「正しい会社」になることが急務

今回の新中期経営ビジョンの柱となるのは、市場の信頼回復にあったのは間違いないだろう。完成車検査や排ガス問題による市場の不信と、顧客への背信という現状から一刻も早く脱却し、スバルのものづくり本来の姿を取り戻すことは急務である。

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    中期経営ビジョンの時系列

だが、それは社内の問題であって、「お客様第一」の経営理念をいかに全社員に浸透させるかに掛かっている。同時に、社会や時代の要請に対し、どのように商品を構築していくかという未来への展望や目標も、経営ビジョンには欠かすことができないのではないか。

正しい会社を作るためとして、膿を出し切るため、コンプライアンス、ガバナンス、マネジメントの3つを「STEP」では取り上げている。だが、同じことを「法令の尊守」「統治」(統制や監査)、「経営管理」という日本語で語らなければ、やろうしていることへの理解や重みに欠ける。スバルの全社員が日常的に英語に長けているなら別だが、必ずしもそうではないだろう。そこにカタカナの横文字が並んでも、右から左へ抜けていくだけだ。

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    「正しい会社」を作る取り組み

社内で一体、何が起きているのか。どうすれば課題を解決し、次の新しい体制や挑戦へつなげていけるのか。短時間の記者会見では説明しきれないところもあるだろう。しかし、そうであるからこそ、言葉1つで記者はもちろん、スバルの社員一人一人の腑に落ちる語り掛けをしなければ、何も改善できないし、改革できない。スバルの経営陣が本当にそこを胆に銘じているのかが伝わらない記者会見でもあった。

言葉は、話せば相手に伝わるものではない。相手が理解し、腑に落ちるように語らなければ、話したことにはならないのである。社長が、役員が、一方的にこうすると喋っても、社員一人一人の心に響き、瞬時に自分たちが成すべきことを思い浮かべられる言葉遣いをしなければ、スバルは再生しないだろう。