前回記事で紹介したフードトラックビジネスの可能性。今度は実際にどんな料理が食べられるのか、フードトラックプラットフォームを展開する「TLUNCH」から、恵比寿・広尾で出店しているお店を紹介します。

三者三様ならぬ、4者4様で、料理や味のみならず、フードトラックの営業スタイルもバラバラ。お店それぞれの拘りポイントを、お話しいただいてます。

空間とフードトラックが見事に調和する。

まずは恵比寿プライムスクエアタワーの敷地内にあるTLUNCH広尾へGO。この日はNYグルメの「LOST&FOUND」と、インド流本格カレーの「プラススパイス」が出店していました。

  • 左:プラススパイス 右:LOST&FOUND

いわゆる屋台と違うのは一目瞭然。巷のフードトラックだと車体にポスターをペタペタ張ったりしていますが、こちらはデザイン性重視で、お洒落な雰囲気を醸し出しています。

NY生まれのスパイシーなB級グルメ~LOST&FOUND

ニューヨーカーが愛してやまないB級グルメ「チキンオーバーライス」(700円)の専門店。多様なスパイスで一晩漬けこんだチキンに、ホワイトソースとピリ辛のチリソースをたっぷりかけて、ジャスミンライスの乗せていただく。クセになるスパイシーで刺激的なテイストは、気だるい午後イチの仕事を乗り越えるエネルギーを与えてくれるはずです。

もともとはトルコ移民が故郷を懐かしんで作ったのが、チキンオーバーライスの始まりだとか。代表の大竹さんがNYでバーテンとして働いていた時代、出会った味を再現しています。ニューヨーカーがお酒を飲んだ後に食べる〆の一品で、現地でもフードトラックで提供されているそうです。

その大竹さんは現在、夜は足立区でバーも経営しているそうです。

大竹「最初は固定店の資金集めのつもりでTLUNCHに参加したのですが、フードトラックではいろいろなお客様や同業者との出会いがありますし、固定店の宣伝にもなりますので並行して続けています」

  • LOST&FOUNDの大竹さん

資金が集まったらフードトラックを卒業するばかりではなく、両方、続けていく。そんな店主が非常に多いそうです。実際、ランチの売り上げ効率を考えるとフードトラックに分があることから、何十台ものトラックのオーナーをしている方もいらっしゃるそうです。

トラック内で焼き上げるナンが自慢~プラススパイス

TLUNCH広尾に出店していたお隣の店、インドカレーの「プラススパイス」も神奈川のフードコートに2店舗を構えながら、フードトラックを運営しています。

  • 車内で焼き上げるナンの匂いが食欲をそそる

こちらのお店はインド人シェフが丹精込めて仕込んだカレーが自慢。また、クルマの中に兼ね備えたコンパクトなタンドール窯で焼き上げた、できたてのナンが人気を集めています。定番メニュー「ナン&カレー」で650円、カレー1品追加で100円と、リーズナブルな価格なのはフードトラックならでは。

通常、3種類のカレーを提供しています。キーマやバターチキンといったインド流2種類に加え、もうひとつのカレーは白菜とナス、キャベツと桜エビなど、インド×日本の融合を目指した独創的なカレーを用意しているとのこと。個性豊かなラインナップで、リピーターを飽きさせない工夫を施しているというわけです。

  • 「インド人スタッフが調理するので本場の味が楽しめます」篠田さん

店主の篠田さんは大手企業やM&Aコンサルティング会社で経営を学んだ後、新宿の有名インドカレー店を経て脱サラ。12年前にフードトラックを始めたそうです。確かな経営手腕を持っている方が、フードトラックで辣腕をふるっているというわけです。

アジアのチキンライスの究極形~Mr.chicken

続いてやってきたのはTLUNCH恵比寿。恵比寿駅から徒歩5分ほどの東急恵比寿ビル前にあります。取材当日はシンガポール流チキンライスの「Mr.chicken」と、エルサレム料理の「papagayadeli」という国際色豊かな2店が並んでいました。

まずは「Mr.chicken」から。アジアのチキンライスを食べ歩いたオーナーが自信を持って作った一品が人気を集めています。鶏の赤白カラーをイメージしたトラックの車体もお洒落ですね。

写真はMIXのダブルチキン&大盛&鶏ガラスープのセット(1000円)。たっぷりのチキンスープと香り豊かなハーブで炊き上げたタイのジャスミンライスに、蒸し鶏のWHITEと揚げ鶏のBROWNをダブルで味わえます。パッケージを合わせれば600~700gはあるとボリューミー。チキンからはふんわりと八角やシナモンの香り漂ってきて、日本に居ながらにして東南アジア気分が満喫できます。

もともと「Mr.chicken」は、シンガポールのレストランで修行を積んだシェフ二人が、日本で本場のシンガポールチキンライスを広めたいと、原宿の固定店舗から約6年前にスタート。北品川に店舗を移設したのをきっかけにフードトラックを開始しました。店舗のPRも兼ねての進出でしたが、今ではこちらの方の売り上げが高まって、4台を駆使するに至っています。

  • 「お客さんの表情を見ながら調理して、コミュニケーションも図ることができる。実店舗にない接客ができるのが、フードトラックの醍醐味です」スタッフの野口さん

多様な文化が行き交うエルサレム料理~papagayadeli

最後にご紹介するのはエルサレム料理の「papagayadeli」。現地出身のガイさんが、調理してくれます。

写真はBセット(750円)。エルサレムで食べられているシャニッェル(ささみチキンカツ)とファラフェル(ひよこ豆の素揚げ)の揚げたてがダブルで楽しめます。エルサレムはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の3つの宗教の聖地であることからもわかる通り、多様な文化が入り混じる土地柄です。近隣のエジプトやモロッコ、トルコ、シリアなどの影響も大。一皿で西アジア近郊の食文化が丸ごと体験できちゃいます。

シェフのガイさんは2002年に来日。最初からフードトラックに乗って、今も店舗を構えずに10数年間にわたり、エルサレム料理を日本に広げようと頑張っています。

  • 「エルサレム料理はいろんな文化が混じっています」ガイさん

ガイ「出店資金がなかったのでフードトラックを始めました(笑)毎日異なる場所に出店していますが、場所によってお客さんの好みが全く異なるのが面白いですね!」

今回、店主のバックボーンや考え方も全く異なるフードトラック。制限なく多様性をそのまま表現できるからこそ、今、フードトラックは百花繚乱なのかもしれません。