突然ですが、皆さんはiDeCo(イデコ)という言葉を聞いたことはありますか? 確定拠出年金制度ともいいますから、年金制度の一つだということは判ります。では、国民年金とは何が違うのでしょうか? 今回はiDeCo(イデコ)について、そのメリットもあわせて解説します。

iDeCo(イデコ)とは

iDeCoとは個人型確定拠出年金のことで、2017年に名称をiDeCo(イデコ)と改めました。毎月の掛け金を自分自身で運用していき、年金を積み立てていく仕組みです。

従来の国民年金と異なり、自分で管理口座を作成し、運用状況を確認しながら、将来に備えることができます。また、iDeCoを利用することによって税金面でメリットを受けることができます。

以前は加入対象者が自営業者、一部の会社員でしたが、2017年1月からは、加入対象が専業主婦や公務員にも拡がりました。また、企業型の確定拠出年金がある会社員もiDeCoに加入できるようになり、ほぼ全員がiDeCoを通して、自分の資金を運用できるようになりました。
※iDeCo加入者数は約91万5,000人(平成30年5月時点)「国民基金連合会iDeCo公式サイト参照」

気をつけたいのは、銀行口座や証券会社の口座を設けても費用はかかりませんが、iDeCoでは、運営管理機関等に支払う手数料がかかってきます。検討している運営管理機関の手数料が、他の運営管理機関と比べてどうなのか比較してみるのも必要かもしれませんね。 なお、iDeCoの大きな流れとしては、まず毎月の掛け金を設定、運用する商品を選ぶ、一定の年齢になると年金を受け取る、という流れとなります。

自分で毎月の掛け金を設定できる

iDeCoでは、毎月の掛け金額を自分自身で設定します。
※最低5,000円から千円単位で積立可能

設定限度額は、例えば自営業者で月額68,000円、企業年金がない会社に勤める人及び専業主婦等で月額23,000円となっています。また、掛け金額の変更は、1年(12月分の掛金から翌年11月分の掛金[実際の納付月は1月~12月])に1回可能です。

掛け金の変更を行いたい場合は、運営管理機関に「加入者掛金額変更届」を提出して下さい。2018年1月の改正に伴い、これまで掛け金の支払いは原則として月単位で決められていましたが、年単位での拠出も可能になりました。また、加入者が年1回以上、任意に決めた月にまとめて拠出(年単位拠出)を行うことも可能になりました。

※iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できない場合もあるので注意
(イ)自営業者が「国民年金基金」に加入し、上限額(6万8,000円)まで掛金を拠出している場合は加入できません。但し、国民年金基金とiDeCoの併給は可能です。

(ロ)国民年金保険料を払っていない場合は加入できません。但し、過去に未納期間があっても、現在保険料を払っていれば加入できます。

(ハ)企業型DC(企業型確定拠出年金)に加入し、会社がiDeCo(個人型確定拠出年金)との併給を認めていない場合には加入できません。

運用商品の選択

実際に運用する流れですが、あらかじめ銀行等が用意したラインナップの中から、自分が運用していきたいと思った商品を選んで、年金資産を運用していくことになります。

また、運用が決まりましたら、掛け金の配分割合を指定していきます。毎月掛金が拠出されるたびに、その配分割合に応じて商品が購入されていくという仕組みになっています。 なお、確定拠出年金は原則60歳になるまで引き出すことができません。運用期間が長いために、どういった商品を選ぶかによって将来の受取額が大きく変わる可能性があります。そのため、その時々の運用状況に応じて商品の見直しを行っていく必要があります。

商品の中には、元本が保証されるものもあれば、ハイリスク・ハイリターンの商品もあります。当然運用がうまくいかないと元本割れする場合もありますので、慎重に状況を見ていく必要があります。

リスク要因としては、「運用におけるリスク」、「金利リスク」、「為替リスク」、「信用リスク」、「価格変動リスク」、「インフレリスク」等が挙げられます。これらのリスク要因には、常日頃から意識しておく事を心掛けましょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の受け取り

年金資産は、原則60歳から年金・一時金で受け取ることができます。また、70歳になるまでの間であれば、いつからでも受け取り始める時期を決めることができます。

例えば以下のように、様々な受け取り方法が考えられます。

●60~70歳のいずれかの時点で、一時金で受け取る。
●65歳まで働くので、年金の受け取りは65歳から受け取る。
●60~65歳までの間で仕事を辞めるため、公的年金の支給開始(65歳)までの期間の生活費を補うための収入として、60~65歳で年金を受け取る。

注意しないといけないのは、最初の掛け金を拠出してから10年以上経過していれば60歳から給付を受け取ることができますが、10年に満たない場合は、61歳以降になってしまいます。

税金面のメリット

1.掛け金は全額が所得控除の対象となっています。それに伴い、所得税と住民税の税額を引き下げることが可能です。
2.iDeCoの運用益に対しては、課税されません(非課税)。通常個人で運用し、運用益が出た場合には、その運用益に対しては税金が課されることとなります。iDeCoの運用期間中の運用益は、非課税となるので儲かった分を次の投資に回せるため、効率的に運用することが可能となります。
3.iDeCo受け取りの際の年金・一時金については、税の優遇措置の対象となっています。

年金に関しては、雑所得として課税され「公的年金等控除」が適用されることとなります。一時金に関しては、退職所得として課税され「退職所得控除」が適用されることとなります。

著者が実務上で感じたことは、iDeCoの制度を実際に利用している人は、中小企業においてはまだまだ少ない印象です。将来の備え、資産運用のひとつとして活用を検討する価値はあるといえるのではないでしょうか。

著者プロフィール

塚本泰久
ツカモト労務管理事務所 代表社会保険労務士・FP。
関西地区を中心に、地域に密着した事務所を目指しています。会計事務所出身であるという視点から、企業の宝である人財と企業会計のバランスに重点を置くことで、より強い企業の体制作りをサポートしています。「ツカモト労務管理事務所