クレジットカードには、お買い物の決済以外にも「キャッシング」機能がついているものがあります。でも、実際に使ったことはない人も多いようです。金融庁の調査※によると、最近3年以内にキャッシングなどの借り入れをした人は約9%。10人に1人に満たない割合です。
※出典:貸金業利用者に関する調査・研究 金融庁 2017年
とはいえ、手持ちのクレジットカードにどんな機能がついているのかはぜひ知っておきたいところです。そこで今回は、クレジットカードのキャッシング機能について解説します。
クレジットカードのキャッシング機能とは
キャッシングとは、「キャッシュ」つまり現金を借りることをさします。一部のクレジットカードにはキャッシングの機能がついており、カードをATMやキャッシュディスペンサーに通して操作すると、現金を借りることができます。国内で利用するキャッシングのほかに、外国で現地通貨を引き出せる「海外キャッシング」を使えるクレジットカードもあります。
銀行のキャッシュカードで現金を手にするときは、自分の銀行口座にある預金残高から引き出しますが、キャッシングはカード会社からお金を借りて現金を引き出すことになります。
クレジットカードを使ってお金を借りる方法には、ほかに「カードローン」もあります。どちらも現金を借りられる点では同じですが、キャッシングはおもに現金を引き出して借りるタイプが多いのに対して※、カードローンでは住宅ローンなどと同じように指定した銀行口座にお金を振り込んでもらうこともあります。
また、返済方法や金利、借り入れできる最大の枠(借入極度額といいます)などにも違いがあります。一般的にはキャッシングのほうがカードローンよりも金利が高く、借入極度額が低めに設定されます。ですから、急ぎの支払いのために現金を用意したいけれど、必要なのは数万円から数十万円程度で良いようなときにはキャッシングが向いています。逆に、百万円単位の金額が必要なときや、必ずしも現金を手元に用意しなくてもよいような場合にはカードローンで対応できることが多いでしょう。
※銀行口座にお金を振り込んでもらうタイプのキャッシングを扱っているクレジットカードもあります。
どのような条件下で使える? 限度額は??
クレジットカードのキャッシング機能は多くの場合、カードを申し込む際に希望して設定します。申し込むときにキャッシング機能を希望しなかった場合は、原則としては手持ちのクレジットカードにキャッシング機能はついていないでしょう。
ただ、必要になったら追加できるところもあります。入会と同時でも、後からでも、設定する際には審査が必要です。カードでのお買い物枠と同じように、年齢や収入などをもとにカード会社が返済能力を判断して、キャッシングの利用枠が決まります。
ですから、いくらまでキャッシングを利用できるかは個人によって異なります。カードを申し込む際にキャッシングを希望した場合は、カードが発行されるときにキャッシングの利用枠も同時に設定されるのが一般的です。クレジットカードが発行されて手元に届くとき、カードが貼り付けられた台紙に、カードの利用枠とともにキャッシングの利用枠がいくらかが記載されています。
キャッシングの利用枠は、カードを利用できる「総枠」(カード会社によっては「総利用枠」とも呼びます)の範囲内で設定されます。総枠とは、お買い物での決済やキャッシングなど、カードのすべての機能を合わせて利用できる金額の上限のこと。たとえば総枠が100万円なら、お買い物の利用枠は100万円、キャッシングの利用枠は80万円のように設定されます。
ただ実際に使えるのは、すべての機能での利用を合算して、総枠の範囲内までです。たとえば総枠が100万円で、すでにお買い物で50万円使い、返済が終わっていなければ、新たにキャッシングできるのは50万円が限度になります。
キャッシングの方法
カードさえあればすぐに現金を受け取れるのが、キャッシング機能の便利なところです。カード会社のキャッシュディスペンサーのほか、銀行やコンビニのATMのほとんどは、クレジットカードのキャッシングに対応しています。端末の画面でキャッシング機能を選択した後「引き出し」を押してクレジットカードを入れると、現金が出てきます。その際、暗証番号や借りたい金額、返済方法も入力します。
キャッシングは借金のひとつですから、利息をつけて返します。返済は毎月一定額を支払うリボ払いか、一括で支払う1回払いのいずれかを選べることが多いです。またリボ払いの中には、毎月の元金返済額を一定にする方式、元金と利息を合わせて一定額にする方式、ボーナス払いを併用できる方式などがあり、カード会社によって選べる返済方法が異なります。
同じ借入額でも、どの方式を選ぶかによって利息の負担額や返済を終えるまでの期間が違ってきます。多くのカード会社はウェブサイト上に返済のシミュレーション機能を備えていますので、借りる前に確認してみましょう。
クレジットカードのキャッシングの注意点
キャッシングの利点は、ちょっと現金が入り用になったときに気軽に引き出せること。その反面、注意したい点もあります。
それはなによりも「借金」であること。銀行のキャッシュカードでお金を引き出すのと操作は似ているものの、しくみは全く異なります。借りたお金には日割りで利息がかかりますから、できるだけ早く返すのが賢明です。
また、キャッシングは住宅ローンやカードローンに比べて金利が高めです。カード会社やカードの種類、借入金額、借入期間によって異なりますが、カードローンでは年率4%~15%程度のものが多いのに対して、キャッシングでは年率20%のものもあります。かりに10万円をキャッシングして金利が年率18%、毎月1万円ずつのリボ払いで元金を返済したら、10回に分けて返済することになりますが、その間に負担する利息は合計で約8,700円になります※。
預金に預ける際に受け取る利息に比べると、かなり大きな利息がかかることがわかりますね。
※JCBシミュレーション (キャッシング元金10万円、2018年8月1日に借り入れ、9月以降毎月10日に支払い、融資利率年率18%、毎月元金定額払いの場合)
特にリボ払いで返済する場合、借りた金額は高額なのに毎月の返済額を少なく設定してしまうと、完済まで長期間かかってしまいます。すると、利息は日割りでかかりますから、借入期間が長い分利息の負担も重くなってしまいます。月々の返済額が少ないと、総額でどれだけ借りたかの実感も得にくいです。完済しないうちに新たに借りると、多重債務を背負ってしまう恐れもあります。返せる金額にとどめること、いくら借りたかを常に意識することも大切です。
また、カードによっては借入時や返済時に、利息とは別に利用手数料もかかります。借入時にかかる場合は、借入額に応じて1回あたり108円~216円(税込)程度のことが多いようです。カード会社への銀行振込で返済するときには、銀行所定の振込手数料がかかります。海外キャッシングの場合は、さらに現地の金融機関所定の手数料がかかることもあります。
使いすぎないことや早めに返すことを十分に注意すれば、キャッシングは便利な機能でもあります。急に現金が必要! というときに試してみてもよいかもしれません。
※本稿は2018年7月現在の情報をもとに執筆しています。金利や各商品の詳細は今後変わることがあります。
※写真と本文は関係ありません
加藤梨里
ファイナンシャルプランナー(CFP(R)認定者)、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員
保険会社、信託銀行を経て、ファイナンシャルプランナー会社にてマネーのご相談、セミナー講師などを経験。2014年に独立し「マネーステップオフィス」を設立。専門は保険、ライフプラン、節約、資産運用など。大学では健康増進について研究活動を行っており、認知症予防、介護予防の観点からのライフプランの考え方、健康管理を兼ねた家計管理、健康経営に関わるコンサルティングも行う。