風邪の引きはじめや大声を出しすぎた後など、これまでに喉を痛めた経験を持つ人は多いはずだ。喉は声を出したり、食事を体の中に取り入れたりするときに重要な役を担っているだけに、痛みを感じると何かと不便を感じることも少なくない。中には頻繁にのど飴のお世話になっているという人もいるだろう。 そのような人は、何が原因で喉を痛めているのかを知らない限り、今後もずっとさいなまれ続けることになる。
抜本的な対策のためには、まず"敵"の情報収集をする必要がある。そこで今回は、日本耳鼻咽喉科学会認定専門医の宮崎裕子医師に「喉に痛みが生じる理由とその対処法」についてうかがった。
喉が痛くなるメカニズム
――自分の場合、毎年1回ぐらい風邪をひくのですが、そのひき始めの「サイン」が喉の痛みなんですよね。そのため、冬の時期に喉がちょっとイガイガすると「あぁ、風邪だな……」と思い、ちょっとブルーになりながら風邪薬を飲むようにしています
喉に痛みがあったり、イガイガしたりすると困りますよね。仕事に支障が出たり、食事がしにくかったりするのはつらいものです。できるなら、なるべく喉が痛くならないように対処したいですね。
――そうなんですよ。そんな状況では食事もおいしさが半減してしまう感じがして、本当に嫌になります。そもそも、なぜ喉は痛くなるのでしょうか
一般的に言う喉とは、医学的には「咽頭」や「喉頭」を指しています。鼻の奥から食道の入り口までを咽頭、気管の入り口から声帯までを喉頭と言います。咽頭は食道側、喉頭は気管側というイメージですね。喉は、外界との出入り口となる「口」と近いため、外敵の侵入を防ぐ機能を持っているのはご存知ですか?
――鼻の穴の中の粘膜など、空気と触れやすい場所には異物を防ぐためのバリアーのような機能が備わっていると聞いたことはありますが……喉にしろ鼻にしろ、その詳細まではちょっとわからないです
喉では、リンパ組織の集合体の「扁桃」が細菌やウイルスに攻撃されると小さな炎症が起きますが、ほとんどは免疫によって自然に治ります。しかし、免疫の力が落ちていたり、強い細菌やウイルスが侵入したりすると炎症を抑えられずに炎症が悪化します。血管の拡張やリンパ液の貯留が起こり、「腫れ」が生じるのです。腫れが起きると神経を刺激するため、痛みが発生するという仕組みです。
喉を傷める原因
――普段は自然治癒している扁桃の炎症が悪化すると、喉の痛みが起きるというわけですね。細菌やウイルスなどが悪化のトリガーとなりうるとのことですが、他にも要因はあるのでしょうか
主なものには「細菌・ウイルスなどの感染」「喉の酷使(カラオケ、長時間の会話など)」「辛いものなどの刺激物」「タバコ」「アルコール」「乾燥」があります。風邪をひくと喉がイガイガしますが、これは細菌やウイルスが感染して増殖を始めたサインなのです。また、乾燥していると外敵が侵入しやすくなり、炎症が起こりやすくなります。
喉の痛みが症状として出現する疾患
――風邪以外で喉の痛みが症状として出現する疾患にはどういったものがありますか
具体的には風邪や咽頭炎、扁桃炎、扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍、喉頭炎、急性喉頭蓋炎、リンパ節炎、亜急性甲状腺炎などがあります。一時的ではなく、慢性的に痛みに悩まされている方は原因疾患があると考えられるため、一度病院で診察してもらいましょう。
その他にも「喉が痛くて食事や水分が摂取しにくい」「口が開かない」「声が出ない」「咳がひどくて眠れない」「喉の痛み以外に高熱や悪寒、頭痛、関節痛などを伴う」といったケースでも速やかに受診するようにしてください。
喉の痛みを一瞬で治す!? 即効性のある痛み緩和方法とは
――つらい喉の痛みを一瞬で治すのは無理かもしれませんが、痛みを緩和させるために即効性がある対処法と普段からできる痛みの予防策を教えてください
喉の痛みを一瞬で治す方法はありません。対処法としては、こまめに水分摂取をし、食事は刺激物を避けて少量で栄養価の高いものを食べるようにしましょう。喉を温めることも重要ですし、乾燥を防いでくれるマスクの装着、加湿器(濡れタオル)も痛みに効果あります。
喉の痛みの予防には食べ物が重要
予防策としては、栄養バランスのよい食事や十分な睡眠、休養が挙げられます。普段から体を健康に保つように心がければ免疫力が上がり、細菌やウイルスが侵入しても防御できます。
それと細菌やウイルスの侵入を防ぐことも予防対策としては肝要です。日ごろから手洗いやマスク着用を実践しましょう。ウイルスを増殖させないという意味で加湿器も有効ですので、湿度を50~60%に保つように心がけましょう。
※写真と本文は関係ありません
取材協力: 宮崎裕子(ミヤザキ・ユウコ)
耳鼻咽喉科みやざきクリニックの院長。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医 補聴器相談医 身体障害福筺祉法指定医師。毎日の診療をする傍ら3児の母でもあり、患者様の悩みに寄り添った診療を心がけています。