休を5日取得させるよう、本人が有休取得を申し出ない場合には、会社側が時季を指定してでも有休を与えることが必要です。

10日以上の有休が付与されないパートやアルバイトには、有休を5日消化する義務はありません。

ただし、有休が10日発生していないパートやアルバイトに関しても、

・会社側が義務化された5日を全社で同じ日に指定し
・会社そのものが休業となってしまい
・通常働いて賃金を得られる日に休みをとらざるを得ないような状況になるとき

は、計画的付与と同じような扱いが望ましいとされることになると思います。

計画的付与を採用する際は、

「有給休暇がない労働者や不足する労働者については、特別の休暇を与える、年休の日数を増やす等の措置が望ましく、そのような措置を取らずに休業させる場合には休業手当の支払いが必要である」

とされています。

つまり、不足分を会社側が補ってくれることになる可能性があるということです。

義務化された5日は、必ず会社に指定される?

現状、基本的に自分から時季を申し出て、取得した日数分、元々計画的付与で取得した有休の日数が5日以上あれば、会社側からそれ以上指定する必要はないとされています。つまり、自分で5日以上有休の希望を出して、取得すれば義務を果たしたことになります。

とはいえ、会社側が

「誰々は今年5日有休取得予定だからOKで、誰々はまだあと3日休ませなくてはならないから、こちらから時季を指定しないと…」

といった管理が煩わしいと思ったとき、もしかしたら計画的付与が新たに導入実施されるかもしれません。

計画的付与って何? 来春から職場に導入されるらしいと噂が…

計画的付与とは、有休のうち、5日を超える分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を会社が割り振ることができる制度です。

企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方法、班・グループ別の交替制付与方法、年次有給休暇付与計画表による個人別付与方法などの方法があります。

自分の有休は自分で指定して休みたい!

残念ながら、既に計画的付与の実施について決定が出てしまっている場合、労使協定を覆さない限り、変えられません。反対だとしても、会社に決められた日は、有休を取得することになります。

ただし、計画的付与は、全有休を指定できるものではありません。付与された有休のうち5日間は、自分で指定して休めるよう残っているはず。それでやりくりするしかありません。

結局、有休年5日取得の義務化って得なの? 損なの?

これまでも毎年5日以上、自分の好きなタイミングで有休を消化してきた人にとっては、何ら変わりはありません。

ただし、来春から計画的付与が導入されるという場合、毎年自分の好きなタイミングで、有休を全て消化してきたという人は、少し窮屈になるかもしれません。今まで休みたいけれど全く有休消化ができず、毎年消えていく有休を、指をくわえて諦めてきた…という人にとっては、確実に5日は有休がとれるので得になります。

ただし、このタイミングで就業規則の年間休日日数を変更し、そこに計画的付与をあてるというようなことを考える会社もあるかもしれません。自分の休日の権利を自分でしっかり守るべく、注意深く動向を見守ることが大事です。

  • 回遊舎

番場由紀江

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション(株)回遊舎所属の編集・ライター。お金に関する記事以外にも、妊娠・出産・育児といった女性のライフプランに大きくかかわる分野や、ビューティ・ヘルスケア分野を主に手掛ける。『からだにいいこと preco』(祥伝社ムック)では編集長として、女性が将来のライフプランを考える上で不可欠な、「プレコンセプションケア」の概念を世に広める一翼を担った。